公益財団法人 不動産流通推進センター
宅建マイスターメンバーズクラブ

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Mister Members' Club

宅建マイスター・フェロー認定者発表!

「宅建マイスター」の資格認定は2014年よりスタートし、本年で4年目を迎えました。
宅建取引士のリーダーとしてご活躍いただく宅建マイスターの中でも、業界の地位向上など大きな視点をもち、常に顧客満足の追求を実践し、高いマインドと能力を持って業務推進され、業界にとって有用有益な意見を開陳された方を「宅建マイスター・フェロー」に認定する制度を設けました。
業界のリーダーとも言えるお二人、及び今年度認定の3名の計5名を、このたび初となる「宅建マイスター・フェロー」として発表します。
「第1回 宅建マイスター・  
  フェロー会議」開催! pdf

宅建マイスター・フェロー
第1号・第2号

第1号
妹尾 和江 氏 リジュネビルド株式会社 代表取締役
妹尾 和江 氏
宅地建物取引士よりワンランク上の宅建マイスターからさらに研鑽を積んだ人に与えられるフェローの称号。そのフェローで構成する「フェロー会議」では不動産に関しいろいろなことをテーマに深掘りした研究討議を行い、広く一般社会に向け情報発信していく予定です。
これにより日本の社会における業界の地位向上ならびに宅地建物取引士の知識および能力向上に繋げていければと考えます。皆さん一緒にフェロー会議に参加して、どんどん提言、情報発信していきませんか。
フェローになるためにはまず「宅建マイスター」になる必要があります。ぜひ来たる2月16日の「宅建マイスター試験」を受けてみて下さい。

【略歴】
’80年に不動産業を独立開業。それ以前に起業していた建設業とともに、以来37年、現場の第一線で働きながら会社経営に携わり現在に至る。’09年JSHI公認ホームインスペクター第1回の試験に合格。ホームインスペクション業務開始。それぞれの業界団体で長年、理事ならびに要職を歴任し2016年5月大阪府知事より表彰される。

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第2号
橋本 明浩 氏 東急リバブル株式会社 ソリューション事業本部 審査部長
橋本明浩 氏
宅建マイスター フェローの皆様へ
栄えある初代宅建マイスター・フェローの皆様、おめでとうございます。
宅地建物取引士の上級資格である宅建マイスターは、リスク発見力・調査力・説明力などを高度に磨き上げた証左となる資格であり、フェローはそれを一定期間以上継続し、論文提出などの難関をクリアした方のみが得られる称号です。不動産取引の新たな基準を提供する先駆者として、これからも活躍してくださることを期待いたします。

【略歴】
同社内外の相談窓口として、消費者からの相談対応にも当たり、多くの紛争の予防・解決に努める傍ら、不動産流通推進センターや業界団体等における研修講師として活動し、紛争の予防に尽力。不動産実務に精通したわかり易い解説には定評がある。

宅建マイスター・フェロー
第1回認定者

平成29年度は3名が論文・レポートを提出し、フェローに認定されました。
おめでとうございます!

第3号
大橋 禎弘 氏
株式会社上中野不動産 代表
大橋禎弘様
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第4号
都築 潔 氏
東京ベストホーム株式会社 代表取締役
都築潔様
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第5号
田向 定雄 氏
いわて不動産株式会社 代表取締役社長
田向定雄様
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※肩書は、平成30年2月認定時のものです。

フェローに認定されるには?

応募資格は、宅建マイスターに認定されてから3年以上が経過していること。
その3年間で各々が勉強会への参加や課題の提出などにより「★」と呼ばれるポイントを取得します。
「★」を3個以上取得したうえで、提示されたテーマについての論文・レポートを提出し、審査に合格した方が「宅建マイスター・フェロー」に認定されます。

「★」取得数により、論文・レポートの必要文字数が異なります。

  必要な★の数 論文・レポート文字数
Aコース 3個以上 事例研究論文4000字以上
Bコース 10個以上 事例研究レポート1200字以上

論文・レポートのテーマ

「高齢者との媒介取引について」

今後、高齢者が売主・買主、貸主・借主などの当事者となる案件を媒介する機会が増加していくと考えられます。下記枠内の制度や手法の活用が有用ですが、それぞれのメリット、デメリットの把握、その他の制度・手法を勘案のうえ、あなたはトラブルを回避し業務を推進していくために、何をどのように活用していきますか。ケースを想定し、何を活用するかを、理由を含め下記の枠内の用語を必ず3つ以上使用し記述してください。

