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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2212-R-0256
建物賃貸借契約における全面禁煙特約の有効性

 建物賃貸借契約において、室内およびベランダ(バルコニー)内での喫煙を禁止する特約は、有効か。
 借主がその特約に違反し、その結果、室内のクロスに黄ばみ、ヤニ・臭いの付着などの損害を与えたときは、その程度のいかんにかかわらず、その張り替え費用を全額借主負担とするとともに、ベランダ等での喫煙によって、他の入居者との間でトラブルが生じたときも、すべて借主において解決し、貸主に対し一切迷惑をかけないという特約は、有効か。

事実関係

 建物賃貸借契約の媒介において、貸主からの強い要請により、室内およびベランダ(バルコニー)内での喫煙を禁止する特約を設けたいが、どのような特約を設けることができるのか、その有効・無効の分岐点がよくわからない。

質 問

1.  台所、トイレを含む室内すべてにおいて喫煙を禁止する特約は、有効か。
2.  ベランダ(バルコニー)内での喫煙も禁止する特約は、有効か。
3.  借主が上記特約に違反し、その結果、室内のクロスに黄ばみ、ヤニ・臭いの付着などの損害を与えたときは、その程度のいかんにかかわらず、その張り替え費用を全額借主負担とするとともに、ベランダ等での喫煙によって、他の入居者との間でトラブルが生じたときも、すべて借主において解決し、貸主に対し一切迷惑をかけないという特約は、有効か。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 有効である。
 質問2.について ― 有効と解される。
 質問3.について ― 前段の特約については、文字どおり程度のいかんにかかわらず、たとえば専用の洗剤で汚れが落ちるにもかかわらずクロスを張り替えたり、一部の汚れであるにもかかわらず全面的にクロスを張り替えるというような特約である場合には、その限りにおいて無効と解されよう。
 また後段の特約についても、その特約の意味が、貸主が入居者間のトラブルに対し一切何もしないという意味の特約だとすれば、その限りにおいて、その特約は無効なものと解されよう。
2.  理 由
について
 貸主が借主との間で禁煙特約を設けること自体は、それが室内全面にわたる特約であっても、法的に問題はない。なぜならば、貸主にはそれを設ける合理的な理由があるからであり、契約自由の原則の範囲内の取り決めだからである。
について
 貸主がベランダやバルコニーでの喫煙を禁止する理由は、特に上下階における煙を巡るトラブルが貸主に対する苦情として持ち込まれることが多いからであり、その結果として契約条件の変更(入居ルールの変更)まで求められることがあるからである。
 しかしこのようなトラブルは、上下階に限らず、左右の入居者との間においても、風向きのいかんによっては、タバコの灰や臭い等による洗濯物への付着トラブルに発展する可能性があるので、本件のような特約は、いわばそのような入居者間のトラブルを避けるために、ベランダ(バルコニー)での喫煙も一律に禁止し、快適な居住環境を維持しようとするものであるから、法的にも有効な特約というべきであろう。
について
 いかに上記の特約が原則として有効であるといっても、その特約に違反した場合に借主がとる責任の取り方として、その損害の程度のいかんにかかわらず、一律に自己負担によるクロスの張り替えという方法で賠償するという特約は、仮にその特約が損害賠償額の予定(民法第420条第1項)をしたものだとしても、ケースによっては信義則上認められないこともあると解される。(民法第1条第2項、消費者契約法第10条)。したがって、たとえば結論⑶で述べたような前段のケースの場合には、その特約は無効と解されよう。また、後段のケースの場合にも、トラブルが生じた場合に、当事者が責任をもって解決にあたるのは当然としても、その特約があることをタテに、貸主が、違反をしている入居者に対し注意をするなどの貸主としての義務も果さずに、すべて入居者の責任として事にあたらせるという意味の特約であるとすれば、その限りにおいて、その特約は信義則上無効なものと解されるからである。
 そのような意味からも、本件の特約の有効・無効の分岐点は、具体的なケースにおいて、そのクロスの張り替えや費用の全額負担が、特約がある以上やむを得ないと判断される程度の損害か否かで判断され、後段の特約については、貸主が貸主としての義務を果たすことが前提になっている特約なのかどうかで判断されることになると解される。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
   (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
   (略)
 民法第420条(賠償額の予定)
   当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
  ・③ (略)
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

監修者のコメント

 各特約の有効性は、回答のとおり、契約自由の範囲の問題であって有効と解される。しかし、それはあくまでも契約締結時に借主もその特約を認めていることが前提である。このような特約が有効だと聞いた貸主が、借主間の喫煙トラブルをキッカケに、この特約を一方的に結ぶことができると誤解するケースがしばしば見られる。あくまでも、借主との合意が必要である。
 なお、貸主は賃貸物件を借主が適切に利用できるようにする義務を契約上負っているので、「入居者間で喫煙トラブルが生じたときも、すべて借主において解決し、貸主対し一切迷惑をかけない」という趣旨の特約が、貸主は一切何もしないという意味であれば、信義則上その特約は無効とされる可能性がある。Aという借主が、深夜騒音でBという借主に迷惑をかけている場合は、貸主としてAに対し、それをやめさせるという義務をBほか他の借主に負っているのであり、それと同様に喫煙に関する特約に違反している借主に対し、特約を遵守するよう要求する義務がある。

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