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2302-B-0315
消費者契約における消費者契約法と宅建業法の適用いかん

 宅建業者が売主で宅建業者以外の消費者(個人)が買主となる建売住宅の売買契約(消費者契約)で、違約金の定めを売買代金の20%相当額としたうえで、更に売買代金の支払遅延に対する遅延損害金を定めることは宅建業法第38条第2項の規定に抵触するか。このような場合、消費者契約法第9条第1号と宅建業法第38条の規定はどちらが優先的に適用されるのか。

事実関係

 当社は建売住宅の分譲や一般中古住宅の売買の媒介を行っている宅建業者であるが、宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主となる場合の宅建業法上の規制の内容と、消費者契約法上の規制の内容が混乱し、よくわからなくなるときがある。

質 問

1.  当社が売主で一般の消費者(個人)が買主となる建売住宅の売買で、損害賠償額の予定として、契約違反の場合の違約金の定めを売買代金の20%相当額としつつ、売買代金の支払いが遅延したときは、別途未払金に対し年14.6%の遅延損害金を支払うよう定めたときは、その遅延損害金の定めは宅建業法第38条第2項の規定により無効となるか。
2.  この場合、消費者契約法によれば、同法第9条第1号に、損害賠償の額を予定したり違約金を定める場合に、それらの合計額が、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害の額を超えるもの」について「その超える部分」は無効とすると定められているが、この消費者契約法上の規定と宅建業法上の規定(第38条の規定)とでは、どちらの規定が優先的に適用されるのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 無効とはならない。しかし、それが紛争となり、裁判になった場合には、遅延損害金の部分が違約金の中に含まれると解釈される可能性はあり得る。
 質問2.について ― 同じ消費者契約であっても、売主が宅建業者で買主が宅建業者以外の者であれば、すべて宅建業法第38条の規定が適用されるが、そうでない消費者契約(たとえば、売主が一般の会社(事業者)で買主が一般の個人(消費者))の場合には消費者契約法第9条第1号の規定が適用される(消費者契約法第11条第2項)。したがって、本件の場合には宅建業法の規定が優先的に適用される。
2.  理 由
について
 宅建業法第38条の規定は、当事者の債務不履行を理由とする契約解除の場合の損害賠償額の予定又は違約金の定めについての規制であるから、当事者がそれとは別の売買代金の支払い遅延に対し遅延損害金を定めることは、同条の規制の及ぶところではない。ましてその遅延損害金の額が、消費者契約法第9条第2号に定められている年14.6%の割合による額であることからも、売主が買主に対し遅延損害金を請求したうえで、更に売買契約を解除し20%の違約金を請求したとしても、何ら宅建業法に抵触するものではない。
 しかし、それが紛争になり、裁判になった場合には、通常契約を解除し違約金を請求するまでには、少なくとも数日間から数週間は要することから、遅延損害金は違約金の中に含まれると解釈される可能性はあり得る。
について
 消費者契約法は、宅建業者のように、同じ「事業者」であっても他の法律の規定(宅建業者の場合は宅建業法の規定)によって特別の規制を受けている事業者の場合には、その事業者が締結する消費者契約については、その他の法律の規定(すなわち宅建業法の規定)が適用されることとしている(消費者契約法第11条第2項)。

参照条文

 宅地建物取引業法第38条(損害賠償額の予定等の制限)
   宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをしてはならない。
   前項の規定に反する特約は、代金の額の10分の2をこえる部分について、無効とする。
 消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
   次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
   当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
   該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
 同法第11条(他の法律の適用)
   消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。
   消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

監修者のコメント

 質問2.の問題が、一つの争点となった裁判例がある。
 それは、新築分譲マンションの売買において違約金を売買代金の2割とする約定(そのケースでは728万円となる)があったが、購入者が残代金を払えなかったため分譲会社が約定どおりの額を請求したところ、購入者側は、その約定自体が、消費者契約法第9条第1号に抵触し、そのほとんどの部分の額が無効であると主張したことに対して、裁判所は、回答と同じく、消費者契約法第11条第2項により、宅建業法第38条が優先するとした(福岡高裁・平成20年3月28日判決、判例時報2024号32頁)。
 もっとも、同判決は、対象物件がその顧客との解除後1か月も経たないうちに、他の顧客に売却されたことを斟酌して、信義則を理由に400万円の違約金が妥当としている。

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