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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2306-R-0264
賃借人が礼金として賃貸人に支払う金員を、媒介業者が広告料として受領することの是非。

 賃貸需要の低下した地域の賃貸人から、媒介業者である当社に対し、依頼物件が契約成立した際は、賃借人からの報酬とは別途に、広告費として賃料の1か月相当の金額を支払うとの申し出があった。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。営業エリアは都心部から離れており、以前は、人口の増加地域であったが、近年は人口が減少傾向にある。賃貸物件は、築年数の経たものが多く、人口減により賃貸需要は伸び悩んでいる。入居率の低い賃貸人は何とか空室を避けようと賃料を低く設定したり、敷金の減額、更新料の撤廃など契約条件を工夫している。余裕のある賃貸人は、外壁の塗り直し、設備の更新などをしている。
 当社が管理している物件の賃貸人は、空室が目立つために賃貸経営に不安を感じ、賃借人の募集にあたり、当社に契約条件の変更を申し入れてきた。新条件は、従来の賃料から約20%減額することと賃借人から受領する賃料1か月相当の礼金を当社に広告料として支払うというものである。当社が賃借人を紹介して賃貸借契約が成立したときは、賃借人から1か月相当の媒介報酬と広告料が受領できることになる。また、他業者が紹介した賃借人で成立した場合、それぞれ、紹介業者が賃借人から、当社は賃貸人から賃料の1か月相当の金員を受領できることになる。賃借人募集のための広告活動は、通常実施している当社ホームページと物件情報サイトへの掲載、業者間情報サービスの図面配布の予定である。

質 問

1.  当社は、賃貸借契約が成立した場合、賃貸人から広告料の名目で金員を受領することができるか。
2.  賃貸人が、賃借人から受領する礼金を広告料として当社に支払うとの約定に問題がある場合、賃貸借契約の約定どおりに賃貸人が礼金として受け取ることには問題はないか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸人からの特別の広告の依頼がないのに、宅建業者が広告料名目の金員を受領することは宅建業法違反に該当する。
 質問2.について ― このような法令違反の約定がある場合、賃貸人は、賃借人から支払われた礼金名目の金員を受領する正当な権限を有せず、賃貸人の不当利得となる可能性が高く、賃借人に返還すべきものと解する。
2.  理 由
⑵について
 宅建業者が宅地や建物の売買または貸借の媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。この規定を超える額を受けることが禁じられている(宅建業法第46条)。媒介業者が受領できる具体の額は、国土交通省告示の報酬規定に上限額が定められている。原則、報酬以外の金員は受領できないが、例外として、依頼者からの申し出があり、費用負担の承諾がある広告に限ってその広告料金については受領することが可能である(同省告示第9)。
 媒介業者が媒介活動において通常実施する広告や宣伝に使用する費用は、裁判例でも、「営業経費として報酬の範囲に含まれているものと解される」と報酬の内で負担する必要がある。明文化された規定はないが、一般的に報酬は売買または貸借契約の成立による成功報酬であり、契約が成立しなければ報酬の受領ができない(【参照判例①】参照)。依頼者の依頼及び合意により媒介業者が広告費として受領できるのは、「容認する広告の料金とは、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金」であり、「広告の料金に相当する額の金員を受領することができる」と広告料の実費のみが認められる(【参照判例②】参照)。依頼者からの依頼や合意があれば広告料を受領できると誤解している媒介業者がいるようだが、受領できる広告料は、依頼による特別な広告に限られることに留意が必要であろう。違反した場合には、当然宅建業法上の行政処分の対象となる。
 さらに、相談ケースのように、賃借人が支払う礼金名目の金員を賃貸人と媒介業者の合意に基づき、媒介業者が取得する行為に関し、「礼金取得合意は、賃借人から礼金との名目の下に賃料の1か月又は2か月分相当額の金員を出えんさせることを前提として、これを媒介業者において広告料の名目により取得することを認めるものであるが、このような合意は、宅建業法の定めに違反し、無効」であり、強行規定である報酬規定を潜脱する目的の礼金は、「媒介業者が広告料名目の金員を取得するために定めたものであるから、賃借人と賃貸人間の礼金支払合意も、礼金取得合意と同様に、宅建業法の規定に反し、無効」となる。賃借人が、賃貸人に支払った礼金を賃貸人のものとして受領したとしても、「礼金は本来賃借人に返還すべきものであり、礼金名目の金員の支払について、賃借人との関係で媒介業者に助力した賃貸人がこれを取得すべき理由はない」と賃貸人が受領した礼金は、賃貸人の不当利得として返還義務が生ずる(民法第703条)ことになる(【参照判例③】参照)。

