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賃貸事例 1102-R-0086掲載日:2011年2月
建物賃貸借契約における「ペット礼金」の法的性質
最近、ペットの飼える賃貸マンションで、「ペット礼金」という金銭が授受されることがある。これはどのようなものか。領収した場合と預かった場合で、その法的性質が異なるのか。媒介業者としては、どのようなかたちで授受するのが望ましいか。
事実関係
当社は賃貸の媒介業者であるが、最近、ペットの飼える賃貸マンションなどで、「ペット礼金」なるものが授受されることがあり、他の業者からどのようなものなのかについて聞かれることがある。
質問
1. | ペット礼金を通常の「礼金」(注1)と同じように「返還しない」ものとする場合と、通常の「敷金」(注2)と同じように「預り金」とする場合とでは、当然その意味合いが違うと思うが、どうか。 | |
2. | ペット礼金を授受する場合に、特に注意する点はどのようなことか。 | |
3. | ペット礼金は、通常の「礼金」と同じような趣旨で授受する方がよいか、それとも通常の「敷金」と同じような趣旨で預かる方がよいのか。 | |
(注1 | )「礼金」とは、建物賃貸借において貸主が借主から受領する金銭で、契約が終了しても貸主は借主に返還しなくてもよいものとして、主に関東・京都方面で慣行的に授受されているものである。 なお、その授受の趣旨・目的については判然としていないが、最近の裁判例の中には、礼金は「賃借権設定の対価」であるとしているものがある(大阪高判平成21年10月29日)。 |
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(注2 | )「敷金」とは、主として建物賃貸借契約において借主が貸主に預ける金銭で、賃貸借契約期間中およびその終了後、明渡し義務が履行されるまでの間に生じる損害金その他賃貸借契約関係によって貸主が借主に対して取得する一切の債権を担保する目的で預けるものである。 |
回答
1. | 結論 | |
⑴ | 質問1.について ― 当然に違うものである。 | |
⑵ | 質問2.について ― 特に注意する点としては、賃貸借契約の締結にあたり、ペット礼金の「授受の目的」やその「法的性質」について、重要事項説明書や賃貸借契約書の特約欄などに明確に定めておくことが重要である。 そのほかには、賃貸借物件が分譲マンションの場合には、その時は管理規約にペット禁止の条項が定められていなくても、その後の状況によっては、ペット禁止の規約改正がなされることもあるので、その場合の「断り文句」とその場合にもペット礼金を「返還しない」ことを定めておくことのほか、ペット礼金の額については、通常予想される原状回復費用の増加分なども勘案し、妥当と考えられる範囲内のものに定めることが適当であろう。 |
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⑶ | 質問3.について ― 通常の「敷金」と同じような趣旨で預かった方が、賃貸の途中でペット禁止になった場合や原状回復時のトラブル防止のためにはよい。 |
2. | 理由 | |
⑴について | ||
本件の「ペット礼金」なるものを、貸主が通常の「礼金」と同じように「返還しない」ものとして受領した場合には、当事者間に特段の事情がない限り、このペット礼金は、借主がペットを室内で飼育することを承諾する旨の対価(承諾料)として受領したことになると考えられるので、一種の「権利金」としての意味合いになると解される。 それに対し、通常の「敷金」と同じように「預り金」として預かる場合には、名称は「ペット礼金」となっていたとしても、その預かりの趣旨は、結果的には原状回復のための担保として預かったことになるので、一種の「敷金の追加補充分」としての意味合いになると解される。 このように「ペット礼金」という名称は同じでも、その受領の仕方が「領収」なのか、「預かり」なのかによって、その法的性質が異なってくると考えられるので、そのようなわずらわしい解釈やトラブルを避けるためにも、「敷金」として預かるのであれば、その名称も「ペット飼育に係る敷金の追加補充分」とはっきり定めるのが適当であろう。 なお、本件の「ペット礼金」を一種の「権利金」として受領する場合には、その場合の「敷金」の額が、相応の原状回復費をカバーできるものであることのほか、質問2.の回答で示したとおり、その後の規約改正などによってペットの飼育ができなくなることもあるので、後日のトラブルを防止するためにも、その場合の「断り文言」をあらかじめ定めておくとともに、その場合にも受領済のペット礼金は「返還しない」旨を定めておくことが必要であろう。 |
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⑵⑶について | ||
(略) |
監修者のコメント
このような新しい概念の金銭が授受される場合は、その用語の曖昧さから、その法的性格が後日争われることが多い。そして、争われた場合は、その媒介した業者の専門家としての責任を問われることもしばしばある。回答のとおり、その金銭の趣旨、賃貸借契約終了時の取扱い、原状回復費用の負担との関係について明確に定めておくことが肝要である。