公益財団法人 不動産流通推進センター
宅建マイスターメンバーズクラブ

宅建マイスターメンバーズクラブ
Meister Members' Club

宅建マイスター・フェロー認定者発表!

「宅建マイスター」の資格認定は2014年よりスタートし、本年で9年目を迎えました。
宅建取引士のリーダーとしてご活躍いただく宅建マイスターの中でも、業界の地位向上など大きな視点をもち、常に顧客満足の追求を実践し、高いマインドと能力を持って業務推進され、業界にとって有用有益な意見を開陳された方を「宅建マイスター・フェロー」に認定する制度を設けました。
今年度認定の2名を、「宅建マイスター・フェロー」として発表します。 フェローの認定要件はこちら

宅建マイスター・フェロー
第5回認定者

論文・レポートのテーマ
1.「所有者不明⼟地」解消に向けた法改正が実務に与える影響とビジネス機会について
2.「造成宅地における⾃然災害リスクへの対応について」
第16号
成⽑ 紀夫 氏
⽇鉄興和不動産株式会社
営業推進本部営業企画部担当部⻑

成⽑ 紀夫 氏
レポート・講評を見る
第17号
吉⽥ 茂⽣ 氏
株式会社アルファ・プランニング
代表取締役

吉⽥ 茂⽣ 氏
レポート・講評を見る
※勤務先と肩書は、令和4年1月認定時のものです。
これまでの論文・レポートのテーマ
第1回
1.「高齢者との媒介取引において宅地建物取引士に求められるもの」
第2回
1.「生産緑地の2022年問題について」
2.「改正民法の契約不適合責任(現行の「瑕疵担保責任」)について」
第3回
1.「所有者不明不動産と仲介業について」
2.「コンプライアンスと仲介業について」
第4回
1.「改正民法施行後の契約不適合責任について」
2.「旧耐震マンションの流通について」

認定者 紹介・講評

第16号
成⽑ 紀夫 氏 ⽇鉄興和不動産株式会社 営業推進本部営業企画部担当部⻑
成⽑ 紀夫 氏
かつてないスピードで環境変化が進み、毎年のように重要法令が制定・改正されています。
過去に習得した知識や経験に頼っていては、不動産ビジネスを行うことができない時代が到来したと感じています。
公益財団法人不動産流通推進センターのフォローアップカレッジの研修では知識だけでなく、実務家の経験に基づいた貴重な講義を受けることができ、多くの気づきを得ることができるので、フェローとなった後も継続して受講していきたいと思います。
現在、人材育成を担当していますので、常に環境変化に関心を持ち、最新の知識と自らの経験から得た教訓を将来を担う人材の育成に活かして、安全・安心な不動産取引の実現と不動産業界の健全な発達に貢献していきたいと考えています。

【資格】
宅地建物取引士、宅建マイスター、公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士、一般社団法人不動産証券化協会認定マスター、賃貸不動産経営管理士

