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2204-R-0246
地代や家賃の自動改定特約の有効性

 当社の営業エリアは、近年、マンションの建設が活発で、賃貸ビルの賃料上昇が見込まれているため、賃貸人は一定期間後に賃料を値上する約定を望んでいる。反面、人口増に伴い商業ビルの進出も予想され、賃料の低下が懸念される。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。ビルを所有している賃貸人から店舗の媒介を依頼された。当社の営業エリアは郊外であるが、近年、分譲マンションが数多く建設され、高層マンション建設も予定されており、急激に人口が増加している地域である。そのため、店舗賃借の需要が活発化しており、賃料は上昇傾向にある。賃貸人は、今後も賃料の上昇が見込まれることから、賃貸借契約に一定期間経過後に賃料を増額する、いわゆる賃料自動増額特約の約定を望んでいる。
 しかし、マンション分譲の人口増に伴い、商業ビルの進出も多数予想される。すでにビル建設が開始されているところもあり、いずれ空地の広狭に限らず、店舗も増加するであろう。店舗が増えることにより、先行きは店舗賃借需要が停滞し、賃料は頭打ちになることも予見される。

質 問

1.  賃貸借契約における賃料を2年ごとに自動的に増額する約定(賃料自動増額特約)は有効か。
2.  賃料自動増額特約を約定した賃貸借契約で、賃料水準が低下した場合、賃借人は、賃貸人に対して賃料の減額を請求することはできないのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃貸借契約の当事者である賃貸人、賃借人の合意により賃料自動増額特約を約定することは問題ない。
 質問2.について ― 賃料自動増額特約が約定されていても、賃借人の減額請求権は排除されず、減額請求は可能である。
2.  理 由
について
 賃貸借契約の条件は、契約自由の原則に基づき、借地借家法の強行規定または信義則に反しないかぎりどのような約定を結ぶかは当事者の合意に委ねられている。地代や家賃の賃貸借の賃料についても合理的根拠に基づくものであれば、容認される。地代および家賃等の賃貸条件が賃借人に不利なものは無効になる(借地借家法第16条、同法第30条)が、不利な内容でないときは、賃料改定の協議は当事者にとって煩わしいこともあり、将来の賃料の額を一定の基準によりあらかじめ定める内容の特約を締結すること自体は可能である。いわゆる賃料の自動改定特約と言われる一定期間経過後または定期的に賃料改定(増減)を約することも例外ではなく当事者の合意により自由に約定することができる。
について
 賃貸借契約は長期にわたるのが通常であるが、期間中に、契約時に約定した賃料が近傍類似の土地の地代または近傍同種建物の借賃の額に比較して不相当となることがある。賃料が不相当となる要因は、公租公課の増減及び土地価格の上昇下落、経済事情の変動等が想定されるが、賃料が不相当になった場合、賃貸人及び賃借人は、契約条件にかかわらず、賃料の増減を請求することができる(同法第11条第1項、同法第32条第1項)。賃料条件には、自動増(減)額、減額しない旨の特約、増額しない旨の特約があるが、一定の期間賃料を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うことが規定されているが、賃料不減額特約については規定がない。借地借家法の賃料増減規定は強行規定とされており、賃料不減額特約が約定されていても、賃借人は、賃貸人に対して賃料減額請求をすることが可能である(【参照判例①】参照)。
 一方、賃料の自動改定特約をした場合、「改定基準が借地借家法の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には、その効力は認められるが、同法規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して賃料改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同法に基づく地代等増減請求権の行使を特約によって妨げられるものではない」としている裁判例がある(【参照判例②】参照)。賃貸人、賃借人とも契約の相手方に賃料の増額、減額を請求できるものと解している。
 なお、定期建物賃貸借の場合は、賃料の改定(増減)特約を約定していても、賃料増減額請求権を定めた同法第32条第1項は適用されない(同法第38条第7項)。一時使用目的の建物賃貸借契約についても同様である(同法第40条)。

参照条文

 民法第91条(任意規定と異なる意思表示)
   法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
 借地借家法第11条(地代等増減請求権)
   地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  ・③ (略)
 同法第16条(強行規定)
   第10条、第13条及び第14条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
 同法第30条(強行規定)
   この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
 同法第32条(借賃増減請求権)
   建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  ・③ (略)
 同法第38条(定期建物賃貸借)
   期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
  〜⑥ (略)
   第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない
 同法第40条(一時使用目的の建物の賃貸借)
   この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

参照判例①

 最高裁昭和31年5月15日(要旨)
 1年毎に両当事者協議の上これを決定すべき旨の約定(賃料自動増額特約)があるというのであるが、かかる約定の存在は未だもつて借家法7条(現行、借地借家法第32条)の適用を否定すべき特別の事情となすに足りない。けだし右約定によつては、賃料の増減につき当事者間に協定が成立しない場合にもなお当事者の右法条による賃料の増減請求権を否定すべきものとした趣旨が窺いえないのみならず、同条は契約の条件いかんにかかわらず借家契約にこれを適用すべき強行法規であることは疑なく、右の如き約定によつてその適用を排除することをえない。

参照判例②

 最高裁平成15年6月12日 判タ1126号109頁(要旨) 
 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約の当事者は、従前の地代等が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、借地借家法11条1項の定めるところにより、地代等の増減請求権を行使することができる。これは、長期的、継続的な借地関係では、一度約定された地代等が経済事情の変動等により不相当となることも予想されるので、公平の観点から、当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるようにしたものと解するのが相当である。この規定は、地代等不増額の特約がある場合を除き、契約の条件にかかわらず、地代等増減請求権を行使できるとしているのであるから、強行法規としての実質を持つものである(最高裁昭和31年5月15日。最高裁昭和56年4月20日)。
 他方、地代等の額の決定は、本来当事者の自由な合意にゆだねられているのであるから、当事者は、将来の地代等の額をあらかじめ定める内容の特約を締結することもできるというべきである。そして、地代等改定をめぐる協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため、一定の基準に基づいて将来の地代等を自動的に決定していくという地代等自動改定特約についても、基本的には同様に考えることができる。
 地代等自動改定特約は、その地代等改定基準が借地借家法第11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には、その効力を認めることができる。
 しかし、当初は効力が認められるべきであった地代等自動改定特約であっても、その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法第11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同項に基づく地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。

監修者のコメント

 借地借家法第11条および32条の規定は、強行規定であるから、同規定の適用を排除する特約は無効であるが、自動増減特約自体はもちろん有効である。ただ、有効だからと言って、その条項に完全な拘束力が認められるのではない。それを認めてしまった場合は、上記借地借家法の条文が無意味となってしまうからである。そして、増額特約も、たとえば1%はよいが、8%は認められないということではなく、現実の裁判においては、その特約に基づいて値上げした額が、客観的に相当かどうかで決定される。たとえ1%でもその結果の家賃・地代が高すぎるときは認められず、仮に10%でも、その結果の賃料・地代が相場からみて高くないときは認められるということもあり、要するに値上げのパーセント自体を有効・無効の基準とするものではないということである。
 ただ、相談のように自動増額特約を設けておくことは、値上げの交渉において、そのような特約がないときに比べれば、値上げ交渉に入りやすいという効用はある。

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