  • 「定期借家」
  • 「終身借家」
  • 「リバースモーゲージ」
  • 「成年後見制度」
  • 「家族信託」
  • 「プライベー トカンパニー」

認定者 紹介・講評

第3号
大橋 禎弘 氏 株式会社上中野不動産 代表
大橋禎弘 氏
23歳で旧宅建主任者資格試験合格、主任者登録後約10年間OPLインター株式会社(不動産会社)に勤務、土地建物売買仲介業務をメインに物件調査、価格査定、相続対策などの不動産に関するあらゆる案件を行いました。
「物件調査」は誰にも負けない自信があります。様々の不動産調査を行い、次に引き継がれるお客様(買主様)の為に、私自身が買主になることを想定しお客様の立場になって調査を行っていました。実績は500件を超え多くの信頼を得ることができました。
現在は今まで培ってきた不動産調査・コンサルティングの経験を活かし、本来あるべき適正な不動産価格(査定価格)をお客様に提案、間違いのない安心安全な取引ができるよう、不動産トラブルを未然に回避することなど様々な提案を行っています。
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講評
講評
明海大学不動産学部教授
周藤利一
 大橋禎弘氏の論文は、地方圏で活動している宅地建物取引士の視点から論じたものであり、地方圏の実情に即した論考であるという点で意義があります。
 まず、宅地建物取引士が高齢者との媒介取引を行うに当たり、確認しておくべき点について考察しています。ここでは特に、初動段階での確認事項を提示していますが、それらの内容は的確であり、実務上有用であると評価できます。
 高齢者との取引に限らず、およそ不動産取引におけるトラブルの多くは、初期の段階で適切な対応あるいは慎重な判断がなされなかったことに起因して発生しています。そこで、当事者の意向だけでなく、不動産取引を希望する動機や背景など、当事者に関する幅広い情報を収集することが求められますが、この論文では、そうした点を踏まえ、宅地建物取引士が顧客サイドとの信頼関係を構築する道筋について、自身の経験を踏まえて説得力のある提言を行っています。
 次に、成年後見制度について、都市部と中山間地域の相違を踏まえた考察を行っています。一口に地方圏と言っても、人口が集中している都市部と過疎が進展している中山間地域では、不動産の状況は著しく異なるものであり、この論文では、このような相違点を明確に分析した上で、成年後見制度の理解の促進と制度の普及に向けて、宅地建物取引士としての取組み方向を示しています。この点は、地方圏で活躍する宅地建物取引士ならではの経験に裏打ちされた着眼点が優れていると評価できます。
 最後に、終身借家の制度普及促進に向けた考察を行っています。空き家問題の解決方策にも資するとの観点から、建物オーナーに対し、終身借家の提案を行うことを提言していますが、「賃貸住宅におけるサービスの緩和を行うことで今後増加する高齢者にも借りやすく住みやすい提案ができる」と記述している点について、もう少し具体的な提案があれば、もっと良かったと思われます。
 以上の通り、大橋禎弘氏の論文は、高齢者との媒介取引について、地方圏の実情を具体的に示しながら、自身の経験に裏打ちされた考察を踏まえて課題を分析し、宅地建物取引士としての業務の方向を提示しており、特に、地方圏で活躍する宅地建物取引士にとって参考になる点が多い内容であると評価できます。
弁護士
吉田修平
 地元の特殊性(実情)を踏まえた提案をすることを根本に据えており、問題の発生する原因についても考察を加えており、高く評価される。特に、相談相手がいないケースや、相談する相手がいても遠方にいるため相談しにくいケースにおいて、弁護士などの専門家との連携や、それらの専門家との間の中継ぎをするために取引を行う人達との信頼関係の構築を目指している点などは高く評価される。さらに、成年後見制度や終身借家権にも触れており、その点は高い評価が与えられるものと思われる。
 ただ、終身借家権に触れたのであれば、さらにサービス付き高齢者向け住宅制度についても検討を加えることが望まれる。
