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2110-R-0238
賃貸人が賃借人に無断で賃貸建物に立ち入った場合、賃借人から契約の解除ができるか。

 当社が賃貸したマンション内のエアコンが故障し、工事業者が工事をするための部屋への立ち入りを賃借人から承諾を得ていたが、賃借人に通知していた工事予定日前日に賃借人が留守であるにもかかわらず、立ち入りの承諾を得ているものと誤認識して工事を行った。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者であるが、所有している物件を貸主としても賃貸している。1年前に当社所有のエアコン付賃貸マンションに入居した賃借人(単身女性)からエアコンの故障の修理を依頼された。当社はエアコン修理業者に連絡し、工事日を決め、賃借人に連絡したところ、賃借人は、当日はなるべく自宅に居るようにするが、出かける予定もあるので、居ない場合は工事のために入室してもよいので、それまでに部屋を片づけておくとの返事であった。賃貸マンションは当社の隣接地にあるが、工事予定の前日に工事業者が連絡もなく、他の工事との調整ができたので依頼されているエアコン修理をしたいと申し入れてきた。当社は、暑い日が続くので修理は早い方がよいと思い、賃借人は留守の場合も立ち入りを承諾しているので、当社が保有している合鍵を使用して、当社立会いのうえ、工事業者が修理を行った。
 当社は、賃借人に、エアコン修理が済み、問題なく稼働することを連絡したところ、工事予定の前日に無断で部屋に立ち入ったことに憤慨し、契約解除を要求している。

質 問

1.  賃貸人が建物や設備の修理のために賃借人に無断で部屋に立ち入った場合、どのような責任が生じるのか。
2.  賃貸人が、賃借人の承諾を得ないで建物等の修理のために無断で立ち入った場合、賃借人から賃貸借契約の解除ができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 建物の修理か否を問わず、賃貸人が賃借人に無断で賃貸物件に立入ったときは、賃貸人は債務不履行又は不法行為により損害賠償責任を負う。また、住居侵入罪が成立し得る場合がある。
 質問2.について ― 当事者の信頼関係が破壊されたと判断されれば、契約解除が可能であるが、破壊するに至らない程度の不信行為であれば契約解除はできない。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約において、賃貸人は貸主として賃借人の使用収益に必要な修繕をする義務を負い、賃貸物の保存行為をする権利を有しており、賃借人は、賃貸人の保存行為をすることを拒むことができない(民法第606条)が、賃貸人が修繕、保存行為をするときは、緊急の必要がある場合を除いて賃借人の承諾を得ずに賃借物に立ち入ることは許されないということは、多くの賃貸借契約書に約定されている(賃貸住宅標準契約書第16条第1項、第4項)。賃貸人が賃借人の承諾を得ないで無断で賃借物に立ち入ったときは、賃借人の権利又は法律上保護される利益を侵害する不法行為又は賃貸借契約条項に反する債務不履行に当たり賃貸人に損害賠償責任が生じることがある。不法行為は無断立ち入りが故意であるときはもちろん、過失であったとしても権利侵害行為となる(民法第415条、同法第709条)。更に、たとえ賃貸人であっても、賃借人に無断で正当な理由もなく住居の平穏を害するような態様で賃貸物である住居に立ち入った場合は、住居侵入罪が成立することもあり、刑事罰が科されることがある(刑法第130条)。
 相談ケースでは、エアコンの修繕工事が予定されていた日は、賃借人が留守の場合には、工事のため建物に立ち入ることを承諾していたが、前日に立ち入ることについては承諾していなかった。賃貸人は女性であり、当初の工事予定の日は部屋の片づけなど立ち入る場合の準備をすることも考えていたことがうかがわれるが、前日に賃貸人が無断で立ち入ったことは、プライバシー権の侵害の可能性もあり、賃借人が賃貸人に対して不信感を抱くことは当然と思われる。
 裁判例では、契約解除の適否について、「たとえ修繕目的であっても、賃貸人がたびたび賃借人に無断で一方的に立ち入っていたとすれば、信頼関係破壊が認められる場合もあり得る」としながらも、「信頼関係が破壊されたといえるためには、単に一方が相手方を『信頼できなくなった』というだけでは足りず、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為があったことを要する。修繕目的であることが明らかな同日の賃貸人の立ち入りのみによって、直ちに貸す債務自体が履行不能になったと判断して、賃借人による解除を認めることはできない」と賃貸人の立ち入った目的や無断立ち入りの頻度等を総合的に勘案して信頼関係の破壊の有無を判断している。信頼関係の破壊による契約解除は否定したが、債務不履行及び不法行為を認め、賃借人への慰謝料支払を命じている(【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
   債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
 同法第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
   債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第606条(賃貸人による修繕等)
   賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
   賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
 民法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 刑法第130条(住居侵入等)
   正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
 賃貸住宅標準契約書(国交省)第9条(契約期間中の修繕)
   甲(貸主)は、乙(借主)が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合の修繕に要する費用については、乙の責めに帰すべき事由により必要となったものは乙が負担し、その他のものは甲が負担するものとする。
   前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめ、その旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
  ~⑤ (略)
 同標準契約書第16条(立入り)
   甲は、本物件の防火、本物件の構造の保全その他の本物件の管理上特に必要があるときは、あらかじめ乙の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
   乙は、正当な理由がある場合を除き、前項の規定に基づく甲の立入りを拒否することはできない。
   (略)
   甲は、火災による延焼を防止する必要がある場合その他の緊急の必要がある場合においては、あらかじめ乙の承諾を得ることなく、本物件内に立ち入ることができる。この場合において、甲は、乙の不在時に立ち入ったときは、立入り後その旨を乙に通知しなければならない。