「所有者不明土地関連法の改正について」
講評
講評
横浜市立大学大学院 客員教授
周藤利一
 成毛紀夫氏の論文は、「所有者不明土地関連法の改正について」をテーマとして、今回の法改正と新法制定を通じて、不動産取引の実務上の影響とビジネス上のメリットを考察することを目的としています。
 そして、論文の構成は、関連法の改正内容のうち本論文の目的に関係する分野を順次取り上げて、把握・分析した上で、それぞれについて検討を加えるという形になっており、読みやすい構成になっていると評価します。
 具体的には、「所有者不明土地の発生を予防する制度」、「所有者不明土地の利用を促進する制度」、「所有者不明土地問題の解消を促進する制度」の大きく三つの制度改正について、個別の事項を取り上げています。
 まず、「所有者不明土地の発生を予防する制度」に関し、「1.相続登記の申請の義務化、氏名・名称及び住所の変更登記義務化と相続人申告登記」について、今回の改正では所有者が法人である場合は対象外とされたこと、所有権以外の登記名義人である場合も対象外とされたことを指摘した上で、土地所有者等が改正内容を知り、理解するために宅地建物取引士やマイスター等の資格保持者が説明することが望ましいとし、マイスターの役割を示しています。併せて、顧客保護と取引の安全性確保の観点からマイスター等専門資格者制度の法的枠組みが必要ではないかと示しており、立法政策論として傾聴に値する提言だと評価します。さらに、所有者不動産記録証明制度の名寄せ機能に着目して、不動産コンサルティングを行う際に、この制度を利用することによる業域の拡大にも言及しており、優れた着眼点であると評価します。
 そして、「2.土地所有権の国庫帰属制度」について、その利用は極めて限定的になるものとの見通しを示していますが、この点は評者も同感するところです。
 次に、「所有者不明土地の利用を促進する制度」に関し、「1.共有物の使用・変更・管理について」では、相続人が複数存在する場合、被相続人と同居していた相続人が相続財産たる家屋に引き続き居住する際に発生する問題点を例示して、考察を加えていますが、今後の実務上重要な論点を指摘していると評価します。また、共有物の変更については、建物管理者等は賃貸運営がしやすくなるとの見解と共に、大規模な共有建物の場合にメリットが大きいとの見解を示していますが、実務上有益な見解であると評価します。
 そして、「2.裁判による共有物分割制度」について、分割方法が明定されたことにより、裁判による分割制度が利用しやすくなるとともに、競売による分割制度との価格差の存在を理由として、代償(賠償)分割による合意形成がより進むとの見通しを提示している点は、実務家にとって有益な示唆を与えるものと評価します。
 また、「3.所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令」について、新たな制度の適用可能性を分析し、一定の行為に限定されるものの、所有者不明となった者の全財産を対象にする必要がなくなったことや、利害関係人に隣接地の所有者、民間の買受け希望者等が含まれたことによって売買時や開発時の境界同意の取付の場面で利用が考えられるとの見解を示しています。
 そして、「所有者不明土地問題の解消を促進する制度」に関し、「2.所在等不明共有者の持分の譲渡」について、その意義を認める一方で、悪用の懸念についても指摘しており、実務の観点を踏まえた客観的な分析であると評価します。
 最後に、「まとめ(新法における対応)」において、所在等不明共有者問題を取り上げ、改正法による5つの方法を具体的に当てはめて検討を加え、それぞれの方法に対し実務的な視点から比較分析した結果、「共有持分を共有者が取得する方法」と「共有持分の譲渡による方法」が最も利用される可能性が高いと指摘しています。
 以上の通り、成毛紀夫氏の論文は、所有者不明土地関連法の改正内容のうち不動産取引実務にとって重要な分野を対象として、個別の事項について順次、把握・分析した上で、それぞれについて的確な検討を加えた結果、実務上極めて有用な見解を提示しており、不動産取引の実務上の影響とビジネス上のメリットを考察するという論文の目的が十二分に達成されているものと認められます。
 そして、本論文は、宅建マイスターを含め広く宅地建物取引士にとって極めて示唆に富む内容になっていると認められ、宅建マイスター・フェロー論文として相応しい水準にあるものと評価します。
弁護士
吉田修平
1 全体について
 成毛氏の論文についての全体の印象は、非常に読みやすいというものでした。
 その理由は、所有者不明土地関連法という民法(物権法・相続法)及び不動産登記法等の多岐にわたる非常に複雑な法改正について、きちんと整理した上で明確に分析して論述しておられ、かつ自分の意見も分かりやすく述べていることにあると思います。

2 改正法の内容の論述について
 上記のとおり、所有者不明土地関連法は非常に多岐にわたる法律について複雑な改正が行われています。
 しかし、そのような複雑な法改正に対し、所有者不明土地の発生の予防、利用促進及び解消促進の3つの制度に分類した上で、それぞれをきちんと整理し論述しており、明確に内容を理解していることがわかります。

3 個々の具体的な論述について
 その上で、以下のとおり、個々の論点についても問題点等を的確に指摘した上で、具体的な提案もしています。
(1)相続登記の義務化については、①相続登記が義務化されたこと、②氏名・名称及び住所の変更登記が義務化されたこと、及び、③それぞれについて罰則が課されたことにつき論じた上で、これらの新たな制度により所有者不明土地の発生の減少が期待されるとしています。
そして、非常に新しい制度であるため専門家がきちんと理解した上で顧客等に対し説明をすることが必要であり、そのためには専門資格を付与する新たな制度等の法的枠組みが必要であることを述べています。
(2)所有不動産記録証明制度については、所有者ごとの名寄せができることから、所有している登記記録の全てを把握できる画期的な制度であることを述べた上で、不動産のコンサルティングをする際、この制度を利用することにより全体像を把握した提案を行うことが可能になること等が期待できるとしています。
(3)共有物の使用についての新たな条文ができ、共有物の利用の対価を共有物を利用していた共有者が他の共有者に支払う制度ができたことを評価し、共同相続をして共有者の1人が共有物を利用していた場合について、他の相続人との間のトラブルになる可能性を論じた上で、共同相続人の間で使用の対価についての合意をしていくこと等の提案をしています。
(4)共有物の変更・管理について条文が整備されたことを受けて、従来、曖昧なために全員の同意が事実上強いられていた分野についての位置づけが明確になることから、共有不動産の維持管理等の円滑化に資することになると論じています。
その結果、共有物の管理を受託している者の賃貸運営がしやすくなることが期待できることや、共有建物の大規模な修繕が円滑に進められることが考えられるとしています。
(5)所有者不明土地管理人制度の新設について、売買や開発を行う際に境界についての同意を取得する場面においても、隣接地の所有者や民間の買受け希望者等によるこの制度の利用が考えられることを論じた上で、この制度により、所有者不明土地の利用の促進だけではなくその解消にも繋がることが期待できるとしています。
(6)さらに、「まとめ」として、①所有者不明共有土地については、共有持分の取得及び譲渡の方法により解決することが現実的な処理と思われることを述べ、②所有者不明土地管理人制度については、土地を単独で所有している場合の利用の可能性が高いと思われる旨を論じています。③また、多数の共有者がいる土地を開発事業者が取得しようとする場合に、事業者が一部の共有者から共有持分を取得した上で共有物分割訴訟を提起し、全面的価格賠償の方法により事業者がすべての共有持分を取得する方法も考えられるとして、具体的な制度の利用方法についての提案もしています。

