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2509-R-0291
転貸が可能である居住使用目的の賃貸マンションを賃借人が民泊として使用することの是非。

賃貸マンションの賃借人が、民泊として訪日外国人旅行者を宿泊させたが、旅行者と他室入居者や近隣住民とのトラブルが絶えない。賃貸人は賃貸借契約の解除を望んでいる。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介及び管理会社である。3か月前に当社が管理しているグレードの高いアパート1室の賃貸借の媒介をした。賃借人は個人で賃借目的は賃借人の住居として契約したが、契約条項にはあらかじめ転貸を認める旨の約定がある。最近、アパートの他室入居者から媒介した部屋の居住者との生活上のトラブルがあると連絡があった。部屋の住人は日によって異なり、夜遅くに複数人がキャリーケースを運ぶキャスターの音がうるさかったり、その住人による夜中の酒宴の騒音やゴミを決められた日に出さずにゴミ置き場が散らかっているというもの。当社が現地確認したところ、居住者は、明らかに旅行者のようである。住民にも聞いたところ、出入りしているのは日本人のみならず、外国人もいることが分かった。

当社は、賃借人に事情を聴いたところ、賃借人は居住しておらず、民泊会社を利用して民泊として旅行者に貸し出していることが判明した。賃貸人は、民泊は旅行者が宿泊目的で利用するもので、住居目的の使用でなはなく、転貸を認めているからといって、第三者の宿泊や滞在は認めておらず、賃貸借契約を逸脱した使用であり、契約は解除したい意向を示している。賃借人は、転貸を認めている約定があり、民泊に転貸するのは可能であり、利用者の宿泊は、広い意味の住居としての使用であり、使用目的に違反していないと主張している。

質 問

 賃貸借契約書に転貸を認める約定があれば、賃借人は民泊として使用することができるか。

回 答

1. 結 論
明示的に民泊として転貸できる約定または賃貸人の承諾があれば民泊としての使用は可能であるが、転貸を認める旨の約定のみでは民泊として使用することはできないと考える。
2. 理 由
 政府は、観光立国推進基本法の規定に基づき、新型コロナ終息後のインバウンドの回復を掲げ、訪日外国人旅行者の拡大を図っている。外国人旅行者数を2030年には6000万人に、消費額を15兆円に増やす目標を掲げており、今後も増加傾向が続くであろう。観光庁によると訪日外国人は、2024年は3687万人(2023年2507万人)に達し、本年はさらに増えている。インバウンド需要の高まりにより、外国人旅行者向けの民泊が増えている。旅行者の増加により一部地域では宿泊代の高騰が見られ、比較的安価な民泊が利用されている。民泊には居住用のマンションのみならず一戸建てや別荘等の物件もあり旅行者の人数や目的に合わせた選択が可能である。世界的な民泊紹介サイトもあり手軽に予約ができることも人気を博している一因であろう。

民泊を事業として行うには、住宅宿泊事業法(民泊新法)により一定のルールが定められており、都道府県知事への届出が必要である(同法第3条)。民泊事業者に対しては宿泊期間制限(特区民泊除く)のほか、様々なルール遵守が求められている。自己所有不動産を民泊に活用することができるが、区分所有マンションでは多くが管理規約等で民泊を禁止している。民泊利用者は今後も増加傾向にあるが、利用者とのトラブルも増えている。よく聞く例として、利用者のごみの不法投棄や夜間の騒音などの近隣住民とのトラブル、また、防犯上あるいは火災等の防災上の不安、大人数の宿泊による建物の傷みなどの懸念、外国人利用者とのコミュニケーションの行き違いによるトラブル等があげられる。外国人旅行者の文化や習慣の違いによる民泊事業者との摩擦もある。

