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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 0712-B-0049
引渡し前の失火による引渡遅延と契約の解除

売主が不注意で引渡し前にボヤを出し、修理のため、引渡し期日が遅れるときは、契約の解除が認められるか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、先月当社の媒介で売買契約を締結した売主の自宅(取引物件)が、売主の過失で、台所からボヤを出した。
 ボヤの程度は、台所の壁全体と天井および天井裏の一部であるが、買主は縁起が悪いので、契約を解除したいと言ってきた。しかし、売主は、自分達の不始末だから、若干引渡しが遅れるが(1週間程度)、修理して引渡すと言っており、ローンを実行する金融機関の方も、完全修理ができるのであれば、ローンは予定どおり実行すると言っている。
質問
 契約解除を希望する買主の主張は、法的に認められるか。取引を完結するための何か良い方法はないか。
回答
 
1. 結論

 認められる可能性は5分5分であると考えられる。したがって、買主があくまでも契約解除を主張する場合には、訴訟になる可能性が高く、その場合には、媒介業者としての対応の限界を超える。
 しかし、売主が建物の完全修理のほかに、慰謝料等も含めた十分な損害補填をするのであれば、円満解決の途もないわけではないので、媒介業者としては、法律の専門家とも相談し、まずは、そのような話し合いの方向で労をとるべきであろう。

2. 理由

 売主は、買主に対し、その引渡しを完了するまで、善良な管理者の注意をもって、売買物件の管理をしなければならない(民法第400条)。また、売主は、買主に対し、所定の期日までに、その債務の本旨に従った履行をしなければならず、もし、期日を徒過したり、債務の本旨に従った履行ができなければ、買主に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない(民法第412条、第415条)。
 以上の規定は、いずれも売主の義務として民法が定めているものであり、本件の売買契約にも当てはまるものである。したがって、本件の売主の行為は、引渡しの期日を徒過する点において、債務不履行(履行遅滞)となるし、また、売主が建物を修復して引渡すといっても、その原因が火災という(買主にとっては「縁起が悪い」という)心理的瑕疵を内包するものである以上、その履行は債務の本旨に従っていない不完全なものとして、債務不履行を構成するものとも考えられる。
 よって、本件のケースにおいては、買主として、前者の「履行遅滞」による契約解除を選択するか、後者の「不完全履行」による契約の解除を選択するか、いずれにしてもそれらの複合的な主張、あるいは総合的な判断として、本件の目的物が契約の目的を達しえないものとして買主の契約解除が認められる可能性は5分5分と考えられる。
 なお、建物の瑕疵について、その修復後においても、建物の交換価値を低下させていることを理由として、売主の瑕疵担保責任を認めた事例がある(後記【参照判例】参照)。

 
参照条文
 
○  民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
 債権の目的物が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
○  民法第412条(履行期と履行遅滞)
(1)  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
(2)(3) (略)
○  民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に(注)従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときも、同様とする。
(注)  「債務の本旨」に反していることは、履行の方法が不完全であった場合や履行に際して必要な注意義務を怠った場合(本件のようなケースの場合)にも認められる。
○  民法第541条(履行遅滞等による解除権)
 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
 
参照判例
 
○  福岡高判平成18年3月9日(要旨)
 新築マンションの共用部分の外壁タイルに大規模な補修工事を要する瑕疵がある場合に、補修によりその機能上の問題が解消された後においても、その瑕疵に起因して一般的に受ける不安感・不快感が認められることなどにより、区分所有権の交換価値が低下しているなど判示の事情の下では、区分所有者は、売主の瑕疵担保責任に基づき交換価値の低下分について損害賠償を請求することができる。
 
監修者のコメント
 本ケースにおいて買主の解除が認められるかどうかは、裁判になっても容易に結論を出しにくい難しい問題と思われる。【回答】にあるように火事が出たというのは、主観的感情的瑕疵に該当する可能性が高いが、契約締結時に存在したわけではないので、瑕疵担保責任の問題にはならない。不完全履行とみた場合、通常の不完全履行の場合は、完全な履行にする、いわゆる「追完」ができるか否かが問題となるが、火事が出たという過去の事実を消し去ることはできないので、追完の可否だけで律しきれない。少なくとも「補修すれば問題ない」とはいえないであろう。
 買主側の事情を主として、双方の事情を総合的に判断したうえで、買主の解除権の行使が「権利の濫用」といえるか、「信義則」上認められるかというように一般条項を持ち出して判断せざるを得ないケースと思われる。

より詳しく学ぶための関連リンク

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