4 評価
 以上に述べたとおり、成毛氏の論文は、所有者土地関連法の改正が不動産取引の実務にどのような影響を与えるか、また、それによりどのような新たなビジネスが生ずるかについて、自らの経験とそこで得られた知見等を踏まえた上で問題点を指摘し、かつ、現実的な提案もしており、完成度の高い論文と評価できると思います。
 結論として、宅建マイスターフェローの論文としてふさわしいものと考えます。
第17号
吉⽥ 茂⽣ 氏 株式会社アルファ・プランニング 代表取締役
吉⽥ 茂⽣ 氏
不動産業界歴40年。宅地分譲を主軸として、不動産仲介・不動産コンサルティング・相続 相談・空き家対策等の事業を行っています。特に不動産の取引においては、『顧客満足』を 追求するため、ライフプランを第一に考えご提案をするためCFPを取得し活用しています。
又、昨今。相続・空き家の相談が増加していることにより、地域で士業のネットワークを構 築して、顧客サービスの向上を図っています。
今後は、皆様のお役に立てるよう『宅建マイスター・フェロー』として自己研鑽に励み、 地域発展のために貢献していきたいと思っています。
「造成宅地における自然災害リスクへの対応について」
講評
講評
横浜市立大学大学院 客員教授
周藤利一
 吉田茂生氏の論文は、「造成宅地における自然災害リスクへの対応について」をテーマとして、論者のこれまでの経験を踏まえ、実際に体験した災害の事例と造成宅地の災害について考えてきた対策を中心に議論を展開しています。
 そして、論文の構成は、「第1章 造成宅地における自然災害リスクとは」、「第2章 私が経験した造成宅地における災害事例」、「第3章 実際に行っている造成宅地における自然災害への対策」、「第4章 災害リスクの調査と確認」、「第5章 災害リスクについて顧客への説明義務について」となっており、各章の位置付けが明確で理解しやすい構成になっていると評価します。
 まず、「第1章 造成宅地における自然災害リスクとは」において、自然災害リスクの面での日本の特性を確認した上で、近年の大災害の増加を踏まえ、造成宅地等の地形変更に関しては、これまで以上に対象物件及び周辺の環境、過去のデータ及び将来の予見を含め、自然災害リスクを軽減できる計画を立てる必要性を強調しており、異論のないところであると評価します。
 次に、「第2章 私が経験した造成宅地における災害事例」においては、論者自身が経験した災害事例を3つ紹介していますが、いずれも極めて貴重な情報であると言えます。すなわち、これらの災害の発生原因を見ると、一部不明な点はあるものの、様々な原因類型があることが確認できます。また、単一の原因によるものだけではなく、複数の原因が重なる複合型の災害も発生していることが分かります。論者が指摘したいポイントは、造成当時には相応の配慮をしていたとしても、実に多面的な事象が作用して想定外の被害が発生することこそが造成宅地における自然災害リスクの本質であると察せられます。
 「第3章 実際に行っている造成宅地における自然災害への対策」では、前章で紹介した事例も踏まえて、論者が実践している造成宅地の自然対策を説明しています。その1は、造成宅地内に加えて周辺の改修費用等に一定の予算を配分してリスク軽減を図っていること、第2は、雨水の処理と地盤改良に留意していること、第3は、ハザードマップを綿密にチェックした上で、リスクエリアにおける開発を避けていることです。これらの対策は、論者の経験した災害事例への的確な対応手段であると評価できるとともに、近年の災害発生状況や政府の政策展開の動向を踏まえると、実務において広く適用可能な、あるいは積極的に参照すべき内容であると評価できます。
 「第4章 災害リスクの調査と確認」では、重要事項説明の中で非常に難易度の高い業務であるとの認識の下で、自然災害に関しては、法令で定められている事項を実務上調査する方法が確立していないことを指摘した上で、必要な知識を得た後に現地調査を実施することの重要性を強調しています。経験知の重要性は、不動産取引実務のあらゆる局面において認められるポイントであり、今更確認するまでもないとも言えます。しかしながら、自然災害リスクの場合、論者が強調するように、法令で規定されている事項に対する調査方法が未確立であることや、文献情報だけでは現地実査のノウハウを身につけられないという事情下では、やはり、経験知の重要性は強調し過ぎることはないと言えましょう。その点において、この章における記述の重みが感じられます。
 「第5章 災害リスクについて顧客への説明義務について」では、重要事項説明書の記載だけでなく、自らが地域を観察し、顧客にとって有用な情報を提供すべきとの見解を提示した上で、説明義務を果たすための具体的な事項として、行政庁の窓口での確認、物件状況告知書の活用など広く関係者から情報を取得する努力を惜しまないことを強調しています。
 最後に、「おわりに」において、それまでの論述を踏まえ、不動産取引のプロフェッショナルとして「内在するリスク」を予見し、安全・安心な取引を成立させ、顧客である売主と買主の双方に満足を提供できる立場にあるという指摘を提示して、内在リスクの予見に必要な能力として、見えないところを読み解く視点に立つことを指摘しています。
 吉田茂生氏の論文は、造成宅地の自然災害リスクという今日的な重要テーマに対し、自身の経験を踏まえて具体的かつ丁寧な検討を柱に構成されたものであり、論者の知見の深さを見出すことができるとともに、実際の対策に論者の知見を活かしていることにおいて大きな説得力があり、読み応えのある宅建マイスター・フェロー論文であると評価します。
弁護士
吉田修平
1 全体について
 吉田氏の論文は、自分の40年にわたる自然災害リスクへの対応を真摯に考察した経験に基づき、その中で得られた知見をもとにしての優れた対策を具体的に論述しており、非常に好い印象を受けるとともに、貢献度の高い立派な論文だと感じました。
 章立ても見事であり、理路整然と問題点を指摘した上で、具体的な対策等をきちんと論じています。

