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2511-B-0349
売主が宅建業者の場合の手付解除期限特約の有効性。

当社所有の区分所有マンションを個人に売却するが、契約締結日から決済までの期間が長期になるため、手付解除期日を特約したい。買主も当社の希望を理解し、合意している。

事実関係

 当社は宅地建物取引業者であり、当社所有の区分所有マンションを個人の買主に売却する予定である。買主の資金繰りにより決済及び引渡し時期が契約締結日から10か月後と長期になるため、手付解除期日を特約することにした。期日は契約締結日から3か月後としたい。買主は手付解除期日以降の手付金放棄による契約解除はできず、解除するときは違約条項が適用になり、買主は売主である当社に違約金を支払うことにより、契約解除することになる。手付解除期日を設ける理由は、契約締結後の10か月間、決済までの間に買主から手付放棄による解除をされるおそれがあり、契約した当社売主の立場が不安定な状態に置かれるためであり、やむを得ないことと考えている。買主には十分説明し、当社の立場を理解していて手付解除期日を3か月後に設定することを合意している。なお、買主の売買代金の支払いは、契約時に物件価格の10%の手付を交付し、決済時に手付は代金として残額を含め買主が当社に支払う約定であり、中間金等の支払いはない。

質 問

宅建業者が売主、個人が買主の売買契約において、手付解除期日特約を設けることができるか。

回 答

1.  結 論
  売主が宅建業者、買主が非宅建業者である場合、手付解除期日特約を設けても特約は無効となる。
2.  理 由
 不動産の売買契約は、買主が手付を交付することが一般的である。手付が解約手付の性質を有する場合には、契約の相手方が契約の履行に着手した後は、手付による契約の解除ができないが、相手方の履行の着手前であれば、理由の如何を問わず、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を提供することにより、契約の解除ができる(民法第557条第1項)。売買契約においては契約締結から決済・引渡しまで一定の期間がかかることが多い。特に決済までの期間が長期になる場合、いつ買主から契約解除されるかと、せっかく締結した契約が決済時まで不安定な状態が続く。業者買主又は非宅建業者間の取引では、契約締結日から決済までが一般的な期間でも、契約を安定させるため、当事者の合意により手付解除期日を設定することは多くみられる。手付解除期日を設けた場合、解除期日以降は手付放棄又は倍返しによる解除ができず、違約条項が適用になる。
手付解除期日の設定は、非宅建業者間の売買契約では有効であるが、売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の場合には、消費者保護の観点から認められていない。宅建業者売主の場合でも、相手方の履行の着手前であれば、買主の手付放棄及び売主の手付倍返しにより契約解除ができるものの、履行の着手前の手付解除期日の設定は買主に不利な特約であり、買主が同意したとしても約定は無効である(宅地建物取引業法第39条第3項)。裁判例では、「本件売買契約は、宅地建物取引業者がみずから売主となって買主に宅地を売る内容の契約であるところ、手付放棄解除特約は、当事者の一方が契約の履行に着手するまでであっても、手付解除期限とされた平成〇〇年〇月〇日が経過すれば、買主が手付金を放棄して解除することができない内容のものであるから、買主に不利な特約であり、宅建業法第39条第3項により無効である」と判示したものがある(【参照判例】参照)。
また、買主が宅建業者以外の場合に手付解除特約を設定した場合、特約を設けた売主や媒介業者は、宅建業法違反により監督の行政庁よりより行政処分の対象になりうることを認識しておきたい(同法第65条第1項、同条第3項)。
なお、宅建業者間の取引においては、手付解除期日を設けることは可能である(同法第78条第2項)。

参照条文

民法第420条(賠償額の予定)
   ① 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
② 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
③ 違約金は、賠償額の予定と推定する。
 同法第540条(解除権の行使)
   ① 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。

② 前項の意思表示は、撤回することができない。
 同法第555条(売買)
  売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 同法第557条(手付)
  ① 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

② 第545条第4項の規定は、前項の場合には、適用しない。
 宅地建物取引業法第39条(手付の額の制限等)
   ① 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができない。

② 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
③ 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
 同法第65条(指示及び業務の停止)
  ① 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律第11条第1項若しくは第6項、第12条第1項、第13条、第15条第1項若しくは履行確保法第16条において読み替えて準用する履行確保法第7条第1項若しくは第2項若しくは第8条第1項若しくは第2項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。

 一 業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき又は損害を与えるおそれが大であるとき。
二 業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき又は取引の公正を害するおそれが大であるとき。
 三・四 (略)
② (略)
③ 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、第1項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは履行確保法第11条第1項若しくは第6項、第12条第1項、第13条、第15条第1項若しくは履行確保法第16条において読み替えて準用する履行確保法第7条第1項若しくは第2項若しくは第8条第1項若しくは第2項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
④ (略)
宅地建物取引業者及び宅地建物取引士の指導及び監督処分基準(抜粋)
違反行為の概要 適用条文 標準処分例
手付額の制限等 法第39条第1項及び第2項の規定に違反して、10分の2を超える手付金の受領した場合等 65条①、③ 指 示
 同法第78条(適用の除外)
  ① (略)

② 第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。

参照判例①

 東京地裁平成28年10月11日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
  宅建業法39条2項は、宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して契約を解除することができると規定し、同条3項は、この規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とすると定めている。そして、本件売買契約は、宅地建物取引業者がみずから売主となって買主に宅地を売る内容の契約であるところ、手付放棄解除特約は、当事者の一方が契約の履行に着手するまでであっても、手付解除期限とされた平成〇〇年〇月〇日が経過すれば、買主が手付金を放棄して解除することができない内容のものであるから、買主に不利な特約であり、宅建業法39条3項により無効である。
宅建業者は、売主である宅建業者にも同様に期限が定められているから、手付放棄解除特約は有効であると主張するが、宅建業法の規定に沿わず、そのように解すべき理由もないから、採用することはできない。
  ※同様の裁判例:東京地裁令和2年1月30日

監修者のコメント

 売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の売買契約の場合には、手付に関して、宅建業法上、①売買代金の20%以下にする(39条1項)、②解約手付の性質を排除できない(同条2項・3項)、③履行の着手以外の手付解除期限を設けてはならない(同条2項・3項)、④保全措置を講じなければならない場合がある(41条、41条の2)、といったルールに気を付けたい。⑤宅建業者が売主の場合に限られないが、売主業者や媒介業者が手付の貸付その他の信用供与をすることも禁止されている(47条3号)。
なお、非宅建業者間の売買契約において「手付解除期日又は相手方が本契約の履行に着手するまでは手付解除ができる」旨の条項が設けられていた場合に、「手付解除期日」と「相手方の履行の着手」のいずれか早い方が期限となると判示した裁判例がある(東京地判令和4年4月28日)。

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