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2012-R-0227
建物に設定された抵当権に対抗できる建物賃借権の設定時期など。

 当社が賃貸の媒介を依頼された建物は建築中である。建物完成前に賃貸借契約をするが、未完成建物であり、当然ながら、賃貸人が融資を受ける予定の抵当権設定はまだ登記されていない。賃貸借契約を締結すれば、賃借人は抵当権者や競落人に対抗することができるのか。

事実関係

 当社は賃貸借の媒介業者である。賃貸マンションを建築中の賃貸人から賃借人募集の依頼があった。建築中のマンションは、未登記であるが、今月中に竣工する予定であり、建築確認書及び建築会社との建築請負契約により依頼者が建物を所有し、賃貸人であることは明らかである。入居可能時期は、建物竣工後の来月初旬になるが、賃借を希望する顧客も多く、建物竣工前に賃貸借契約を締結することを賃貸人と合意している。
 賃貸人の建物建築資金は、自己資金に加え、金融機関からの融資を予定しているが、既に金融機関からは融資承認を得ている。金融機関を債権者とする抵当権設定登記は建物が完成した後、所有権保存登記と同時に登記することになっている。
 建物完成前に賃貸借契約を結ぶ際、登記事項が確認できず、重要事項説明書に登記記録上の権利関係をどのように記載するか悩んでいる。

質 問

 賃貸借契約後に建物に抵当権設定登記がされ、将来、抵当権が実行されて建物が競売された場合、賃借人は、競落人に対して対抗することができると考えてよいか。

回 答

1.  結 論
 抵当権設定未登記の時点で賃貸借契約を締結しても、賃借人へ建物が引き渡されるのが、抵当権設定登記後であれば、賃借人は競落人に対抗できず、競落後6か月間の建物明渡猶予があるだけである。
2.  理 由
 賃貸の媒介業者は、賃貸人から既存建物のみならず、建築中あるいは建築予定の建物の賃借人募集依頼を受けることがある。建物完成前の賃貸借契約では、建物完成後の賃借人の入居可能日を引渡し日とする契約の締結となる。賃貸人は、賃貸建物の建築資金を金融機関等から借入れる場合も多く、金融機関は融資対象建物及び敷地に抵当権を設定登記するのが通常である。
 賃貸借において、賃貸物件の抵当権が実行され競落人である買受人に競落されたときに、賃貸借の対抗力の問題が争われることがある。賃借権を持つ賃借人に権利があるのか、抵当権実行により競落した買受人にあるのかである。抵当権は、設定登記によって対抗要件を備えて第三者に対する対抗力が生じる。賃借権の対抗力は、賃借権の登記により可能であるが、賃借権を登記することは稀であり、賃借権登記をしなくても、借地権の場合は、土地賃借人の建物登記により第三者に対抗でき(借地借家法第10条)、建物賃貸借の場合は、賃借物の賃借人への引渡しにより賃借権として対抗力が生じる(同法第31条)。
 賃貸建物が競売されたときに、抵当権と賃借権の対抗関係の優劣は、対抗要件の先後で決定される。抵当権設定登記前に賃貸借による引渡しがされていれば、賃借権が優先されるし、賃貸借による引渡しが抵当権設定登記後であれば賃借権は抵当権に劣後する。
 相談ケースの場合、建物完成前に賃貸借契約を締結しているが、未完成建物では、引渡しを受けられる状態ではない。賃借権として対抗力を生じるには引渡しを要することから、賃貸借契約締結のみでは対抗力は生じない。建物資金を融資する金融機関は、建物完成後に、賃貸人の所有権保存登記と同時に融資実行及び抵当権設定を登記するのが一般的で、賃借人に建物が引渡されるのは抵当権設定登記後になるのが通常である。その後、金融機関の抵当権が実行され建物が競売されたときは、賃借人は対抗できず、競売の買受人が賃借人との間で賃貸借契約をしないかぎり、賃借人は建物を明け渡すことになる。なお、対抗力が劣後する賃借権の場合でも、賃借人の明渡しには6か月間の猶予期間があるが、6か月経過後には明け渡さなくてはならない。(民法第395条)
 宅建業者が、建築中または建築予定の建物賃貸借契約の媒介をするときは、融資による抵当権が設定されることを賃貸人及び金融機関に確認し、抵当権の内容を重要事項説明書に記載して説明すべきであろう。宅建業法では、「登記された権利の種類及び内容」の説明義務(同法第35条)があるが、建物の登記記録が作成されていなくても、引渡しまでに抵当権が設定されるのが確実であれば、「宅建業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの(同法第47条第1項ニ)」として説明すべきであろう。

参照条文

 民法第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
   抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
     競売手続の開始前から使用又は収益をする者
     強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
   (略)
 同法第605条(不動産賃貸借の対抗力)
   不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
 借地借家法第10条(借地権の対抗力等)
   借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
 同法第31条(建物賃貸借の対抗力等)
   建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
  ・③ (略)
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
   宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
     当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
 (以下略)
 同法第47条(業務に関する禁止事項)
   宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
     宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
       第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
      ~ハ (略)
       イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

監修者のコメント

 抵当権と賃借権の対抗関係すなわち両権利の優劣は、権利の対抗要件を備えた時期の先後で決定される。抵当権も賃借権もそれらの設定契約の締結により権利としては成立するが、それだけでは第三者に対する対抗要件を備えたことにはならない。抵当権はその設定登記が、建物賃借権はその登記又は建物の引渡し(占有)が、それぞれの権利の第三者への対抗要件である。その対抗要件を備えた時期の先後で優劣が決まる。建物に登記できるのは、建物の完成を要せず、「工事中の建物といえども、屋根及び周壁を有し、土地に定着した一個の建造物として存在するに至っていれば足り、床や天井はなくてもよい」というのが、判例の考え方であるので、建物が未完成であっても登記が可能である。そして、融資を行う金融機関は、自己の権利の保全のため、できる限り早く抵当権の設定登記をするのが通常であり、未完成の段階で建物賃貸借契約は締結できても、引渡しをするのは事実上不可能であるから、二つの権利の優劣は明らかである。
 抵当権が設定されていても、必ず抵当権が実行されるのではないが、実行されたとき、すなわち競売されたときの買受人(一般に「競落人」といわれる)は抵当権者と同じ地位にあるので、回答にあるとおり、賃貸借の媒介に当たっては、万一の場合の結果について、十分に重要事項説明を行うことが必要である。

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