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2310-R-0268
期間途中で賃貸借契約を合意解除した場合の賃貸人の権利金の返還義務

 期間5年で店舗を賃借した賃借人が2年で退去する。賃貸人も賃借人が契約期間満了前に退去することに合意しているが、賃貸借契約時の契約条件として賃借人は賃貸人に権利金を支払っている。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。当社が2年前に期間5年の店舗賃貸借契約の媒介をした賃借人から、販売業績が思うように上がらないため、契約を解除したいと申入れがあった。賃貸人は、業績不振の賃借人では今後の継続的な賃料収入の見込みに不安があるとの思いにより、賃貸借契約の解約に合意する意向である。賃貸借契約の締結時に、権利金の授受があったが、契約条項には賃借人から中途解約できるとする約定はなく、中途解約時の権利金返還の取決めもしていない。
 賃借人は、契約期間途中の契約解除であり、契約時に支払った権利金の額のうち残存期間3年に対応する金額の返還を要求しているが、賃貸人は、権利金は契約締結の対価であり返還するつもりはないと主張している。

質 問

 賃貸借契約を期間途中で合意した場合、賃貸人は、賃借人が賃貸人に対して支払った権利金のうち未経過期間に相当する額を返還しなければならないか。

回 答

1.  結 論
 契約期間の定めのある賃貸借契約の中途解約の場合、賃貸人は、未経過期間に相当する権利金の額を返還しなければならないと解する。
2.  理 由
 賃貸借契約では、契約時に一時金として礼金や権利金が授受されるケースがある。一般的に居住用賃貸借契約では礼金、店舗等の事業用賃貸借契約では権利金として支払われることが多い。敷金や保証金と異なり、礼金、権利金は契約期間終了時に返還されないのが通常である。礼金は、額も少額で、賃借人が賃貸人に対して賃借の「お礼(贈与)」として慣例化しているが、昨今の借り手市場では礼金なしの賃貸借契約も多い。権利金は、礼金のお礼としての性質から離れ、賃貸借契約の対価としての法的性質を持つ。権利金は、店舗等の立地が営業的に優位であるとした場合の「場所的権利の対価」、賃貸借契約締結をした「賃借権の対価」、賃料を低額に抑えたときの「賃料の一部の一括前払い」、従前店舗(のれん)や造作、顧客を引き継ぐ等商売上のメリットがある場合の「営業上の利益の対価」とする等の各種のものがある。またそれぞれの対価の複合である場合もある。しかし、権利金は、賃貸条件として設定され、契約上、その性質は必ずしも明確でない場合が多い。
 権利金がいずれの対価の性質を持つものであれ、期間に応じた権利金の額が設定されると予想され、契約当事者間に特別の合意や特段の事情がなければ、権利金は契約期間満了時に返還されないものである。
 期間を定めた賃貸借契約が当事者の合意で中途解除したときは、権利金は期間に応じた金額の設定がなされることから、残存期間に対応する額を返還することが妥当と解する。裁判例では、「合意解除は、賃借人の解約申し入れに対し、賃貸人が承諾を与えたことにほかならないから、賃借人は借家権を放棄したのであり、従って賃貸人には何らの返還義務がないとするのも一つの考え方である」としながらも、「権利金は期間の長短がその額に影響するものであり、一応約定の全期間に対する対価であるものと考えられるので、期間の途中賃借人の一方的都合によって、契約が終了した場合には、特段の事情のないかぎり、支払われた権利金のうち、残存期間に対応する部分の金額から一定額を控除した額につき返還義務がある」としたものがある(【参照判例】参照)。この裁判例では、残存期間に対応する部分の金額から解約予告期間(民法第617条第1項、同法第618条)に相当する賃料額の控除も認めている。
 なお、期間の定めのない賃貸借契約の場合は、原則として権利金の返還は要しないとした判例(昭和29年3月11日最高裁)があるが、賃借期間が十数年経過したものであり適切であろう。しかし、期間の定めがないときでも賃貸借期間が比較的短期間で終了した場合は、終了事由にもよるが、賃借人が予定していた期間に応じた利益を受けてないと考えられ、権利金の一部を返還するのが妥当であろう。

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
   当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
     (略)
     建物の賃貸借 3箇月
     (略)
  ・④ (略)
 同法第618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
   当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
 同法第703条(不当利得の返還義務)
   法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

参照判例

 東京地裁昭和44年5月21日 判時571号64頁(要旨) 
 契約にあたり、場所的利益の対価として権利金が支払われた建物の賃貸借が終了した場合に、賃貸人がこれを返還すべきものかどうかに関しては、その法理は十分確立していない。ただ条理上いえることは、期間の定めのある賃貸借において期間満了によって終了した場合は、返還義務はない。期間の途中において、賃貸人の一方的都合ないし、その責めに帰すべき事由によって終了した場合は、支払われた権利金のうち残存期間に対応する部分は返還すべきであろう。
 問題は、本件の場合のように、期間の途中において、賃借人の解約したい旨の希望が容れられて合意解除により契約が終了し、しかも、その合意解除において、権利金の返還についての点については、なんらの取決めがなされていない場合である。
 この場合、いわゆる合意解除は、賃借人の解約申し入れに対し、賃貸人が承諾を与えたことにほかならないから、賃借人は借家権を放棄したのであり、従って賃貸人には何らの返還義務がないとするのも一つの考え方である。
 しかし、これによると、この種権利金の額は期間の長短によって定められるのを通常とするから、賃貸人は予想外の利得をし、賃借人も、これに相応する損失をうけることとなり、公平を旨とする司法の精神にもとることとなる。そこで、原則的には、不当利得の法理に立脚しつつ、賃借人の一方的都合によって終了したという事実によって、これを適正に調整按配するという態度が正しいと思う。(中略)
 当裁判所としては、この種権利金は期間の長短がその額に影響するものであり、一応約定の全期間に対する対価であるものと考えられるので、期間の途中賃借人の一方的都合によって、契約が終了した場合には、特段の事情のないかぎり、支払われた権利金のうち、残存期間に対応する部分の金額(くわしくいえば、権利金の額に、残存期間の約定期間に対する比率を乗じた金額)から一定額を控除した額につき返還義務があるものとし、その一定額については、民法第618条・第617条第1項第2号の規定の趣旨を参酌して、先の合計額が双方に公平な考え方であると思う。
(イ)賃料の3か月分に相当する額
(ロ)3か月の約定期間に対する比率を権利金の額に乗じた額(権利金の3か月分相当額)

監修者のコメント

 賃貸借が期間途中で終了した場合の権利金の返還の要否については、回答掲記の地裁判例も言うように、その法理は十分に確立していない。したがって現実の裁判においても当該権利金の法的性格も絡んで大いに争われるところである。
 本件の具体的結論としては、回答の結論が最も公平と思われるが、権利金の返還については、合意解約の条件として協議して決定すべきである。なぜなら、中途解約ができる旨の特約がなければ、賃借人は中途解約がそもそもできないのであるから、それを認めないという意味で賃貸人の立場が強いので、それを基礎として話合いができるからである。

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