参照判例

 大阪地裁平成19年3月30日 判タ1273号221頁(要旨)
 現代社会においてプライバシー権の重要性が一般に認知されていること、賃借人が女性であること及び賃貸人は携帯電話等によって賃借人に対して連絡を取ることが可能な状況にあったこと等に鑑みると、賃貸人が同日、賃借人に連絡を取ることなく立ち入ったことは、明らかに賃借人に対する配慮に欠けた行為であり、立ち入りについて賃借人の承諾を得るべきことを定めた本件賃貸借契約条項に反する債務不履行に当たるとともに、故意とはいえないとしても、過失による権利侵害行為と認められ、不法行為にも該当する。(中略)
 賃借人のプライバシーが重要なことはもちろんである。しかし、賃貸人は貸主として使用収益に必要な修繕をする義務を負うとともに、保存行為をする権利も有しており、本件賃貸借契約書条項も「乙(賃借人)は、正当な理由がある場合を除き、前項の規定に基づく甲(賃貸人)の立ち入りを拒否することはできない。」と規定している。これらの規定の趣旨に鑑みると、修繕目的であることが明らかな同日の賃貸人の立ち入りのみによって、直ちに貸す債務自体が履行不能になったと判断して、賃借人による解除を認めることはできない。(中略)
 たとえ修繕目的であっても、賃貸人がたびたび賃借人に無断で一方的に立ち入っていたとすれば、信頼関係破壊が認められる場合もあり得る。
 しかし、そもそも、信頼関係が破壊されたといえるためには、単に一方が相手方を「信頼できなくなった」というだけでは足りず、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為があったことを要する。(中略)
 以上の点を総合的に勘案すると、本件では、修繕のために立ち入った賃貸人に、信頼関係を破壊するに至る程度の不信行為を認めることはできないので、信頼関係破壊による解除は認められない。

監修者のコメント

 【事実関係】を見る限り、回答の【参照判例】の論理がそのままあてはまる事案と思われる。修理のための立入りが1回限りで、それ以外の事実がないのであれば、回答のとおり解除原因となる「信頼関係の破壊」の程度には至っていないと考えられる。不法行為ないし債務不履行の成立を認めることはできるが、現実に裁判になったとしても、損害賠償(慰謝料)の額は、【事実関係】以外の特段の事情がない限り、おそらく1万円を超えることはないと思われる。

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◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

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