2 論述の内容について
(1)まず最初に、自然災害リスクとは何かということについて、我が国の地理的な状況等を分析し、水害の被害の多い国であること等を明らかにしています。
その上で、我が国においては自然災害リスクが高いことから、宅地造成等をする場合には、対象物件、周辺の環境、過去のデータ及び将来の予見も含めて、少しでも自然災害リスクを軽減できる計画を立てていく必要性を説いています。
(2)次に、自分が経験した造成宅地における災害事例を具体的なケースとして紹介し、そのケースによりどのような知見を得たのか、そして今後どのような点に注意を向けて、どのようなリスク回避の方法を考えれば良いのか等につき、きちんと論じています。
(3)さらに、どのような対策をとれば良いのかということにつき具体的に3つの方法を挙げています。 
  すなわち、①造成地だけではなくその周辺の土地についての改修費用についても予算をとっていること、②造成地内の雨水の処理について特段の配慮をし、また地盤調査により得られた地盤の状況についての情報に沿った形での地盤改良を行っていること、③行政の出している災害マップによる注意を行い、災害を発生する可能性のある地域では造成宅地の開発を行わないようにし、開発を行う場合も販売時に十分な説明と買主の了承を得ることを心がけていること等です。
(4)顧客への説明については、第一に、十分な調査をして現地を確認することの必要性を説いた上で、定型的な説明にとどまらず顧客にとって有用な情報を提供する事を重視し、さらに、説明の対象も物件の所在地に限定せずに自然条件を共有するエリアまでも広げていくべきであるとしています。
 第二に、ハード対策法に基づく指定区域を都道府県の窓口で確認し、さらに現地調査で確認することの必要性を説いています。
 様々な災害リスクが生ずるおそれがあることから、特に仲介業者としては売主、地元住民、行政等から災害リスクに関する情報を取得する努力を惜しんではならないこと、その上で、買主に対し物件状況告知書等を利用して十分な説明義務を果たす努力をすることを述べています。
(5)最後に、不動産取引のプロフェッショナルとしての心構えについて、「内在リスク」を予見することにあるとしています。
 そして、そのために必要な能力を養うために、常に顧客ファーストの視点に立ち、見ればわかるところではなく、見えないところを読み解く視点に立つことの必要性を説いています。

3 評価
 以上のように、宅建マイスターフェローとして、自然災害リスクに対処する方法を、自らの経験に基づき、問題点の指摘にとどまらず具体的対策についても整理した上できちんと論じており、極めて高い評価が与えられるものと思います。
 結論として、宅建マイスターフェローの論文としてふさわしいものと考えます。