参照条文

 民法第703条(不当利得の返還義務)
   法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
 宅地建物取引業法第46条(報酬)
   宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
   宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
  ・④ (略)
 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年10月23日国土交通省(旧建設省)告示第1552号)
  1~3 (略)
  4 賃借の媒介に関する報酬の額
 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の1か月分の1.1倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1か月分の0.55倍の相当する金額以内とする。
  5~8 (略)
  9 第2から第8までの規定によらない報酬の受領の禁止
     宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第2から第8までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告料金に相当する額については、この限りでない。
     (略)

参照判例①

 最高裁昭和49年11月14日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 仲介人が宅地建物取引業者であって、依頼者との間で、仲介によりいつたん売買契約が成立したときはその後依頼者の責に帰すべき事由により契約が履行されなかつたときでも、一定額の報酬金を依頼者に請求しうる旨約定していた等の特段の事情がある場合は格別、一般に仲介による報酬金は、売買契約が成立し、その履行がされ、取引の目的が達成された場合について定められているものと解するのが相当である。

参照判例②

 東京高裁昭和57年9月29日 判タ485号108頁(要旨)
 一般に宅建業者が土地建物の売買の媒介にあたって通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれているものと解されるから、本件告示第6(現行、第9)が特に容認する広告の料金とは、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するものと解すべきであり、また、本件告示第6(同)が依頼者の依頼によって行う場合にだけ広告の料金に相当する額の金員の受領を許したのは、宅建業者が依頼者の依頼を受けないのに一方的に多額の費用を要する広告宣伝を行い、その費用の負担を依頼者に強要することを防止しようとしたものと解されるから、特に依頼者から広告を行うことの依頼があり、その費用の負担につき事前に依頼者の承諾があった場合又はこれと同視することのできるような事後において依頼者が広告を行ったこと及びその費用の負担につき全く異議なくこれを承諾した場合に限り、広告の料金に相当する額の金員を受領することができるものと解すべきである。

参照判例③

 東京地裁平成25年6月26日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 宅建業法の規定によれば、建物賃貸借の仲介において、媒介業者は、賃貸人、賃借人の双方から、名目の如何を問わず、国土交通省告示に定める金額(賃料相当額の1か月分)を超える報酬を取得することができない。これは、媒介業者が複数存在する場合も同様であり、各業者の受ける報酬額は、合計して上記金額となる。
 礼金取得合意は、賃借人から礼金との名目の下に賃料の1か月又は2か月分相当額の金員を出えんさせることを前提として、これを媒介業者において広告料の名目により取得することを認めるものであるが、このような合意は、宅建業法の定めに違反し、無効であるというよりほかはない。
この点、媒介業者は、近時の建物賃貸借市場における供給情勢に基づき、広告料名目で元付業者が金員を取得する慣行がある旨主張する。しかし、本件以外でも、少なくない事例において広告料名目の金銭の収受が行われる実態が認められるとしても、このような実態に基づく運用が強行規定である宅建業法の規定を空文化する効力を持つような慣習法として確立しているとは言い難く、媒介業者の主張によっても、前記判断を左右するに足りない。
 ところで、賃貸人は、礼金名目の金員について、賃貸人が取得すべき金員を媒介業者が預かり又は留保したとして、その引渡しを求めている。しかし、上記説示によれば、この礼金は、強行規定を潜脱する目的で、媒介業者が広告料名目の金員を取得するために定めたものであるから、各賃借人と賃貸人間の礼金支払合意も、礼金取得合意と同様に、宅建業法の規定に反し、無効である。
 そうすると、賃貸人は、各賃借人から支払われた礼金名目の金員を取得する正当な権限を有しないから、これを自らに引き渡すべき請求をすることもできないというべきであり、賃貸人の礼金の引渡請求は、各契約を通じ、前提を欠いて、理由がない。この結論は、媒介業者が礼金を取得することを是認するものではないが、礼金は本来賃借人に返還すべきものであり、礼金名目の金員の支払について、賃借人との関係で媒介業者に助力した賃貸人がこれを取得すべき理由はない。

監修者のコメント

 本件の相談者のような理解が、いまだ一部に存在する。宅建業法第46条の媒介報酬の制限は、あくまでも強行規定であって、たとえ依頼者が好意で支払いたいと言っても、上限額を超えるものは、業法違反である。また、実質的な媒介報酬について、広告料、企画料、調査費など名目を変えれば報酬額の制限に抵触しないなどと考えるのは明らかな誤りである。そのような行為を「脱法行為」と言い、許されないことは明白である。

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