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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1210-R-0106
法人の代表者が個人保証している建物賃貸借における代表者の死亡

 ある会社が事務所を借りているが、その借主会社の個人保証をしている代表取締役が死亡した。契約はどうなるか。その場合、個人保証をする連帯保証人は、次の代表取締役がなるのか、それとも死亡した代表取締役の相続人がなるのか。
 そもそも連帯保証というのは、賃貸借契約とは別の契約なのか。もしそうだとしたら、誰と誰の契約なのか。

事実関係

 当社は賃貸管理業者であるが、当社が管理をしている事務所を、ある会社が賃借し、その債務につき会社の代表取締役が個人保証をしている。ところが、先日その代表取締役が死亡した。

質問

  •  このような場合、賃貸借契約はどうなるのか。
  •  新しい代表取締役が決まったら、契約書はつくり直さなければならないか。
  •  連帯保証人は、次の代表取締役が決まったら、その代表取締役がなるのか、それとも死亡した代表取締役の相続人がなるのか。
  •  そもそも連帯保証というのは、賃貸借契約とは別の契約なのか。もしそうだとしたら、誰と誰の契約なのか。

回答

1.   結 論
   質問1.について ― そのまま存続する。
   質問2.について ― 必ずしもつくり直さなければならないというものではないが、連帯保証人をどうするかという問題があるので、新しい連帯保証人が決まり次第つくり直した方がよい。
   質問3.について ― 連帯保証人は、従前の代表取締役が死亡した時点で、その相続人がすでになっている(大判昭和9年1月30日民集13巻103頁)。
 しかし、本件の借主会社が同族会社などの場合で、その相続人が次の代表取締役になるというのであればそれでもよいが、そうでない場合は、次の代表取締役になる者が従前と同様に個人保証をするというのが適当ではないかと考える。もちろん、その会社が役員会等で別の決定をし、その決定に貸主が同意をすれば、話は別である。
   質問4.について ― 連帯保証というのは、賃貸借契約とは別の、賃貸借契約に付随して締結される貸主と連帯保証人との間の契約である(連帯保証契約=民法第446条、第454条)。
 なお、この場合、一般にその前提として、貸主・借主間の賃貸借契約の中に連帯保証人を立てることを約する条項が存在するが、それは保証契約ではなく、借主が貸主に対し連帯保証人を立てるという義務を負う契約に過ぎない。
2.   理 由
  について
 代表取締役は会社の代表者であるが、代表取締役が欠けても会社そのものは存続するし、連帯保証人が死亡しても賃貸借契約の効力には影響はない。したがって、あとは借主である会社が代表取締役の後任を選出し、貸主との間で連帯保証人の問題をどうするかを決めればよいだけである。
  について
 借主である会社が存続し、賃貸借契約の効力にも影響がない以上、必ずしも契約書をつくり直す必要はないが、代表取締役が変わり、連帯保証人も変わるわけであるから、特に連帯保証人の問題をどうするかについて、新たな代表者と貸主が協議し、その協議がととのった段階で契約書をつくり直す方が後日のためによいということだけは間違いない。
  について
 個人保証における連帯保証人の地位(権利義務)は、相続の対象になるので、その従前の代表取締役の相続人がその死亡と同時に連帯保証人になっていることは間違いない(民法第882条、第896条)。
 しかし、結論で述べたように、会社の債務についてその代表取締役が個人保証するということは、あくまでも会社のために保証するのであるから、その保証債務を会社と関係のない相続人に承継させるのは妥当とはいえない。したがって、本件の賃貸借契約における連帯保証人については従前のケースと同じように、後任の代表取締役が個人保証するということで対応するのが妥当な取扱いといえよう。
  について
 (略)

参照条文

民法第446条(保証人の責任等)
   保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
   保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
   (略)
民法第454条(連帯保証の場合の特則)
     保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前2条の権利(催告の抗弁権、検索の抗弁権)を有しない。
民法第882条(相続開始の原因)
     相続は、死亡によって開始する。
民法第896条(相続の一般的効力)
     相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

監修者のコメント

 賃貸借契約の保証人が死亡した場合、その保証債務はどうなるのか、すなわち相続人に承継されるのか、それとも消滅するのかについては、判例は相続人に承継(相続)されるとしている(大審院(現・最高裁)昭和9年1月30日判決)。しかし、保証人の相続人が主たる債務者と親しい関係にあればともかく、そうでない場合には、債権者である貸主と交渉し、保証人の変更をすることが適切である。本ケースでは、回答のようにすべきである。

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