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2504-B-0344
メールにより不動産の購入申込みをした場合のクーリング・オフ適用の有無

 最近は、インターネットの進展により、メールで購入申し込みができるが、宅建業者売主の物件について申込みをメールでした場合、クーリング・オフができる条件があるか知りたい。

事実関係

 当社は、宅建業者である。売買の媒介を行うことが多いが、当社が土地を仕入れ、複数区画に造成したうえで各区画を消費者に販売したり、戸建や区分マンションを買い取って再販することがある。顧客に販売するときは、内見後に当社事務所で購入申込書を取得することが多いが、時には申込書は取らずに、売買契約日時を顧客と協議して契約締結することもある。昨今、インターネットの進展により、ITを活用したIT重説や契約締結書面の電子化が広く実施されている。当社も電子化を進めていく予定であるが、当社が売主である不動産購入の申込みを顧客からメールやファクシミリ等で受ける場合にクーリング・オフが適用になるのか知りたい。

質 問

 当社が、顧客から社有物件の購入申込みを電子メールやファクシミリで受けたり、売買契約をオンラインで締結した場合、クーリング・オフの対象になるのか。

回 答

1.  結 論
 顧客が、電子メールやファクシミリで申込書を送信またはオンラインによる売買契約を締結した場所による。定められた宅建業者の事務所以外や顧客の申し出によらない顧客の自宅、勤務先からの非対面の申込みや契約締結もクーリング・オフの対象になる。
2.  理 由
 クーリング・オフ制度は、宅建業者が売主で宅建業者以外の買主と宅建業者の事務所等以外で不動産の買受けの申込みまたは売買契約を締結した場合(以下、「契約締結等」という。)、売主が規定の文書を交付しないときは、買主は、いつでも、損害賠償または違約金が発生せず、無条件で申込みの撤回または売買契約の解除(以下「申込みの撤回等」という。)ができ、売主が文書を交付した場合でも、契約締結等の日から起算して8日間は申込みの撤回等ができる制度である(宅地建物取引業法第37条の2第1項)。ただし、買主の申し出により買主の自宅または勤務先で契約締結等をした場合にクーリング・オフの適用はない(宅地建物取引業法施行規則第16条の5第2号)。この制度は、喫茶店やファミリーレストラン等など事務所以外で契約締結等を買主の不安定な状況で冷静な判断を行うには不適当な場所で取引をすることを抑制することで消費者保護を目的としている。
 なお、前記の①買主の申し出による自宅、勤務先での契約締結等に加え、②申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したとき③申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたときはクーリング・オフが適用されず(宅地建物取引業法第37条の2第1項第1号、同第2号)、その後に買主が契約を解除するには手付解除または違約解除となる。
 メール等の電子媒体で購入申込みをした場合やオンライン契約したときにクーリング・オフが適用されるかが問題となる。対面での購入申込等では前述の通りであるが、非対面の場合の契約締結等が事務所なのか事務所以外なのかの判断が困難である。クーリング・オフの適否は非対面でも対面と同様であり、国土交通省は、「非対面の場合、契約締結等を行った場所は、当該契約締結等を行った際の顧客の所在場所となる」と規定している(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方第37条の2第1項関係1)。つまり、事務所以外の場所で契約の締結等した場合は、クーリング・オフの対象となり、申込の撤回ができ、契約解除が可能である。ただし、買主の申し出による自宅、勤務先での契約締結等は適用にならない。売主業者が「顧客からの申し出によらず自宅等を訪問した場合や、電話等による勧誘により自宅等を訪問した場合において、顧客から自宅等への訪問の了解を得たうえで自宅等で契約締結等を行ったときは、クーリング・オフ制度の適用がある」(同解釈・運用の考え方第37条の2第1項関係1(2)④)ので留意が必要である。非対面の際、買主の申し出があったか否かのエビデンスが必要である。エビデンス(根拠)がないと適用の可否に関して紛争の原因になる。エビデンスとして、対面の場合は、「契約書あるいは申込書等に顧客が自宅等を契約締結等の場所として特に希望した旨を記載することが望ましい」としており、非対面での契約締結等の場合では、「顧客の所在場所及び顧客が当該所在場所での契約締結等を希望したことを確認し、記録することが望ましい」(同解釈・運用の考え方第37条の2第1項関係1(2)④)としており、業者売主が買主と契約締結等する際は記録を残しておくことが重要である。
 クーリング・オフが適用になるには、宅建業者が、クーリング・オフができる旨等を記載した書面の交付が必要である(宅地建物取引業法施行規則第16条の6)。
 一方、買主が買受けの申込みの撤回または当該売買契約の解除(以下「申込みの撤回等」という。)をするにも書面で通知する必要があり、非対面での撤回等も可能である。撤回等の効力は売主に文書が到達した時点でなく「書面を発した時に効力が生じる」(宅地建物取引業法第37条の2第2項、同法施行規則第16条の6第5号)ことは理解しておきたい。撤回等の通知は内容証明郵便での通知が望ましい。普通郵便であると受け取る側が宅建業者から通知されていないと主張することもあり、撤回等を巡ってトラブルになる可能性がある。内容証明郵便はインターネットを活用した「e内容証明(電子内容証明)」があり、非対面により通知することができるので覚えておきたい。