総評

「近時顕在化した不動産の本質に関わるテーマ 」 周藤 利一
1.2021年のテーマ
 本年のテーマとしては、次の二つの課題が設定されました。
〇 「所有者不明土地」解消に向けた法改正が実務に与える影響とビジネス機会について
〇 造成宅地における自然災害リスクへの対応について
 前者は、民法と不動産登記法という不動産取引の基本法の重要な改正と新法制定が対象であり、これらの改正・制定がもたらすであろう不動産取引の実務に対する影響と、ビジネス機会の創出について考察することとを求めています。
後者は、造成宅地の自然災害リスクが対象であり、「顧客の生命を守る」というスタンスに立ち、消費者への対応に当たっての留意点を具体的に記述することとを求めています。
 このように、2021年のテーマは対象と論述方向について異なる設定をしていますが、両者に共通するポイントは、近時顕在化した不動産の本質に関わるテーマが取り上げられていることであり、いずれも不動産取引に少なからぬ大きな影響を及ぼすものであるという点です。
 こうした二つのテーマについて、いずれも優れた論文が提出されました。各論文に対する評価は個別の講評に譲ることとしますが、以下では、それぞれのテーマについて少し敷衍して述べます。
2.所有者不明不動産問題
 我が国は、少子高齢化に伴い世界の先進国の中で最初に人口減少時代に突入しました。また、経済面では低成長時代が定着した感があります。こうした状況は、マクロ経済においてはストック過剰の問題をもたらしますが、不動産分野においては、空き家・空き地の増加現象に代表される土地の過少利用問題をもたらします。そして、土地の過少利用問題の行きつく先が所有者不明土地問題です。
 国土交通省が2014(平成26)年に行ったサンプル調査によると、最後に所有権に関する登記が行われた年が50年以上前のものが19.8%に達しており、2016(平成28)年度地籍調査において不動産登記簿上で所有者の所在を確認できない土地の割合(広義の所有者不明土地)は約20%にも達し、探索した結果、最終的に所有者の所在が不明な土地(狭義の所有者不明土地)は0.41%でした。九州の面積と同じだけ所有者不明土地が存在するというセンセーショナルな表現は、20%という数字に根拠を置くものですが、狭義の所有者不明土地は0.41%に過ぎず、ほとんどは探索可能であるからと言って過小評価するのは適切ではありません。探索のために膨大な人員、予算、時間が投入されているからです。つまり、探索に要するコストを国民全体が負担しているという意味で、大きな負の外部性をもたらしているのです。
 また、法務省が2017(平成29)年に行ったサンプル調査によると、50年以上登記の変更がなされず、相続登記が未了となっているおそれのある土地は、大都市で6.6%、中小都市・中山間地域では26.6%に達していました。さらに、農林水産省が2016(平成28)年に行った調査によると、登記名義人が死亡していることが確認された農地と、生死が確認できず相続未登記となっているおそれのある農地の合計は、日本の全農地面積の約2割に達します。
 このような状況に対し政府は、現行制度で対応可能な対策は早急に実施する一方で、法制度の根幹に関わる内容や新法制定が必要な事項については可及的速やかに検討を進めて実現するという両面作戦を展開することとしました。
 具体的には、前者に関し、国土交通省は2016(平成28)年3月「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン(第1版)」を公表し、不在者財産管理制度、相続財産管理制度、失踪宣告制度など既存制度の活用方法を示しました。また、法務省は2018(平成30)年1月「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~」を公表し、現行法及び解釈による対応方法を示しました。
 後者に関しては、まず、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法。(2018(平成30)年6月13日法律49号)が制定されました。同法は登記事項証明書の交付請求、占有者等への情報提供要請、市町村長・登記官への情報提供要請、所有者と思料される者に対する書面の送付等の方法により探索を行ったにもかかわらず、所有者の全部又は一部を知ることができない一筆の土地を所有者不明土地と定義し、そのうち、現に建築物が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地を特定所有者不明土地として地域福利増進事業、土地収用法の特例の対象としています。これらの内容のうち不動産取引に関係が深いものは、次の通りです。
① 所有者不明土地を円滑に利用する仕組み=地域福利増進事業の創設
 地域福利増進事業とは、道路、路外駐車場事業、学校、公民館、社会福祉施設、病院、公園その他地域住民の共同の福祉又は利便の増進に資する施設の整備に関する事業をいい、同事業の事業者は、裁定において定められた補償金を供託すれば、裁定において定められた土地使用権の始期において、土地使用権を取得することができます。
 土地使用権の存続期間中に、不明であった所有者が現れ、明渡しや原状回復を要求された場合であっても、土地使用権に基づき事業を継続して実施することができる点がポイントです。
② 所有者の探索を合理化する仕組み
 所有者の探索において、原則として不動産登記簿、住民票、戸籍等客観性の高い公的書類を調査することとするなど合理化を実施し、照会の範囲は、親族等に限定されました。
 また、長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録することができる制度が創設されました。
③ 所有者不明土地を適切に管理する仕組み
 それまでの民法は、利害関係人と検察官だけに財産管理人の選任請求を認めていたところ、所有者不明土地を適切に管理するために特に必要がある場合に、地方自治団体の長等が家庭裁判所に対し、財産管理人の選任等を請求することができるようにする制度を創設しました。
そして、2021(令和3)年4月、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しが行われました。改正法と新法は4 月28 日に公布され、公布日から2 年以内に施行される予定です。
 その内容は、今回のテーマそのものであり、掲載論文にまとめられているので、それに譲ります。
 ここでは、上記で紹介した所有者不明土地の解消に向けた対策の全体像を踏まえ、不動産取引の実務家・専門家の立場においてどのような対応が求められるかという視点からポイントを述べます。
 第一に、新たに導入されたり、改正された制度の不動産取引における意義を正確に把握することです。掲載論文でも言及されているように、新しい仕組みの中には、不動産取引実務に直結するものもあれば、現場での活用頻度は低いものもあります。これらに対する正式な認識を、まず自分自身が持つことが前提となります。
 第二に、顧客に対する情報提供、説明の一層の充実です。相続などを契機に所有者不明土地を抱えて悩んでいる顧客に対し、原因の解明と解決策の提示を具体的かつ分かりやすく行うことが、不動産取引の専門家に求められています。かかる意味において、一方的に情報提供、説明を行うのではなく、コンサルタントとしての役割が益々求められていると言えるでしょう。
 そして、コンサルティング機能を果たしていく中で、新たなビジネス機会が創出できると考えられます。
