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賃貸事例 1210-R-0107
天災で被災した賃貸アパートの明渡し請求の可否(正当事由の有無)

 当社は媒介業者兼賃貸管理業者であるが、このたびの震災や大雨の影響で築30年の賃貸アパートが被災し、その修理に約300万円の費用がかかる。そのため貸主(大家)としては、この際その10世帯の借主に建物を明け渡してもらい、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションに建て替えたいと考えている。ついては、貸主に明渡しのための「正当事由」は認められるか。

事実関係

 当社は媒介業者兼賃貸管理業者であるが、このたびの地震や大雨の影響で、当社が管理している賃貸アパートに被害が生じた。被害の内容は、地震の影響で屋根の一部が壊れ、建物の外壁全体(モルタル仕上げ)にかなりのクラックが入ったために、雨漏りのほか、そのクラックからの雨水の侵入により、建物の内外装に大きな被害が出たが、全体的にはその屋根と外壁を補修することでそのまま居住することが可能な状況にある。
 このような状況の中で、貸主(大家)は、この建物を修理するためには約300万円の費用がかかるので、この際入居している10世帯の借主に建物を明け渡してもらい、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションに建て替えたいと考えている。

質問

 このアパートは築後30年を経過しているが、このような状況にある賃貸アパートの場合、貸主に、明渡しのための「正当事由」は認められるか。

回答

1.   結 論
 現状のままでは、立退料等の支払いにより正当事由が補完されない場合には、貸主に「正当事由」が認められる可能性は低いと考えられる。
2.   理 由
 貸主に「正当事由」が認められるためには、まず貸主がその建物を使用するという、いわゆる「自己使用」の必要性があることが前提となるが(借地借家法第28条)、その自己使用の必要性の有無については、たとえば建物の老朽化に伴う建物の建替えの場合には、「自己使用」の一態様としての「自己営業」(土地の有効利用)として認められるケースが増えているので、その延長上にある今回の被災による建替えの場合にも、「正当事由」が認められる可能性がないとはいえない。
 しかし、それらの「営業の必要性」は、「正当事由」の判断要素としては「居住の必要性」よりも弱く斟酌されているので、被災した貸主には気の毒ではあるが、それ相応の立退料の支払いがその「正当事由」の補完要素として必要になると考えられる(大阪地判昭和63年10月31日判夕687号166頁、東京高判平成元年3月30日。判時1306号38頁)。
 なお、本件の建物が今回の被災によって倒壊する危険があるとか、建物がほとんど使えないというような場合であれば、それだけで「正当事由」が認められることになるであろうが、そこまでの被害は受けていないので、結論で述べたとおり、現状では「正当事由」が認められる可能性は低いといわざるを得ない。つまり、この程度の被災状況では、貸主の修繕義務の方が優先するということになろう。

参照条文

  借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

監修者のコメント

 借家契約が契約期間の定めがある場合は、期間満了の場合における更新拒絶において、契約が法定更新されて契約期間の定めがない場合は、中途解約の申入れにおいて、それぞれ貸主に「正当の事由」がなければならないが、その「正当の事由」は借地借家法第28条に規定されているとおり、諸般の事情・要素を総合して判断することになるので、ケースごとに仔細に検討しなければならない。平成4年8月に施行された新しい借地借家法の第28条は、規定上も「賃借人に申し出た財産上の給付」すなわち立退料を考慮要素とする旨明文化したこともあり、裁判の現実においても立退料の額が「正当の事由」を判断する大きな基準となっているのが実情である。本件では、10世帯全体の賃料額がいくらくらいか、300万円がそれとの相関関係からみて貸主に出捐させるのが酷か、そしてその負担が貸主の経済的能力からみてどうか、なども重要な考慮要素となるが、一般論としては回答のとおりと思われる。

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