参照条文

 宅地建物取引業法第37条の2(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
   宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
     買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したとき。
     申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
   申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
   申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
   前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
 宅地建物取引業法施行規則第16条の5(法第37条の2第1項の国土交通省令・内閣府令で定める場所)
   法第37条の2第1項の国土交通省令・内閣府令で定める場所は、次に掲げるものとする。
   次に掲げる場所のうち、法第31条の3第1項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの
     当該宅地建物取引業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
     当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲を案内所(土地に定着する建物内に設けられるものに限る。ニにおいて同じ。)を設置して行う場合にあっては、その案内所
     当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、宅地又は建物の売却について代理又は媒介の依頼をした場合にあっては、代理又は媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者の事務所又は事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
     当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介の依頼をし、かつ、依頼を受けた宅地建物取引業者がその代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所
     当該宅地建物取引業者(当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、宅地又は建物の売却について代理又は媒介の依頼をした場合にあっては、代理又は媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者を含む。)が法第31条の3第1項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべき場所(土地に定着する建物内のものに限る。)で宅地又は建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地又は建物に関し展示会その他これに類する催しを土地に定着する建物内において実施する場合にあっては、これらの催しを実施する場所
   当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあっては、その相手方の自宅又は勤務する場所
 宅地建物取引業法施行規則第16条の6(申込みの撤回等の告知)
   法第37条の2第1項第1号の規定により申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げるときは、次に掲げる事項を記載した書面を交付して告げなければならない。
     買受けの申込みをした者又は買主の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所
     売主である宅地建物取引業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号
     告げられた日から起算して8日を経過する日までの間は、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払った場合を除き、書面により買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができること。
     前号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつたときは、宅地建物取引業者は、その買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと。
     第3号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除は、買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行う旨を記載した書面を発した時に、その効力を生ずること。
     第3号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつた場合において、その買受けの申込み又は売買契約の締結に際し手付金その他の金銭が支払われているときは、宅地建物取引業者は、遅滞なく、その全額を返還すること。
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
 第37条の2第1項関係
  1  クーリング・オフ制度の適用除外となる場所について
 クーリング・オフ制度の適用のない場所は、原則として、以下の(1)及び(2)に掲げる、専任の宅地建物取引士を置くべき場所に限定されている。したがって、喫茶店やファミリーレストラン等で契約締結等を行った場合はクーリング・オフ制度の適用がある。また、クーリング・オフ制度の適用の有無については、原則として、その場所が専任の宅地建物取引士を設置しなければならない場所であるか否かにより区別されるものであり、実際に専任の宅地建物取引士がいるか否か、その旨の標 識を掲げているか否か(法第50条第1項)、その旨の届出がなされているか否か (法第50条第2項)などによって区別されるものではない。非対面の場合、契約締結等を行った場所は、当該契約締結等を行った際の顧客の所在場所となる。なお、クーリング・オフ制度の適用がある場所において、その旨の標識が掲げられていない場合等は、それぞれ該当する各条項の違反となる。
     事務所については、契約締結権限を有する者及び専任の宅地建物取引士が置かれ、またその施設も継続的に業務を行うことができるものとされているため、 ここにおける取引は定型的に状況が安定的であるとみることができ、この制度の適用の対象から除外されている。
     事務所のほか、「国土交通省令・内閣府令で定める場所」についてもこの制度 の適用の対象から除外されているが、これは、この制度が不安定な契約意思での取引について白紙還元の余地を認めたものであることから、購入者の購入意思が安定していると定型的に判断できる場合には適用を除外し、取引の安定を確保することとしたものである。「国土交通省令・内閣府令」としては規則第16条の5を置いている。
      ~③ (略)
      第2号について
 宅地建物の取引に当たり、顧客が自ら希望して自宅又は勤務先(以下、「自 宅等」という。)を契約締結等の場所として申し出た場合においては、その顧客の購入意思は安定的であるとみられるので、この場合はクーリング・オフ制度の適用から除外している。ただし、宅地建物取引業者が顧客からの申し出によらず自宅等を訪問した場合や、電話等による勧誘により自宅等を訪問した場合において、顧客から自宅等への訪問等の了解を得たうえで自宅等で契約締結 等を行ったときは、クーリング・オフ制度の適用がある。なお、現実に紛争が発生した場合においては、相手方が申し出たか否かについて立証が困難な場合もあると予想されるので、この制度の適用除外とするためには、契約書あるいは申込書等に顧客が自宅等を契約締結等の場所として特に希望した旨を記載することが望ましい。また、非対面での契約締結等の場合は、顧客の所在場所及び顧客が当該所在場所での契約締結等を希望したことを確認し、記録することが望ましい。
       (略)
  2  (略)

監修者のコメント

 クーリング・オフ制度の適用があるかどうかについては、同条が制定された当時から、その適用・不適用の要件が複雑なため、真面目な宅建業者でも、うっかり間違えて運用してしまっている事例も散見された。ところが、同条が新設された当時は、あくまでも対面取引を前提として立法されたので、条文の解釈・運用について、本相談のような疑問が生じ、ますます分かりにくくなっている。
 非対面の取引に当たっては、本相談の〔回答〕及び〔理由〕を十分に理解され、慎重に業務を進められたい。

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