賃借物を民泊に活用することは可能であるが、当然、賃貸人の承諾が必要である(民法第612条)。あらかじめ賃貸借契約で転貸を認める約定がある場合、賃借人が民泊として旅行者に転貸することが可能であろうか。賃貸借における住居目的の使用は、特定の者(転借人含む)が長期間にわたり住居として使用するものであり、1日単位または短期間で不特定の者が宿泊目的で民泊として使用するのは態様が異なる。転貸が可能な賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに民泊に使用したことで、賃貸人が賃借人の用法違反を理由に契約解除を求めた裁判例で、「本件賃貸借契約には、転貸を可能とする内容の特約が付されているが、他方で、本件建物の使用目的は、原則として賃借人の住居としての使用に限られている。これによれば、特約に従って本件建物を転貸した場合には、これを「賃借人の」住居としては使用し得ないことは文理上やむを得ないが、その場合であっても、本件賃貸借契約の文言上は、飽くまでも住居として本件建物を使用することが基本的に想定されていたものと認めるのが相当である」と転貸を認める約定があれば第三者に転貸できるが、転貸の場合でも、転借人の住居としての使用に限られ、「住居使用の場合と不特定の者が入れ替わり使用する宿泊使用の場合とでは、使用者の意識等の面からみても、自ずからその使用の態様に差異が生ずることは避け難いというべきであり、転貸が可能とされていたことから直ちに民泊としての利用も可能とされていたことには繋がらない」として、使用目的違反は明らかであり、アパートの他の住民からの苦情の声やゴミ出しの方法を巡ってのトラブルが生ずるなどしていたことにより、賃貸人との間の信頼関係の破壊を認め、契約解除を認容したものがある(【参照判例】参照)。

住居使用目的の賃貸借契約を媒介する業者は、予め転貸を認める約定をする場合は、賃借人に対し、賃借人自らの使用の場合だけでなく転貸する場合であっても、住居目的外(店舗・事務所や倉庫、民泊等)の使用はできない旨を十分説明、理解させることが肝要である。

参照条文①

 民法第594条(借主による使用及び収益)
① 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。

②・③ (略)
 民法第594条(借主による使用及び収益)
① 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。

②・③ (略)
 同法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
① 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

② 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
 同法第616条(賃借人による使用及び収益)
第594条第1項の規定は、賃貸借について準用する。
 住宅宿泊事業法第3条(届出)
① 都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区(以下「保健所設置市等」という。)であって、その長が第68条第1項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理するものの区域にあっては、当該保健所設置市等の長。第7項並びに同条第1項及び第2項を除き、以下同じ。)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第3条第1項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。

② 前項の届出をしようとする者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、住宅宿泊事業を営もうとする住宅ごとに、次に掲げる事項を記載した届出書を都道府県知事に提出しなければならない。

 一~七 (略)

③~⑦ (略)

参照判例②

 東京地裁平成31年4月25日 判タ1476号249頁(要旨)
 本件賃貸借契約には、転貸を可能とする内容の特約が付されているが、他方で、本件建物の使用目的は、原則として賃借人の住居としての使用に限られている。

これによれば、上記特約に従って本件建物を転貸した場合には、これを「賃借人の」住居としては使用し得ないことは文理上やむを得ないが、その場合であっても、本件賃貸借契約の文言上は、飽くまでも住居として本件建物を使用することが基本的に想定されていたものと認めるのが相当である。

これに対し、賃借人は、本件賃貸借契約において転貸が可能とされていた以上は、転貸後の使用目的を賃借人の住居としての使用に限る理由はなく、民泊としての利用も可能とされていたなどと主張する。

しかし、特定の者がある程度まとまった期間にわたり使用する住居使用の場合と、1泊単位で不特定の者が入れ替わり使用する宿泊使用の場合とでは、使用者の意識等の面からみても、自ずからその使用の態様に差異が生ずることは避け難いというべきであり、本件賃貸借契約に係る上記の解釈を踏まえれば、転貸が可能とされていたことから直ちに民泊としての利用も可能とされていたことには繋がらない。本件建物を民泊の用に供することが旅館業法に違反するかどうかは措くとしても、前記認定事実によれば、現に、アパートの他の住民からは苦情の声が上がっており、ゴミ出しの方法を巡ってトラブルが生ずるなどしていたのであり、民泊としての利用は、本件賃貸借契約との関係では、その使用目的に反し、賃貸人との間の信頼関係を破壊する行為であったといわざるを得ない。

監修者のコメント

 宅建業者が民泊事業目的の建物賃貸借契約を仲介する場合、上記の東京地裁判決を踏まえれば、単に転貸を許可する旨の特約では足りず、民泊事業目的で使用する旨を明記すべきである。また、区分所有建物における民泊事業目的の賃貸借契約については、管理規約が民泊利用を禁止しているか否かを必ず確認しなければならない。

さらに、共同住宅の一部について民泊事業目的の建物賃貸借契約が締結された後で、建物全体に消防設備の設置が必要である旨を消防署から指摘されるといったトラブルが生じている(平成29年10月27日付け消防予第330号「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」参照)。この点について貸主には説明義務がないとする裁判例もあるが(東京高裁令和4年10月27日)、仲介業者としてはかかるトラブルが生じないように配慮することが望ましい。

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