 そして、全体につき、番号を付していないため、論述内容の論理的な関連性等が分からないので、今後は番号を付することをお勧めしたい(1、(1)、①、ア、など)。
 最後に、全体としていささか検討・考察の掘り下げが不足の感もするので、さらに高齢者との取引について、どのような理由でこのようなことが問題になるのかという本質論からの検討を加えて欲しかった。
第4号
都築 潔 氏 東京ベストホーム株式会社 代表取締役
都築潔 氏
現在の主な業務は、不動産リスクマネジメント及び分譲住宅企画・販売です。
ハウスメーカーにて注文住宅営業・販売会社にて一般仲介及び分譲住宅販売を経て、不動産権利調整、土地活用アドバイザリー、資産組替、店舗リノベーション、不動産仕入業務に携わっています。
2025年問題・逆ピラミッド型の人口構成が迫る中、高齢者との不動産取引の機会が増えていきます。宅建フェローとして、取引の安全確保のため他宅地建物取引士や専門分野の方々とスキルを高め合い、またサービス付高齢者住宅の契約形態(終身借家権など)・資金計画・自宅賃貸の方策など的確にアドバイスができるように高齢者及び事業体に発信していきます。
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講評
講評
明海大学不動産学部教授
周藤利一
 一般に、高齢者自身が不動産取引の当事者となる場合は、高齢者が保有する資産を活用する手法としての売買や賃貸のみならず、高齢者自身の居住目的も含め、多様な局面が存在します。  都築潔氏の論文は、これらの局面をほぼ網羅した上で、各局面の相違に着目して、丁寧に分析し、論考を進めています。
 まず、不動産売却の局面について、高齢者を保護する制度として、意思能力、法定後見制度、任意後見制度を取り上げ、各制度ごとに、宅地建物取引士として実務上留意すべき事項を、裁判例も紹介しつつ、具体的に考察しています。そして、各事項について、宅地建物取引士として何故そのようにすべきかという理由を明確に分析・提示しているので、論旨に説得力があります。  次に、サービス付き高齢者向け住宅について取り上げています。即ち、従前の制度上の課題を整理した上で、それらの課題を解決するために平成23年に改正された高齢者住まい法に基づくサービス付き高齢者向け住宅の仕組みと特徴を要領良くまとめています。
 そして、入居契約の方式について、利用権方式、普通借家権、定期借家権、終身借家権を取り上げ、これらを比較検討した結論として終身借家方式が最適であると指摘しています。  また、サービス提供契約について考察し、必須サービスとしての安否確認サービスと生活相談サービスについての留意点を考察しているほか、その他のサービスで付加価値を高める必要についても考察していますが、いずれも実務的に有用な指摘であると評価できます。
 最後に、入居のための融資や保有不動産の売却による資金調達についても触れています。この点について、宅地建物取引士が貢献できる部分に関する掘り下げた考察があれば、もっと良かったと思われます。
 以上の通り、都築潔氏の論文は、高齢者との媒介取引について、各論点に関し、理由を示したり、客観的な考察を踏まえて論旨を展開するという態度に立脚して構成されており、論旨に説得力があり、実務的に有用な内容であると評価できます。
弁護士
吉田修平
 高齢者との媒介取引から発生すると考えられる問題点について幾つかの指摘をしているが、まず、指摘事項が適切である。
 また、それについての検討内容も極めて具体的かつ詳細であるとともに、自らの不動産取引実務に関わった経験から説き起こしており、非常に意欲的であると同時に説得的なものとなっている。
 そして、論述の順序も良く、検討の内容それ自体も客観的に合理性のあるものとなっており、極めて高く評価できる。
 さらに、成年後見制度などの検討をした結果も詳細かつ具体的に記述しており、その内容も含めて大変高い評価をすることができると思われる。
 ただ、全体について番号を付することにより論理的な関係がより明確になると思われるので、今後、その点についても注意をされれば、さらにレベルが飛躍的に高まるものと思われる(例えば、1、(1)、①、ア、などの番号を付する)。
第5号
田向 定雄 氏 いわて不動産株式会社 代表取締役社長
