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2312-R-0271
建物賃貸借契約における保証金返還を新借主が決まるまで留保する特約の有効性

 当社はテナントビルのオーナーから事務所の建物賃貸借の媒介依頼を受けるが、オーナーは借主が契約期間内中途解約の場合は、次の買主が決まるまでは保証金の返還を猶予する条件を希望している。

事実関係

 当社は不動産の売買、賃貸の媒介を営んでいる宅建業者であるが、このたびテナントビルのオーナーから事務所の募集を依頼された。
 賃貸借期間は5年で保証金として家賃の6か月分をオーナーが預かり、期間内に借主の都合により中途解約した場合は、保証金の返還を次の借主が決まるまで留保し、新借主が賃貸借契約を締結し、かつ保証金を預かった時点で返還したいとの意向である。なお、別途敷金は預からない。

質 問

 当社は、このような、次の借主が見つかるまで保証金返還を留保する特約を定めた契約をする予定であるが、問題はないか。

回 答

1.  結 論
 このような保証金返還を留保する特約には問題がある。
2.  理 由
 契約自由の原則に基づき、保証金返還時期を契約の解約・明渡し時以外に定めることは可能であるが、当ケースのように新借主が決定するまで返還しない特約が、そのまま効力が認められるかは、後記の判例を見ると疑問がある。
 業務用の賃貸借物件の保証金の性格は、各種のものがあり、「敷金」、「建設協力金(貸金)」、「権利金」、「空室補償」、「礼金」等のような目的のものがある。原則的には賃貸借の期間満了により明渡し時に借主の債務を差し引き、直ちに返還されるものが多く、その意味では敷金的目的を持つものが多い。債務には未払い賃料、原状回復費用、約定の償却分等がある。また、中途解約時の違約金の性格を持つ償却(2年以内30%、3年以内20% 等)も多く見受けられる。
 保証金の返還時期について、据置期間を設けることの可否はどうだろうか。保証金の目的や性格により、約定の据置期間が認められたものと認められなかった裁判例が混在する(【参照判例】参照)が、これは契約当事者の合意内容や契約自由の原則の範囲内であるかの妥当性を判断しているとみられる。
 相談事例の、中途解約時に新借主の保証金差し入れ時まで保証金返還を据置く特約は、有効であろうか。このケースでは、保証金はその額からみて、建設協力金等ではなく敷金同様の担保目的をもつものと考えられる。本来は明渡し後ただちに返還すべきと考えられるが、当事者合意のもと、返還までの時期を据置くことは可能である。しかしながら、それでは新たな借主が現れなければ永遠に返還しなくていいことになる。賃貸人が新たな借主の募集に積極的でなかったり、賃貸市場の需給関係の変化等により新たな借主が長期間得られなかったりした場合は、賃借人の利益が害されるおそれがある。
 裁判例では、借主の解約申し入れから契約終了まで6か月となっていること、返還の訴えまで契約終了から1年以上が経過していることを考慮し、「明渡し後、賃貸人が新入居者を探すのに通常必要と考えられる時日を考慮して、相当な期間を経過した時は、新入居者が現実に決定したか否かにかかわりなく、保証金返還債務の履行期が到来すべき」としているものがある(【参照判例】参照)。
 相当な期間を経過した時は、保証金の返還義務が生じるとの判例であるが、一般的に借主からの解約申し入れは、契約終了前の相当期間を定めている場合が多く、その期間は賃貸人の新借主の入居準備期間(募集期間)でもあり、未入居リスク(賃料収入の喪失)回避でもある。
 賃貸人としては、期間満了での明渡しにおいては、返還すべき金員の調達も準備されるものの、中途解約においては相当の募集期間を確保したいとの意向も理解できるが、新入居者の存在を保証金返還の条件とするのは賃借人との公平性が保たれない。
 賃貸人が新入居者の募集期間を少しでも長くする、あるいは返還すべき金員の準備期間を設けるのであれば、解約申し入れの期間に加え、保証金返還の時期を相当期間据置く約定をすることにより解決できると考える。
 なお、据置きの期間をどのくらい確保できるかについては規定がない。前記の判例では明渡しから1年は相当の期間経過としているが、相当の期間の上限はケースにより異なるが、1年とすることも可能である。

参照判例①

 東京地裁判昭和50年6月21日金商475号17頁(要旨)
 保証金の返還時期の方法について、賃借開始後10年据置いた後、分割返還する特約において、解約で賃貸借契約が不存在となった場合でも同様の約定がある場合、賃貸借契約が終了し明け渡した時も約定による履行期が到来しない限り、賃貸人は保証金を返還する義務を負わない。

参照判例②

 大阪地裁判昭和52年3月15日金商536号39頁(要旨)
 賃貸期間20年、保証金500万円を差入れ、保証金据置期間20年間の約定において、据置期間の定めは本件賃貸借が賃貸期間の満了によって終了した通常の場合を想定して約定したものと解され、賃貸人は賃貸借の終了後(中途解約)家屋の明渡がされた時において返還義務を負担するものと解する。

参照判例③

 東京地裁判昭和60年4月25日判時1176号110頁(要旨)
 建物賃貸借の保証金の返還時期について、契約が中途で解約されたときには新入居者の保証金差入時とする特約がある場合であっても、賃借人の明渡から相当期間を経過したときは返還すべきである。

監修者のコメント

 「保証金」とは何か、「敷金」とはどう違うのかについて明文の定義規定があるわけではない。敷金については、ある程度確定した定義があるが、保証金は回答のとおり、さまざまな性格のものがあると言われており、実際の裁判においても、当該保証金がどれに当たるのかが争点となるものがある。
 本件の保証金返還時期の特約の問題も、まずその保証金がどのような性格のものかが検討の大前提となり、仮に敷金の性格をもつものであれば、できる限り、敷金に準じて解釈すべきであり、また貸主が個人で借主が大企業の場合と貸主が大企業で借主が個人の場合では異なった結論になる可能性がある。なぜなら、そのような返還を留保する特約を一定限度において認めないという根拠となるのは、信義則(民法第1条第2項)とか、公序良俗(第90条)というような一般条項であるから、結局当事者の事情を総合的に判断するものだからである。また、本ケースにおける「期間内中途解約」の場合の「中途解約の予告期間」が1カ月と定められているときと「6カ月」とか「1年」と定められているときとでは「相当の期間」が異なっても不合理ではないし、当初の契約が始まって間もない中途解約のときと期間満了時に近い時期の中途解約のときとでは、返還の留保の期間が若干異なっても不合理ではない。
 本ケースの基本的な考え方は、回答のとおりでよいが、個別的な事例のあてはめは、当該事情を総合的に勘案して決するのが妥当と思われる。

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