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売買事例 1106-B-0136
賃貸管理物件の管理料の未払を理由とする留置権の行使

 賃貸アパートの売買の媒介をしたが、決済・引渡しの前になって、賃貸管理業者から、未払いになっている管理料を支払わない限り、マスターキーを返さないという主張がなされた。このような主張は正当なものか。売主には未払管理料を支払う余力はないが、媒介業者としては何とか決済・引渡しを完了させたい。何か良い方法はないか。

事実関係

 当社は、このたび約50世帯ある賃貸アパートの売買の媒介をした。売主は宅建業者で、売買契約の締結時にはすでに倒産状態にあり、この物件を売却し、その売買代金で債務を弁済する以外に方法はないという状況にあった。
 そこで、当社はこの物件の抵当権者である金融機関と話をし、何とか売却代金の範囲内で抵当権を抹消してもらうよう話を付けたが、売買契約締結後、決済・引渡しの段になって、それ以外の債権者として、この物件を管理していた賃貸管理業者がいたことが判明し、その管理業者に対し約150万円の未払管理料があることが判った。
 しかし、今回の売却代金では余剰がなく、売主がその150万円の支払いができないために、管理業者は、本件の売買物件(賃貸アパート)のマスターキーを返さないと言い出した。
 なお、この賃貸管理業者と売主との間の管理委託契約がすでに解除されているのか、存続しているのかについては、双方の言い分が異なるためによくわからない状態になっている。

質問

  •  この賃貸管理業者は、売買物件(賃貸アパート)のマスターキーを返さなくてもよいという権利はあるのか。
  •  このような状況の中で、媒介業者としては何とか決済・引渡しを完了させたいが、何か良い方法はないか。

回答

1. 結論
   質問1.について ― 賃貸管理業者には、マスターキーを手元に留め置く権利があると解される。
   質問2.について ― 約150万円の未払管理料については、別途売主が弁済するということで、ただちに当事者が売主の個人保証付の「公正証書」を作成したうえで、とりあえず決済・引渡しを行い、未払管理料の一部を弁済しマスターキーの返還を受けるという方向で、再度金融機関を交えて話し合うという方法が考えられる。
2. 理由
  ⑴について
   本件の賃貸管理業者には、賃貸管理委託契約という契約によって生じた債権(管理料)を担保するために、委託者(本件の売主)から預かったマスターキーを手元に留め置く権利(留置権)があると解される(民法第295条)。なぜならば、この民法第295条の規定は、占有物(マスターキー)を債権の弁済を受けずに返還させられることが不公平になる場合も含まれると解されているからである。ただ、本件の賃貸管理業者の債権は、商人間の行為によって生じた債権なので、民法の規定というより、商法の規定によってマスターキーを留置する権利があるという方が適切であろう(商法第521条=商人間の留置権)。
  ⑵について
   (略)

参照条文

  民法第295条(留置権の内容)
   他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
   前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
  商法第521条(商人間の留置権)
     商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債権者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

監修者のコメント

 留置権が成立するためには、①「他人の物」を占有していること、②「その物に関して生じた債権」を有すること、③債権が弁済期にあること、④占有が不法行為によって始まったのではないこと、が必要とされている(民法第295条)。本ケースでは、①、③及び④の要件は、ほとんど問題なく満たしているところ、民法上であれば②の要件すなわち物と債権の牽連性が検討されるべきであるが、その賃貸管理業者にとっては、その管理料は商行為によって生じた債権であるため、商事留置権が成立する(商法第521条)。商事留置権においては、債権者が債務者との間の商行為によって自己の占有に帰した債務者所有の物を留置することができ、上記②の要件を要しない。したがって、マスターキーを留置できると解される。
 媒介業者として、何とか決済・引渡しを完了させたいということであれば、回答のような方法も一方法であるが、賃貸アパートの売買に当たり、管理業者に対する管理料の未払について無関心でいたとするならば、媒介業者の調査業務違反を問われる余地が十分にある。売主には未払管理料を支払う余力がないのであれば、媒介業者も相応の責任を負うことも踏まえ、関係者で話合うことも現実的な解決方法であろう。

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