HOME > 不動産相談 > 売買 > 付随義務違反による契約解除の可否

不動産相談

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

 

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 0807-B-0075
付随義務違反による契約解除の可否

 業者が一般の個人から物件を購入するにあたり、売主が、分筆された私道をたすきがけで所有している他の土地所有者から、私道についての転売条件付の通行等に関する承諾書を入手することができなかったこと(売主の書面取り付け義務違反)を理由に、買主は売買契約を解除することができるか。

事実関係
(1)  当社は媒介業者であるが、このたび、売主が一般の個人で、買主が宅建業者の場合の戸建住宅の売買の媒介をすることになった。
 早速、物件の調査に入ったところ、その物件は、過去にある不動産業者が分譲したミニ開発物件で、前面道路は、道路位置指定のある私道で、その私道に面している物件の所有者が、それぞれ分筆された私道をたすきがけで持ち合っている(分有している)、いわば互いにこれを私道として通行する通行地役権が設定されている形態のものであることが判った(後記【参照判例】参照)。
 
(2)  ところが、買主からは、私道の通行等について、私道の所有者全員から、買主の指定する内
容の文書で同意を取り付けるよう要請された。そして、売買契約において、その同意書の取り付けが売主に義務付けられ、同時に、買主が指定する内容の文書も、私道所有者の人数分が買主から売主に交付された。
(3)  このような経緯を経て売買契約は締結されたが、その後、私道所有者のうちの1人が、同意書の文言の一部を削除してくれなければ判を押さないと言い出したため、やむなくその旨を買主(業者)に伝えたところ、買主は、これを契約違反だとして、売買契約を解除すると言い出した。私道所有者の1人が削除すると言った部分は、「買主が購入物件を第三者に譲渡した場合にも通行等を認める。」という部分である。
質問
 このままでは、売主が契約違反をしてしまうことになるが、もし、所定の文書での取り付けができない場合、契約は解除されることになるのか。
回答
 
1. 結論
ならないと考えられる。
2. 理由
(1)  買主からの契約解除が認められるためには、まず、その解除権が発生するための要件として、売主に債務不履行があることが必要となるが、その債務不履行の内容も、一般に、(1)履行遅滞、(2)履行不能、(3)不完全履行の3つの類型があるとされている。
(2)  本件の債務不履行の類型は、上記の中の(3)の類型に入るが、その不履行の内容は本来の「要素たる債務(中心的債務)」である「給付義務」の履行そのものが不完全ということではなく、それに付随する債務としての、いわば私道の通行承諾等の書面取り付け義務に違反するいわゆる「付随義務違反」というものであるから、買主からの契約解除が認められるか否かは、その「付随義務違反」の内容が、買主にとって契約の目的を達しえないような重要なものであるか否かによって判断されると解される。
  
 そのように考えた場合、本件の売主が他の私道の所有者から取り付ける書面の中味がどのようなものであるかがわかれば、買主からの契約解除が認められるかどうかがはっきりするということになる。
(3)  ところで、本件の取引の対象となっている土地のうち、私道の部分は、【事実関係】(1)にもあるとおり、それぞれ私道所有者の通行のための通行地役権が設定されている。したがって、売主が他の私道所有者から取り付ける書面の内容が通行承諾のためだけのものであれば、もとよりその取り付けは必要ないものであるし(末尾【参照判例】参照)、また、その内容に通行承諾以外の、たとえば配管のための掘削承諾等の内容が盛り込まれたものであったとしても、その私道が、分譲時から互いの通行や配管のために利用し合ってきているものである以上、買主(業者)がこれを第三者に譲渡したからといって、一部の私道所有者が、その第三者の土地利用を拒むことは権利の濫用として許されないと考えられる。
  
 このように考えてくると、売主が他の私道所有者から取り付ける書面の中味は、いずれも売買契約の目的を達しえないような重要なものとは考えられず、したがって、売主において買主指定の書面での取り付けができなかったとしても、その不履行を理由とする買主(業者)からの売買契約の解除は認められないと考えられる。
 
参照条文
 
○  民法第280条(地役権の内容)
 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。(以下、(略))
 
○  民法第281条(地役権の付従性)
(1) 地役権は、要役地(中略)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役権について存する他の権利の目的となるものとする。(以下、(略))
(2) 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
 
参照判例
 
○  東京高判昭和48年6月28日判時714号191頁(要旨)
 「分譲会社が分筆にあたり開設した私道敷は公道との連絡に通行するためのものであって、分譲地が各人に取得されて各別の所有者に属するに至ったときは右私道に接着する各土地のため互いにこれを私道として通行する通行地役権が設定されるべきものとされていたものであって、(中略)分譲により各土地を取得した各所有者は右の関係を承認して取得したというべきであるから、その各土地取得の都度、自己の土地の私道敷に当る部分は右私道に接する他の土地のための通行地役権を負担する承役地として、また自己の土地は他の土地の私道敷分につき通行地役権を有する要役地として、その間相互に交錯する通行地役権を設定したものと認めるのが相当であり、反対の証拠のない本件では右地役権は期間の定めがなく、かつ無償のものであると認めるべきものである。」
 
○  大判大正13年3月17日民集3巻169頁(要旨)
 要役地の所有権が移転した場合、民法281条により、地役権も要役地の所有権の従としてともに移転するが、要役地の所有権の移転について、その旨の登記を経たことにより対抗要件を備えたときは、地役権の移転については、登記がなくとも、承役地の所有者であった者及びその一般承継人にも対抗することができる。
 
監修者のコメント
 質問の「事実関係」の状況から見る限り、【回答】のとおり通行地役権が設定されていることから、買主からの契約解除は困難と考えられるが、本ケースに似たケースで、仮に売買の条件として、たとえ法的に通行地役権が確保されていても、事実上、関係者で揉めるのがイヤだからという理由で、買主が全員の承諾書を取り付けることを重要な要素として表明した上で、契約を締結した場合は、異なる結論となる可能性がある。すなわち、そのような場合は、単なる「附随義務違反」とも言い切れず、解除が認められる可能性はある。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「他人の私道の通行・掘削同意」

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-20819:30〜16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

 

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