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賃貸事例 1112-R-0096
残置物エアコンの故障に対する修理義務の所在

 従前の借主が取り付けたエアコン(いわゆる「残置物」)付の建物賃貸借契約を締結したが、入居半年後にエアコンが故障した。「エアコンの修理義務は借主が負う」という重要事項説明はしたが、賃貸借契約書には何の特約も定めなかった。このような場合、その修理義務は誰が負うことになるのか。重要事項説明の内容は契約内容といえるのか。

事実関係

 当社はこのたび建物賃貸借契約の媒介をしたが、その際重要事項説明書に、「現在室内に取り付けられているエアコンは、従前の借主が所有権を放棄したいわゆる「残置物」につき、その修理は借主が行うものとする。」と記載し、借主にその旨の説明をした。ところが、入居半年後になってエアコンが故障したため、トラブルになった。
 なお、その残置エアコンの修理義務については、賃貸借契約書にはなんらの定めもしていないが、重要事項説明書の説明受領欄には、借主が説明を受けた旨の署名押印がなされている。

質問

次のような借主の主張は正しいか。
 エアコンは、貸主が建物と一体で貸し付けたものであるから、その修理義務は、本来は貸主が負担すべきものである。
 媒介業者は、この残置エアコンは貸主の所有物ではないので、本来賃貸借契約の対象にはならないと言っているが、所有権の有無に関係なく、賃貸借の対象になる。
 そもそも当事者間においては、エアコンの修理義務を定めた特約はなく、あるのは単に媒介業者が重要事項として一方的に借主に説明したものだけであるから、その説明内容を契約内容とするのはおかしい。

回答

1. 結 論
   質問1.について ― 一般論としての「本来は貸主が負担すべきものである」という借主の主張は正しいが、本件の事案においては、正しくない。
   質問2.について ― 借主の主張は正しい。本件のエアコンについては、所有権の有無に関係なく、賃貸借の対象になる。
   質問3.について ― 借主の主張は正しくない。本件での重要事項説明の内容は、契約内容になっていると解すべきである。
2. 理 由
 ⑴について
     建物賃貸借契約における建物の修繕義務は、原則として貸主にある(民法第606条)。そして、エアコンも建物と一体で貸し付けたという借主の主張もそのとおりである。したがって、その限りにおいては、今回の借主が主張する、修繕義務は「本来は貸主が負担すべきものである」という主張は正しいといえる。
 しかし、本件の事案においては、媒介業者がその重要事項説明において、「修繕義務は借主が負担する」旨の説明をしており、その説明の内容は媒介業者が貸主の意思を伝達し、借主がこれに応諾したものと考えることができるので、本件の事案における回答としては、その点において正しいとはいえない。
 ⑵について
     一般に「残置物」といわれている物は、従前の借主がその所有権を放棄したものであるから、それを占有している貸主がその物を次の借主に使わせる(処分する)ということは、貸主がその物の所有権を取得しているものと考えることができるので(民法第239条)、その意味で、媒介業者が言っている「エアコンは貸主の所有物ではない」という考え方は間違いであり、所有権の有無に関係なく(他人の物であっても)、賃貸借の対象になるという借主の主張は正しいといえる(民法第559条、第560条、後記【参照判例】参照)。
 ⑶について
     上記理由⑴で述べたとおり、本件の事案における媒介業者の重要事項説明の内容は、媒介業者が貸主の「使者(注)」として、貸主の意思を伝達したものと考えられるので、その伝達内容(重要事項説明の内容)を受領した借主は、その修繕義務についての貸主の「申込み」を「承諾」したことになり、契約(特約)が成立したことになるからである(民法第526条第1項)。
(注) 「使者」とは、本人の代理人ではなく、本人の「補助者」であって、単に書類を届けたり、言われたことを伝えるだけの行為をする者のことである。したがって、媒介業者も代理人ではないので、本件の借主の主張などの事実関係を見る限り、本件の媒介業者は貸主の「使者」として貸主の意思を伝達したものと解することができる。
 ただ、本来は「取引条件」について重要事項説明をする場合には、事前に当事者が合意した内容を重要事項として再度説明し確認するという方法をとることが望ましく、本件のような説明の仕方は、時間的・内容的にやむを得ない場合に限られるべきである。

参照条文

民法第606条(賃貸物の修繕等)
   賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
   (略)
民法第239条(無主物の帰属)
   所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
   (略)
民法第559条(有償契約への準用)
     この節(売買)の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
民法第560条(他人の権利の売買における売主の義務)
     他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

参照判例

    東京高判昭和39年7月9日下民集15巻7号1731頁(要旨)
 他人の物を賃貸したが、借主をして所有者との関係で適法に使用収益できる権原を取得させることができなかった場合には、貸主は、法第559条によって賃貸借契約に準用される本条および法第563条の規定によって賃借人に対して担保責任を負う。これに基づく賃借人の解除は法第620条の規定に従い、遡及的効果を有するものではない。

監修者のコメント

 売買でも賃貸借でも契約の内容は、契約書に書かれているものだけが、その内容となるものではない。たとえば、売買で重要な「引渡し日」が契約書に記載がなくても、当事者が○月○日にしようと合意したものがあれば、それは契約内容として当事者はそれに拘束される。本ケースでは重要事項説明書に契約内容に関することが記載されているというのであるが、重要事項説明書に記載があるから当然に契約内容となるものではないが、その説明を借主が受け、それを納得したのであれば、その旨の合意が成立しているとみることができる。
 そして、建物賃貸借においてエアコンの修理義務は借主にあるとの特約は、それが他の事情を総合すると極めて不当であるという特殊な事情がない限り有効と解されている。

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