田向定雄 氏
宅建業に従事し30数年経ち高齢者の仲間入りをしました。
宅建業を職業とし、お客様の人生でも大事なイベント「住宅(不動産)」の取引に携わる仕事をしてきました。お客様に満足してもらうプロとして高い意識と高度な専門知識・能力と倫理感を持った業務推進が必要と考えています。
不動産業に携わっていて嬉しいのは、仕事をして感謝されたり、評価を受けたり、だれかの役にたったり、提案が採用されて良い結果になった時です。その為にも向上心・向学心を忘れないで高い意識と専門知識・能力を高める努力が必要と思いますし、そのことが自己防衛と顧客満足(サービス)につながるのではないかと考え実践しています。
また宅建マイスター制度は、業界のレベルアップにもつながり良い学習と思います。
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講評
講評
明海大学不動産学部教授
周藤利一
 田向定雄氏の論文は、自身の経験に基づくケーススタディ分析を行っている点と、添付資料として多量の勉強ノートが付されている点が特徴であり、論者が平生熱心に宅地建物取引士としての研鑽に努めていることが伺えます。
 本論文では、まず、高齢者が当事者となる取引において、宅地建物取引士が初期の依頼を受ける前の段階で行わなければならない調査と確認について考察しています。ここでは、前段で一般的な留意事項を整理した上で、後段では、ケーススタディとして、自身が関与した事案における調査と確認の実際の方法と対応策に関する選択肢の検討について分析しています。そして、最終的な解決策として成年後見制度を選択したことを報告しています。
 次に、この成年後見制度の活用に当たり、宅地建物取引士として何をなすべきかについて、手続きと留意点をきめ細かく整理しています。そして、成年後見制度のメリットとデメリットを要領良く分析した上で、宅地建物取引士としての注意事項を示しています。
 第二のケーススタディとしては、高齢者が賃借人となる場合を取り上げています。ここでは、定期借家と終身借家の活用に関し、それぞれのメリットとデメリットを示しながら、自身の経験も踏まえた考察を行っています。
 第三のケーススタディとしては、保有不動産の売却を希望する高齢者を取り上げています。この場合、様々な売却の類型があることを指摘した上で、リバースモーゲージの活用について、そのメリットとデメリットを整理しています。
 第四のケーススタディとしては、多くの不動産を保有する高齢者の事案を紹介し、プライベートカンパニーと家族信託の活用を検討しています。
 最後に、不動産の評価について、具体的な相談事例を取り上げ、シミュレーションに基づく提案の内容を紹介しています。
 以上の通り、田向定雄氏の論文は、高齢者との媒介取引における諸課題について、ケーススタディ分析の手法により、それぞれの対応策に関するメリットとデメリットをきちんと把握しながら、自身の経験を踏まえて、宅地建物取引士としての業務のあり方を提示しており、実証的で説得力に富む論文であると評価できます。
弁護士
吉田修平
 非常に具体的かつ詳細な記載をしており、問題点の指摘も含め、記述内容は非常に優れている。特に、自らの経験に基づいた具体的事例の紹介も多く、意欲・意識の高さを感じさせる高いレベルの論文と考える。
 ただ、制度自体の一般的な説明が多すぎるように感じられる。論文とは自らの考えを述べることが中心となるので、今後は、制度の一般的な説明は注などに簡単に触れる程度にした方が、より洗練された論文になると思われる。また、番号を付していないため、全体についての統一感がなく、論理的な関連性が明確でないことになってしまうので、今後は番号を付することも考えるべきだと思われる(1、(1)、①、ア、など)。
 そのためかもしれないが、重複的な記載があり読みにくいものになっているので、気をつけられたい。
 さらに、誤字・脱字が多く、また、「ですます調」と「である調」とが混在しているので、このあたりも注意をされれば、さらにレベルアップするものと期待される。
 なお、賃貸事例について、定期借家権の利用や終身借家権にも触れており、大変結構だと思われる。