 掲載論文は、こうしたポイントを十分理解した上で論述されていると言えますので、全ての宅地建物取引士の皆さんが、掲載論文を参照しながら、改正内容を正確かつ深く理解して、顧客に対応していただくことにより、所有者不明土地問題の解消とストック最適活用に向けた不動産取引の進展に寄与されることを望みます。
3.不動産の⾃然災害リスク
 自然災害には、地震、津波、豪雨、高潮、火山など様々な類型がありますが、我が国はこれら全ての類型の自然災害が発生する国であり、しかも例年のように多発するという国土条件を抱えています。そして、海岸や平野部など自然災害が発生したときに被害を受けやすい地域に、人口・産業が集中しています。国土交通省は、洪水、土砂災害、地震災害(震度被害)、地震災害(液状化)、津波災害の5大災害のいずれかが発生した場合に被災する地域をリスクエリアと定義し、このリスクエリアの国土面積に対する割合は34.8%、リスクエリア内人口の全人口に対する割合は73.7%にも達するという推計を公表しています。
 したがって、日本という国は災害脆弱性というリスクを構造的に抱えています。
 さらに、地球温暖化の影響により災害の態様や頻度が変化し、2000 年代に入ってから、立て続けに大災害に見舞われています。
こうした災害脆弱性は経済社会全般に見られるわけですが、国民の生活基盤・社会の生産基盤であり、かつ、高額な資産である不動産においては、特に重要視すべき問題であることに異論はないでしょう。
 そこで、不動産に関する自然災害リスクを再認識することと、必要かつ有効な対策を講じることが益々重要になってくるわけですが、これらの課題を考える前提として自然災害対策のあり方を理解しておく必要があります。
 第1のポイントとして、土石流、地すべり、がけ崩れという土砂災害を例に説明すると、かつての土砂災害対策は、「砂防法」、「地すべり等防止法」、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(急傾斜地法)という法律に基づき、もっぱら土砂災害が発生する場所に対し規制を加えるという原因地対策が中心でした。これに対し、社会福祉施設など災害時要援護者が居住する場所で土砂災害による人命被害が相次いだことから、被災地対策の必要性が認識され、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)が制定されました。同法の特徴は、土砂災害リスクに応じて土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を指定すること、レッドゾーンでは住宅や災害時要援護者に関する施設の立地が規制されることなどです。
 このような仕組みは、他の災害類型にも発展的に応用され、各種ハザードマップの表示が工夫されるようになりました。また、東日本大震災を受けて制定された「津波防災地域づくりに関する法律」でも津波災害警戒区域(イエローゾーン)と津波災害特別警戒区域(レッドゾーン)を指定する仕組みが導入されています。
 第2のポイントは、急傾斜地法や土砂災害防止法が適用される急傾斜地とは自然がけを意味し、人工がけは含まれないことです。そこで、本年度のテーマである造成宅地をめぐるがけ崩れを考える場合、造成宅地の上方や下方に自然がけが存在するケースでは、造成宅地の被災を防止するため、あるいは造成宅地による発災を防止するために、これらの法律に基づく規制や事業が実施されることになります。
 これに対し、宅地造成に伴い形成された人工がけに対しては、これらの法律は適用されません。宅地造成に関する法制度としては「宅地造成等規制法」(宅造法)が制定されていますが、もっぱら新規の宅地造成を規制することを目的としていました。
 その後、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災や2004(平成16)年の新潟中越地震において造成宅地につき多くの地盤被害が発生したことから、2004(平成16)年の法改正により造成宅地防災区域の制度が新設され、造成宅地の災害防止のため必要な擁壁を設置するよう勧告・命令できる仕組みが導入され、2020(令和2)年の都市再生特別措置法改正により、居住誘導区域内における宅造法の事務を市町村も行うことができるようになりました。
 これらのポイントを踏まえると、造成宅地は、災害の原因地にも被災地にもなり得る存在であること、掲載論文でも指摘されているように、発災の原因やメカニズムが複雑で解明できないケースもあることなど、自然災害リスクの把握と理解において多くの困難があることを最初に認識する必要があると言えます。
 その上で、不動産取引の専門家としては、顧客への説明義務を果たすための前提作業として自然災害リスクの把握と理解に必要かつ十分な情報収集を行うことが肝要です。この点については、掲載論文が指摘しているように、売主、地元住民、行政など関係者から幅広く情報を収集する努力を惜しんではなりません。さらに、こうした知識の吸収に加えて、内在するリスクを予見する能力を身につけるため現場経験を積み重ねて、経験知を身につける努力も併せて求められていると言えます。
 今回提出された論文の論者は、宅建マイスターとして上記した諸点を熟知した上で、豊富な経験と深い洞察力に基礎づけられた造成宅地の自然災害リスクに対する明確な考え方と確固たる姿勢を示しており、宅地建物取引士の皆さんにとって大いに参考になるものと考えます。
「審査のポイント」 吉田 修平
1.論文とは
 論文とは、課題で示された論点について学び、それによって論点及び関連する問題点等について理解し、さらに自らの経験と知見とを踏まえてその理解した内容を示すものと考える。
 もとより、論点について十分に理解することが大前提となるのであるが、次に、論点についての理解の内容をどのように示すかが問われてくる。
 そこで示し方についてであるが、まず、論文の構成をどのようにするかを十分に考えることが必要になる。具体的には、問題点を指摘し、概念の定義をしっかり行い、その上で問題についての解決策等をきちんと示すことが重要になる。
 次に、論理の流れが非常に重要になる。たとえば、先に規範を示し、次に規範に事実を当てはめる作業を行うこと等が、論理の流れが明快になり非常に読みやすいものになる。
 さらに、自己の主張を行うことにより論文に独創性が加わり、加点事由となる。
 また、このような論文が他の宅建マイスターにとっても重要な教材となり、日ごろの業務の遂行に対する示唆等にもなるという意味で貢献度も上がるものとなる。
2.所有者不明土地関連法の改正について
(1)所有者不明土地関連法の改正については、まず、その改正内容をきちんと理解することが肝要である。
 今回の改正は、民法(物権法・相続法)及び不動産登記法の改正など多岐にわたり、かつ、内容も複雑なので、十分に整理した上で内容を理解することがポイントになる。
 その意味で、改正の内容を、所有者不明土地の「予防」、「利用」及び「解消」、又は「予防」及び「利用」に分けて論ずること等の工夫が必要になるものと思われる。
「予防」、「利用」及び「解消」に分けて論ずる場合の一例を以下に示す。
①「予防」
・相続登記の義務化
・所有権の登記名義人の氏名や住所の変更等による変更登記申請の義務化
  ・所有不動産記録証明制度の新設
  ・外国に居住する所有者の国内の連絡先の登記制度の新設
  ・被害者保護のための住所情報公開の見直し
  ・遺産分割の期間制限による遺産分割の促進
  ・土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の新設
 ②「利用」
  ・共有制度の見直し
  ・財産管理制度の見直し
  ・相隣関係の規定の見直し
 ③「解消」
  ・所在等不明共有者の持分の取得
  ・所在等不明共有者の持分の譲渡

