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賃貸事例 1012-R-0083
建物賃貸借における賃料滞納者の保証人に対する強制執行

 当社は、自社所有の店舗をある会社に賃貸し、その会社の代表取締役個人を保証人にとっているが、賃料の滞納が続くので、賃貸借契約書を「公正証書」にした。それでも滞納が続くので、保証人(代表取締役個人)の自宅を差し押さえようとしたところ、すでに他の債権者によって競売の申立てがなされていた。当社(貸主)はどのように対応したらよいか。

事実関係

 当社は、自社所有の店舗をある会社に賃貸し、その会社の代表取締役個人に保証人になってもらっている。
 ところが、あまり賃料の滞納が多いので、やむを得ず更新時に賃貸借契約書を公正証書にしたが、それでも滞納が続くので、保証人(代表取締役)の自宅を差し押さえようとしたところ、すでに抵当権者である金融機関の競売の申立てがなされていた。

質問

 このような場合、当社はどのように対応したらよいか。

回答

1.  結論
   金融機関の競売申立て手続の中で、「配当要求」に参加していく方法もあるが(民事執行法第51条第1項)、債権の回収を確実に行うのであれば、公正証書(執行証書)に「執行文」を取り付けたうえで、重ねて競売の申立てをする(「二重開始決定」を受ける)方法もある(同法第22条、第25条、第26条第1項、第47条第1項、第188条)。
 しかし、先順位債権者との関係で、配当に余力がないようであれば、借主である会社およびその代表取締役(保証人)個人の他の財産を早急に探し出して、それを差し押さえる必要があるが、それでも債権の回収が難しいということになれば、賃貸借契約そのものを早期に解除して、店舗の明渡しを求める方向で手続を進めることが肝要となろう。
 なお、契約の解除に当たっては、通常は、まず内容証明郵便等により滞納賃料についての支払催告を行い、それでも滞納分の支払いがないようであれば、停止条件付の契約解除通知を行い、契約を解除することになるのであるが(民法第541条)、店舗の明渡しについては話し合いでの履行がかなり難しい面があるので、もしそうであれば、弁護士等の法律の専門家に相談するなり、依頼するなりして手続を進めていくことになろう。
2.   理由
   不動産の競売による債権の回収手続には、強制執行手続きによる競売(強制競売)と担保権の実行による競売(不動産競売)があるが(民事執行法第2章第2節第1款第2目(強制競売)、第3章第181条乃至第188条(不動産競売))、いずれの手続においても、裁判所は、すでに競売の開始決定がなされている不動産について、重ねて開始決定をなすことができるようになっている(同法第47条第1項、第188条)。これは先行する競売手続が、債務者の弁済などによって取り下げられたり、取り消されたりすることもあるからである。
   しかし、二重に競売の開始決定がなされたとしても、その不動産に債権の回収余力がなければ意味がないので、そのような場合には、極力未回収債権を少なくするためにも、できるだけ早期に契約を解除して、店舗の明渡しを求めていくことが肝要となろう。
 なお、敷金については、貴社が借主から何か月分預かっていたとしても、借主としては、それを理由に滞納賃料との相殺を主張することができないことになっているので(後記【参照判例】参照)、貴社の対応策として最も重要なことは、スピード感をもった対応ということになろう。

参照条文

  民事執行法第22条(債務名義)
   強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
   確定判決
   仮執行の宣言を付した判決
   (略)
   仮執行の宣言を付した支払督促
  の二 (略)
   金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
   (略)
   確定判決と同一の効力を有するもの
  同法第25条(強制執行の実施)
   強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。
  同法第26条(執行文の付与)
   執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
   執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
  同法第47条(二重開始決定)
   強制競売又は担保権の実行としての競売(以下この節において「競売」という。)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあったときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。
  ②~⑤ (略)
  同法第51条(配当要求)
   第25条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者、強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び第181条第1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
   (略)
  同法第188条(不動産の強制競売の規定の準用)
   第44条〈執行裁判所〉及び第2章第2節第1款第2目〈不動産に対する強制競売に関する規定〉(第81条〈法定地上権〉を除く。)の規定は、不動産競売について準用する。
  民法第541条(履行遅滞等による解除権)
   当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

参照判例

  最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁(敷金返還請求権の発生時期)
   敷金は賃貸借終了後目的物の明渡義務履行までに生ずる損害金その他賃貸借契約関係により賃貸人が賃借人に対し取得する一切の債権を担保するものであるから、その返還請求権は、目的物明渡し完了の時にそれまでに生じた右被担保債権を控除し、なお残額がある場合にその残額につき発生する。

監修者のコメント

 法的な手続としては、回答のとおりであるが、本ケースのような場合、債権の回収は困難となることが多い。回答のとおり、早期に賃貸借契約の解除を行い、一日でも早く明渡しを受けるために、滞納賃料について相応の譲歩を行い、次の賃借人へ貸したほうが、大局的には得になるということが多い。俗にいう「損して得を取る」である。

より詳しく学ぶための関連リンク

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