総評

「高齢者との媒介取引において宅地建物取引士に求められるもの」 周藤 利一
1.地域性の視点
 不動産市場は、その種類や立地場所によりセグメント化された市場であり、また、取引慣行において地域独自のスタイルが存在する。このため、例えば住宅の取引と言っても、大都市圏と地方圏とでは、その実態に関し差異が見られる。
 したがって、宅地建物取引士としては、法令を遵守し、当事者の意向と利益に即して媒介業務を遂行するという行為準則、いわば全国共通の業務モデルに従いつつ、セグメント化された市場の中で最適解を模索していく姿勢が求められる。大げさな表現をすれば、Think globally, Act locallyということになろう。
 今回提出された3件の論文の中には、地方圏の実情を踏まえて考察された論文が見られたが、まさに、この点に着目したものと言えよう。
2.個別性の視点
 そして、高齢者との媒介取引(直接契約も同様)においては、不動産の個別性に加えて、当事者の個別性が特に強く意識されなければならない。
 ここで、個別性が具体的に問題となる第一の局面は、当事者の意思の確認である。当事者たる高齢者の事理弁識能力は時間の経過と共に低下していくので、事前相談の段階でマニュアルに従い意向確認をきちんと実施したとしても、実際の契約締結時点や債務履行時点で事理弁識能力が失われてしまった場合には、取引上のトラブルが生じるおそれがある。
 高齢者の意思や事理弁識能力の確認については、今回提出された3件の論文はいずれも紙幅を割いて詳細に考察しており、宅地建物取引士としてその重要性を十分認識していることが理解されるが、時間の経過に伴う意思能力リスクへの対応として、事前のチェックのみならず、取引の各段階において、労を惜しまず当事者の意思を個別に確認する努力が求められる。
 第二の局面は、誰が当事者かという点である。高齢者の保有する不動産の資産額が大きい場合や推定相続人の数が多い場合に、特に問題となる。即ち、高齢者が十分な意思能力を保有していたとしても、取引の動機に推定相続人の意向や利益が含まれることや、推定相続人が取引当事者のごとく振る舞うことは、しばしば見られる現実である。そして、このような推定相続人同士の意向や利益が一致しない場合、あるいは高齢者の事理弁識能力が低下し、当該本人と推定相続人の意向の一致が不明確な場合に、取引上のトラブルが発生する。
 高齢者の意向に沿い、本人の利益を保護する仕組みとして後見制度や家族信託制度などが存在し、今回提出された論文3件はいずれもこれら制度に関する考察を行っている。実務上の課題としては、このような仕組みが適用される前の段階で、高齢者本人や推定相続人の意向を収集し、高齢者の保有不動産の保全や利活用の最適化のために後見制度や家族信託制度の中でいずれを選択するかという判断の過程において、宅地建物取引士としてはどのように関与すべきかという点がある。
 今回提出された論文の中に、ケーススタディとして、こうした課題を取り上げたものがあったが、当面は、個別に最適な対応を模索していくべきものと考えられる。将来的には、知見の蓄積により、宅地建物取引士と後見制度や家族信託制度との関わり方についてのモデルが確立されることが望まれる。
3.住宅セーフティネットの視点
 「病院から施設へ、施設から住宅へ」というのは、高齢者の最後の居場所に関する医療・福祉上の理念の変遷を表現する言葉であり、古くから用いられてきたが、近時、「Aging in Place」という言葉が各国で用いられつつある。住み慣れた場所で死ぬまで住み続けるという意味であり、必ずしもその場所が自宅である必要はない。
 高齢者住宅財団の「医療ニーズがある高齢者等の居住のあり方に関する調査研究」(平成27年度)によれば、病院から退院した高齢者の行先を、自宅の有無や家族の有無にかかわらず、高齢者の所得水準別に見ると、月額15万円以上の高齢者は介護型有料老人ホーム(特定施設)やサービス付き高齢者向け住宅に行く割合が高く、安全・安心な行き先が確保されているが、月額10万円未満の高齢者の場合、最も多いのが特別養護老人ホームで29%であり、次に多いのが「その他」18%であり、家族の持家・従前の賃貸住宅の16%より多いことが分かった。ここで、「その他」には不適切な事業者が運営する高齢者向け施設も含まれるが、いずれにせよ安全・安心な行き先が確保されていない。
 こうした状況を踏まえ、住宅セーフティネット法が改正され、平成29年10月25日から施行された。改正法による新たな住宅セーフティネット制度の内容については、国土交通省のホームページなどを参照していただきたいが、ここでは、宅地建物取引士としてこの制度に積極的な役割を果たすという視点から、ポイントを指摘しておきたい。
 第一に、高齢者、障害者、子育て世帯、被災者など住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度が創設されたが、その支援措置の一環として空き家を含む既存住宅を改修する費用や低額所得者の入居負担軽減のための支援(家賃補助・家賃債務保証料補助)などが講じられることとなった。宅地建物取引士としては、顧客である高齢者が保有する不動産の利活用方策の一つとして、この登録制度を選択肢として示すとともに、各種の支援措置を受けられることについて情報提供することが考えられる。
 第二に、住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進等を図るために、地方公共団体、不動産関係団体、居住支援団体等が連携して居住支援協議会を設立し、住宅確保要配慮者・民間賃貸住宅の賃貸人の双方に対し、住宅情報の提供を実施することとされている。居住支援協議会は、住宅セーフティネット法の制定時から規定されているが、今回の改正に当たり、取り組みを支援するために国庫補助が確保されている。居住希望者と賃貸希望者に対する住宅情報の提供は、宅地建物取引業者の業務の根幹であるので、宅地建物取引士としても、居住支援協議会の活動に積極的にコミットすることが考えられる。