(2)改正法の内容については、従来になかった全く新しい制度が創設されたもの(たとえば相続登記の義務化や所有者不明土地管理人制度等)と、従来の条文を多少改正等したもの(たとえば共有物の使用、変更、管理等)とがあるため、それらの違いについても分けた上で論ずることが必要になる。
 その上で、これらの改正を受けて、不動産の実務に携わる者として、不動産ビジネスにどのような影響があるのか、及び、どのような新しいビジネスチャンスが生ずるのかについて、自らの経験及びそこで得られた知見等を踏まえて具体的に論じてもらうことが大事である。
3.自然災害リスクへの対応について
(1)自然災害の増加
  近年、自然災害(地震、津波、台風、土砂崩れ等)が著しく増加している。自然災害の中にも、従来からあった地震や津波や台風等に加え、熱海の土石流の災害にも顕著なように、人災が加わることにより損害が拡大するケースも見受けられている。
また、最近の気候変動により、台風や高潮及び河川の氾濫等、自然災害の規模が拡大する傾向が見受けられる。

(2)宅建士としての対応
  上記のような自然災害(及び人災)の増加によるリスクに、宅建士としては、どのように対応していくべきなのだろうか。
 まず、重要事項説明をしていくことが考えられるが、そもそも重要事項説明は、なぜ必要とされるのか。
 それは、①不動産の買主や借主にとって、目的物の完全な使用収益が妨げられることがないようにするため、②予定した建物を建てられない等の契約の目的を達成できないことを防止するため、及び③契約を解除されたり違約金を求められたりするような不測の損害を防止するために、宅地建物の取引を業として専門に行い調査能力もあり知識経験もある宅地建物取引士に、これらの説明をさせることとしている。
 そして、宅地建物取引業法に重要事項が挙げられているが、これらの事項は「最小限」であり、他にも重要な事項があるとされている。
 以上からすれば、宅地建物取引士は自然災害リスクについてもきちんと重要事項説明をすることが必要だということになるが、さらに宅建マイスターや宅建マイスターフェローも、それ以上に宅地建物の取引の「重要」な事項について、より広く高度な説明を行うべきものと考えられる。

(3)重要な事項とは何か
 抽象的には、前記の①から③に述べたような問題が生ずるおそれがあるものについての説明をするべきということになる。
具体的には、自然災害及び人的災害(以下、「自然災害等」という。)により、財産だけではなく身体・生命にも重大な損害が発生し得るのだから、それらのリスクについて十分に説明をすることが必要だと思われる。
 そこで、自然災害等に関する重要事項説明については、以下のように宅地建物取引業法施行規則では規定されている。
  ① 宅地建物が造成宅地防災区域内にあるときは、その旨
  ② 宅地建物が土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨
  ③ 宅地建物が津波災害警戒区域内にあるときは、その旨
  ④ 水防法の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地
  しかし、これらはあくまで「最小限」なので、前記のような重大な損害が生じ得るような場合には、さらに重要事項説明を行うべきということになる。

