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2404-B-0331
賃貸ビルの売買に伴う売買代金と保証金との相殺の可否

 ある同族会社の代表取締役から、「自分が相続した土地の上に、自分が代表取締役を勤める会社名義の賃貸ビルが建っており、その賃貸ビルを個人名義で購入する売買契約を締結したが、会社はテナントから預かっている保証金を自分に引き渡すことができない。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、このたびある同族会社の代表取締役個人から、「自分が相続した土地の上に、自分が代表取締役を勤める同族会社の賃貸ビルが建っており、そのビルを自分が購入する売買契約を締結したが、会社の経営が思わしくなく、テナントから預かっている保証金を運転資金に使っているため、その保証金の総額と自分が会社に支払う売買代金とを対当額で相殺し、自分がそのテナントに対する保証金の返還債務を引き受けることにしたいが、可能か」という相談を受けた。

質 問

1.  相殺は、お互いの債務が「弁済期」になければ、相殺適状にあるとはいえないと思うが、保証金のような「預り金」で、テナントの明け渡しを停止条件とする債権のようなものでも相殺の対象になるのか。
2.  もし保証金が相殺の対象となるとした場合、民法が定めているような「一方的な意思表示」だけで相殺することになるのか、それとも「契約」のようなかたちで相殺することになるのか。
3.  「契約」のかたちで相殺するとした場合、契約自由の原則により、原則的にはいつでも、どのような債権でも相殺可能になると考えてよいか。
4.  本件のケースを「契約」のかたちで相殺するとした場合、その契約書にはどのようなことを盛り込むことになるのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 相殺の対象になる。
 質問2.について ― いずれのかたちでも相殺することができる。
 質問3.について ― 同種の互いに対立する債権であれば、原則としていつでも、どのような債権でも相殺可能となると考えてよい。
 質問4.について ― 相殺されるそれぞれの債権の内容と金額(売主は買主に対し売買代金債権を有し、買主は売主に対し保証金の引渡し債権を有している)を記載し、その債権を対当額で相殺する旨と、新たにビルの所有者・貸主となる買主が、今後はテナントに対する預かり保証金の返還債務を引き受けることになる旨を盛り込むことになる。
 なお、この場合、その他の各テナントとの間の賃貸借契約の内容については、判例上従前の契約内容がそのまま新貸主に引き継がれることになるので(【参照判例】参照)、ビルの売買契約書に現行の賃貸借契約書の写しなどを添付したうえで、その旨の貸主の地位の承継文言を記載しておけば、詳細は省略してもよく、いずれにしても、売買契約書とこの相殺契約書の内容は連動していることが必要であるから、この相殺契約書の内容を売買契約書の中に組み込み、両契約書を一本化することが妥当であろう。
2.  理 由
〜⑶について
 本件の相殺しようとしている保証金は、本来は売買代金の授受とは別に、ビルの売主から買主に引き渡されるべき金銭であるから、売主がその金銭を買主に引き渡すことができないとすれば、買主としては、売買代金との相殺を考えてもおかしくはない。そうなれば、その保証金がテナントからの「預り金」であっても、買主にとっては同じ「金銭債権」であるから、両債権が「弁済期」にあれば相殺適状にあるといえ、相殺が可能となる(民法第505条第1項)。そして、その場合、受働債権については弁済期に達していなくても、相殺する者が弁済期前に弁済する意思があれば(期限の利益を放棄すれば)相殺できるとされているので、その意味では、当事者が合意さえすれば、(契約で)いつでも相殺は可能ということになり、その債権が同種の相対立する債権であれば、相殺が禁止されている債権(同法第509条)や差押えが禁止されている債権(同法第510条)であっても、原則として相殺は可能ということになる(相殺契約)。
 なお、本件の質問1.の中で、質問者が保証金の性質を「停止条件付債権」といっているが、それはたとえば、この保証金を第三者が差し押さえるとか、借主が保証金の返還請求権を行使するという場合に、借主の建物の明け渡しという停止条件が成就しないと、差し押えや返還請求が可能な債権としての金額が確定しないという意味での性質であり、今回のような賃貸ビルの売買に伴う保証金の性質についての問題とは前提の異なるものである。
について
 (略)

参照条文

 民法第505条(相殺の要件等) 
   2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
   前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
 同法第506条(相殺の方法及び効力)
   相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
   前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
 同法第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
   次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
   悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
   人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
 同法第510条(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
   債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

参照判例

 大判昭和6年5月29日新聞329号18頁(要旨)
 賃貸不動産の所有者に変更があった場合、特約がない限り、賃借人・新所有者間に、従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。

監修者のコメント

 本ケースにおける相殺の問題については、回答のとおり、相殺は可能であるが、その賃貸ビルの売買は、売主会社の株主総会の承認を受けなければならない性質のものである。すなわち、買主は売主会社の代表取締役であって明らかな「利益相反取引」に当たるからである(会社法第356条第1項2号)。同族会社というのであるから、その承認は得られるであろうが、その手続を経ずに行った契約は、無効(正確には善意の第三者には主張しえない「相対的無効」)と解されている。
 それを前提として、あとの相殺の可否は保証金について第三者が利害関係を有していない限り、回答のとおり契約自由の範囲内のことである。

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