「高齢者との媒介取引について」 吉田 修平
考慮・検討すべき2つのポイント
 高齢者との不動産の媒介取引について、考察・検討すべきポイントは、大きく分ければ2つある。
 一つ目は、売買契約や賃貸借契約などを高齢者が行う際、認知症などにより意思能力が欠如していた場合には、その法律行為は無効になってしまうため、意思能力の有無を特に調査する必要が生じるという点である。
 取引を行う際に、高齢者の親族と接触することが多いものと思われるが、親族からの話だけを鵜呑みにして、その者達が代筆などを行って高齢者のための取引を行うことを許してしまうと、後日、意思能力の問題だけでなく、他の相続人との間の利益相反などのトラブルに巻き込まれるおそれも生ずるので、注意しなければならない。必ず本人に会った上で、その意思能力の有無を自ら確認する努力を怠ってはならない。
 そして、調査により意思能力につき疑問が生じた時は、医師に診断してもらい、意思能力に問題がないというのであれば、その診断書をもらった上で取引を行うことが望ましい。もし、医師の診断により意思能力なしとの評価が下された場合には、成年後見の申立等をしてもらい、正しい手続をとった上で成年後見人との間で取引をする必要が生じてくる。
 次に、二つ目として、特に高齢者のために終身借家権とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)という制度が高齢者の居住の安定確保に関する法律により用意されているので、その点についても考察を拡げるべきと思われる。例えば、終身借家権もサ高住もいずれも利用できる者の年齢などの資格が要件として設定されているので、それをクリアーしているかどうかのチェック等が必要となる。
講評者プロフィール
周藤 利一 氏 明海大学 不動産学部教授/工学博士
昭和54年建設省入省。不動産適正取引推進機構研究理事、日本大学経済学部教授、国土交通政策研究所長など歴任。
著書に『日本の土地法』『わかりやすい宅地建物取引業法』など
吉田 修平 氏 吉田修平法律事務所 代表弁護士
定期借家権、終身借家権の立法、担保執行制度の改正などに関わり、中間省略登記の代替え手段の考案等、不動産を得意分野とする。また、各省庁の委員会委員や大学での教鞭、各種団体の役員など多方面で活躍。
著書:「事例研究 民事法 第2版」、「最近の不動産の話」ほか多数。

宅建マイスター・フェローに認定されると…

フェローバッジ
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(ラペルピン)

●「フォローアッププログラム」サイトへの研究論文・レポート掲載。
 掲載基準に合致した場合は不動産コンサルティングの専門誌「月刊不動産フォーラム21」への掲載も。
●宅建マイスター養成講座の講師登用
●宅建マイスターメンバーズクラブ懇親会へ無料招待
●ステータスの証「宅建マイスター・フェロー」バッジを提供(※希望者のみ)。
など、様々な活躍の機会を得られます。

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