(4)宅建マイスター及び宅建マイスターフェローとして行うべきこと
  上記の重要事項説明に関する法律等の規定をヒントとすれば、以下のように考えることができる。
  まず第一に、対象となる不動産について幅広い「調査」が必要になると思われる。「幅広い」ということの意味だが、まず、空間的に広いものである必要があると思われる。すなわち、対象地だけではなく、隣接地や、その対象地に影響を与える土地等についても調査の目を向ける必要があることは、熱海の土石流被害のケース等を考えればよく理解できるところであろう。
また、時間的にも広いことを意味すると思われる。すなわち、過去に、その対象地や隣接地等を含めてどのような開発等が行われてきたのかということである。
  第二に、求められていることだけではなく、求められていないことも「説明」することが必要になると思われる。すなわち、前記の調査から判明した予測されうる未来についても説明をしていくことが求められるのではないだろうか。
  第三に、説明だけでなく、より積極的な「アドバイス」も必要になると思われる。
  以上のようなことが、宅地建物取引士のリーダーとして高いマインドと能力を持って業務を推進し、業界の地位向上に寄与する宅建マイスターフェローの役割だと思われる。
講評者プロフィール
周藤 利一 氏 横浜市⽴⼤学⼤学院客員教授/工学博士
昭和54年建設省入省。不動産適正取引推進機構研究理事、日本大学経済学部教授、明海⼤学不動産学部教授、国土交通政策研究所長など歴任。
著書に『日本の土地法』『わかりやすい宅地建物取引業法』など
吉田 修平 氏 吉田修平法律事務所 代表弁護士
定期借家権、終身借家権の立法、担保執行制度の改正などに関わり、中間省略登記の代替え手段の考案等、不動産を得意分野とする。また、各省庁の委員会委員や大学での教鞭、各種団体の役員など多方面で活躍。
著書:「不動産相続の法律相談」、「⺠法改正と不動産取引」ほか多数。

フェローに認定されるには?

応募資格は、宅建マイスターに認定されてから3年以上が経過していること。
その3年間で各々が勉強会への参加や課題の提出などにより「★」と呼ばれるポイントを取得します。
「★」を3個以上取得したうえで、提示されたテーマについての論文・レポートを提出し、審査に合格した方が「宅建マイスター・フェロー」に認定されます。

「★」取得数により、論文・レポートの必要文字数が異なります。

  必要な★の数 論文・レポート文字数
Aコース 3個以上 事例研究論文4000字以上
Bコース 10個以上 事例研究レポート1200字以上

論文・レポートのテーマ

1.「「所有者不明土地」解消に向けた法改正が実務に与える影響とビジネス機会について」

 2021年4月、近年、社会問題となっている「所有者不明土地」の解消に向けた民事基本法制の見直しが行われました。改正法は4月28日に公布され、公布日から2年以内に施行される予定です。
 本改正では、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の観点から、民法(物権法・相続法)、不動産登記法を中心に、関係する20以上の法律が改正され、相続した土地を国庫に帰属させるための新法も制定されました。とくに、民法の財産管理制度や共有制度、相隣関係規定の見直しなどは、不動産取引の実務にも深く関わってきますので、宅建マイスターは不動産取引の専門家として法制度の内容を理解し、適切に対応することが求められます。
 そこで、本改正法が施行された場合、不動産取引の実務においてどのような影響を受けると考えますか。また、本改正によってどのようなビジネス機会が創出できると考えますか。改正内容の具体的な方策について考察し、具体的に記述してください。

2.「造成宅地における自然災害リスクへの対応について」

 2000年代に入ってから、立て続けに大都市における大災害に見舞われています。
 2004年中越地震、2011年東北地方太平洋沖地震、2014年広島土砂災害、2016年熊本地震、2018年7月豪雨災害(西日本豪雨)、同年胆振東部地震等、深刻な災害に立て続けに見舞われています。
 とりわけ都市部において造成された住宅地において、災害の複合的原因がより鮮明に示されてきました。
 山地で起こる斜面崩壊などは単なる自然現象ですが、都市部ではそれに戦後国家の復興政策として積極的に行われてきた宅地開発、街づくりなどの社会問題が原因として付け加わることになります。
 宅建業法では、これらの災害リスクの全てについて顧客への説明義務が課せられているものではありませんが、ともすれば新たな購入者、借主の生命の危険にも及ぶ事項と言えます。
 「説明すればよい」から「顧客の生命を守る」というスタンスで、あなたはどのような点に留意して消費者に対応していきますか。具体的に記述してください。

宅建マイスター・フェローに認定されると…

フェローバッジ
フェローバッジ
(ラペルピン)

●「フォローアッププログラム」サイトへの研究論文・レポート掲載。
 掲載基準に合致した場合は不動産コンサルティングの専門誌「月刊不動産フォーラム21」への掲載も。
●宅建マイスターメンバーズクラブ懇親会へ無料招待
●ステータスの証「宅建マイスター・フェロー」バッジを提供(※希望者のみ)。
など、様々な活躍の機会を得られます。

宅建マイスター認定試験
宅建マイスター集中講座STEP1&STEP2
宅建マイスターメンバーズクラブについて