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賃貸事例 1206-R-0103
建物賃貸借契約における明渡しの念書の効力と立退料の算定方法

 当社は賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、このたび貸主からの要請で、借主に部屋の明渡しを求めたところ、借主が「来月末日までに明け渡す」という念書を書いてくれた。ところが、後日になって、貸主には「正当事由」がないということで明渡しを拒否してきた。
 このような場合、貸主はこの念書をもとに借主に部屋の明渡しを求めることができると思うが、どうか。貸主は何がしかの立退料を払ってもよいと言うが、このような場合の立退料の相場はどの位か。借家権価格はどのように算出するのか。本件の場合も、立退料は借家権価格で算出するのか。そもそも立退料は何に対する補償なのか。本件の場合の立退料はどのように考えたらよいか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、先日貸主からの要請で、家賃の支払いが遅れている借主に対し、「貸主の甥が入居するので、部屋を明け渡して欲しい」と申し入れたところ、借主がその申入れに応じたので、借主に「来月末日までに部屋を明け渡す」という念書を書いてもらった。
 ところが後日になって、借主は、甥の入居は「正当事由」にはならないので、明渡しには応じられないと言ってきた。

質問

  •  この借主が書いた念書は、借主が貸主との合意で作成した「解約合意書」と同じだと思うので、この念書に基づいて借主に明渡しを求めることができると思うが、どうか。
  •  貸主は、借主に部屋を明け渡してもらうためには、何がしかの立退料を支払ってもよいと言っているが、本件のようなケースの場合は、相場的にはどの程度の額になるか。
  •  不動産鑑定評価では借家権価格というものがあるようだが、それはどのように算出されるのか。
  •  本件のようなケースでも、借家権価格で立退料が計算されるということか。
  •  立退料として借家権価格が適用されるケースは、どのようなケースか。
  •  そもそも立退料にはどのような内容の補償が含まれているのか。貸主としては、どのような考え方での立退料の支払を考えればよいのか。

回答

1. 結 論
 質問1.について ― 本件の念書に、「○月○日までに建物を明け渡す」ということだけしか書いてない場合には、明渡しの合意そのものに疑義が生じる可能性があるので、本件の念書の存在だけで明渡しを求めることができるかどうかは判然としない。
 質問2.について ― 結論から言えば、立退料には相場はないので、当事者間でよく話し合って決めるしかない。
 質問3.について ― 種々の算出方法があるが、実務でよく利用されている「割合方式」では、次のような計算式で算出されている。

(注)  借家権割合は、地方・地域によって異なるが、一般的には土地部分については借地権価格の20%~30%程度、建物部分については建物価格の30%~80%といえる(澤野順彦「借地借家の正当事由と立退料」42頁(新日本法規))。
 なお、建物がアパートの1室などのような場合には、その1棟の建物の評価額を部屋ごとの床面積で按分し算出する。
 質問4.について - そのようなことはない。ただ、本件のようなケースで裁判になった場合に、その正当事由を補完するための立退料が借家権価格を基準に算定されることがないとはいえないが、本件の場合は当事者の話し合いで決めるケースであるから、そのような場合に必ず借家権価格で決めなければならないというものではなく、立退料の額は当事者が自由に決めることができるものである。
 質問5.について - できるだけ一定の基準で立退料を算出する必要がある場合-たとえば、公共用地の買収や都市再開発などで借家人の立退き補償をする場合に適用されるケースが多いが、それ以外にも、貸主側の都合で、当然存続されるべき借家権を消滅させるケースなどに適用されることが多い。
 質問6.について - 一般に立退料に含まれている補償の内容は、次のようなものであるとされている。したがって、概括的に見れば、通常の居住用建物賃貸借において支払う立退料は、最低①の補償は必要になってくるが、それ以外の補償については、今回のように立退きの原因を借主も作っているような場合には、③の補償はプラスアルファ程度でよいとも考えられるが、借主に非がなく、貸主にも正当事由があるとはいえないような場合には、③の補償の額を調整しながら話し合っていくことが必要になってくるということであろう。
 なお、②の補償は、主に業務用の賃貸借の場合に適用されると考えればよいであろう。

 (注) 居住権の補償は、③の借家権の補償に含めて補償すればよいとする考え方もある。
2. 理 由
について
 通常、念書は相手方が主張する約定の内容や申入れに対し、同意あるいは承諾を与える旨の確約書(契約書)としての意味をもつものが多い。したがって、通常の念書であれば、今回のような片務的な内容のものであっても、その契約書としての効力は生じるものと考えられるが、今回の念書の内容は、借主が主張しているように、明渡しの問題は本来貸主側に「正当事由」があってはじめて更新の拒絶や解約の申入れができるというのが原則であるから(借地借家法第28条)、借主としては、その念書は明渡しの合意を定めたものではなく、明渡しをする場合の期日を定めたものであるとか、合意の前提としての立退料の支払いがあってはじめて効力が生じるものであるといった主張がなされる可能性がある。そうなると、貸主がこの念書をもって裁判所に明渡し訴訟を提起したとしても、勝訴判決が得られるという確証はなく、結局は「正当事由」を補完するための立退料を支払うか、支払うことを約束したうえで合意解約を成立させるしかないと考えられる。
について
 立退料は、建物賃貸借契約が貸主からの解除によらず、当事者の話し合いあるいは貸主からの解約申入れ等によって終了し、借主が建物を明渡す条件として貸主から借主に支払われるものであるから、当事者のそれぞれの事情により、あるいはケースにより千差万別であり、相場というものは存在しないといえる。
 ただ、今までの訴訟や調停、和解等で解決された事案の内容を検討した場合に、一応の計算式を定めることは不可能ではないと考えられるが、それでも最終的には関係者の裁量によって算定されているというのが実情である。そのため、裁判所もその算定について、次のように述べている。
 「立退料の額の決定は、賃貸借契約の成立の時期および内容、その後における建物の利用関係、解約申入れ当時における双方の事情を総合的に比較考量して、裁判所がその裁量によって自由に決定しうる性質のものである。」(東京高判昭和50年4月22日金融法務事情772号33頁)
~⑹について
 (略)

監修者のコメント

 世間では、義務や負担を自分の意思で念書のような何らかの書面にした以上、もはやそれに拘束されて、その内容と異なる主張はできないと考えることがしばしばであるが、必ずしもそうではない。重大な勘違いであれば、その意思表示が「錯誤」により無効とされたり(民法第95条)、またその内容いかんによっては「信義則」(民法第1条2項)や「公序良俗違反」(民法第90条)といった一般条項を根拠として無効とされることもある。本ケースの念書は、賃借人のその後の主張をみると、法律に無知であったために書いてしまった可能性があり、錯誤無効となるかも知れない。
 なお、立退料の「相場」をよく聴かれることがあるが、回答のとおり、相場などまったくない。また、一般の建物賃貸借において借家権価格をその基準とすることは、現在ではあまり見られない。

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