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2108-B-0294
民法に規定する「境界線付近の建築の制限」における境界線からの距離は、建物のどの部分までか。

 当社が媒介した土地の買主が、自宅を建築したが、隣家への雨の流入で争っている。建物は隣地との境界線から外壁まで50㎝の距離を保っているが、隣家は屋根または庇の先端まで50㎝の距離が法律上の規定であると主張している。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。土地売買の媒介をした買主から相談があった。買主は、1年前に土地の引渡しを受け、自宅を建築し、1か月前から入居している。最近、隣家から、買主の自宅建物は法律に定められている境界線から50㎝以上の距離が満たされておらず、違反建物であり、そのため、買主の自宅屋根から雨水が流れ込み、庭がぬかるんだり、水たまりができ、花壇に植えられている草木が倒れたり、流出するなどの被害を受けていると買主に苦情を言ってきた。隣家は、雨水の被害を解消するために、境界線から買主の自宅の屋根または庇(ひさし)の先端まで50㎝以上の距離を保つよう屋根の先端部分(庇)の一部切除を要求している。
 当社は、買主の自宅を確認すると建物の外壁から隣地境界線までの距離は55㎝あり、屋根の庇部分には雨樋があり、隣地に越境していないことが確認できた。確かに、雨量が多いときには、雨樋から直接隣地に雨水が流入する可能性は考えられる。

質 問

1.  民法に規定されている境界線付近の建築の制限における境界線から50㎝以上の距離を保つ築造建物は、隣家が主張する屋根または庇からの距離か。
2.  屋根からの雨水が隣地に流出することがある場合、建物所有者は屋根の一部を切除したり、損害賠償責任を負う必要があるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 建物を築造する場合の隣地境界線から50㎝以上の距離は、外壁または出窓等の張出し部分からの距離である。
 質問2.について ― 雨水の流出が受忍限度を超える損害を及ぼしていない限り、建物の一部の切除や損害賠償請求に応じる義務はない。
2.  理 由
について
 本来、土地の所有者は、自由にその所有物を使用、収益及び処分をする権利を有しているが、社会生活を円滑に営むためには、一定の制限を課す必要性がある。民法に規律する相隣関係もその一つである。境界線付近の建築の制限や雨水が隣地に注ぐ工作物の設置の禁止等が、相隣関係として規定されている。
 建物を築造する場合、境界線から50㎝以上の距離を保つ必要がある(民法第234条第1項)。距離を保つ理由として、建物を所有して居住する者の健康で快適な生活環境を確保することが挙げられる。裁判例では、「建物と境界線との間に一定の間隔を保持することにより、通風や衛生を良好に保ち、類焼等の災害の拡大を防止し、また、境界線付近における建物の築造及び修繕の際に通行すべき空き地を確保することにある」とし、「境界線と建物との間隔について、住宅事情や土地の利用状況にかかわらず、異なる慣習や特別法のない限り、一般法として一律に適用されるべき行為規範を規定したもので、最低限度の境界線との間隔を定めたもの」であり、距離の測り方に関しては、「雨水の注瀉の禁止を定めている(同法第218条)ことをも考慮すれば、50センチメートルの間隔は、建物の側壁及びこれと同視すべき出窓その他の建物の張出し部分と境界線との最短距離」を定めたものと解し、建物の屋根または庇の各先端から鉛直に下した線が地表と交わる点と境界線との最短距離を意味しない」との考え方が定着している(【参照判例①】及び【参照判例②】参照)。
について
 雨水は、折々の天候によりその量が異なる。小雨から長雨、台風まで様々である。天候は自然現象であり、雨量によって自身の敷地から隣地へ流出、または反対に流入することもある。通常、建物の屋根や庇には雨樋が取付けてあり、建物に越境がなければ、屋根への降雨は、屋根に取り付けられた軒樋を伝って、集水器に集まり、集水器から縦樋を通って地表または側溝や下水施設に流れるようになっている。軒樋に木の葉等の詰まり、樋の破損、降水量が多い場合は、樋を通さず直接地表に流れ、屋根への降雨が直接隣地に流れることがある。このような自然現象により、隣地へ損害を及ぼした場合の裁判例に、「近隣者間において社会生活を円満に継続するためには,居住生活の過程で不可避的に生ずる法益侵害を互いに受忍することが必要であり、社会的受忍の限度を超えた生活侵害のみが、違法なものとして、不法行為による差止請求や損害賠償の対象となるものと解するのが相当」としているものがある。降雨による隣地への影響はお互い様であり、受忍限度を超え、または、屋根や樋の不具合を見過ごしていた場合は不法行為が成立するとしているものがある(【参照判例②】)。
 民法第218条は、「直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」と相隣関係を規律した規定があり、前記のとおり、建物の外壁等が「境界線から50㎝以上の距離」が保たれていれば、通常降雨の雨水は、所有地で処理でき、隣地に影響を及ぼすことはないとされている。

参照条文

 民法第206条(所有権の内容)
   所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
 同法第218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)
   土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
 同法第234条(境界線付近の建築の制限)
   建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
   前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
 同法第236条(境界線付近の建築に関する慣習)
   前2条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 建築基準法第63条(隣地境界線に接する外壁)
   防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

参照判例①

 東京高裁昭和58年2月7日 判タ495号110頁(要旨) 
 民法第234条第1項にいう50センチメートル以上の距離は、原決定説示の同項の趣旨により、建物の側壁またはこれと同視すべき出窓その他の張出し部分と境界線との間の最短距離を意味するものであって、建物の屋根または庇の各先端から鉛直に下した線が地表と交わる点と境界線との最短距離を意味しないと解するのが相当である。

参照判例②

 東京地裁平成4年1月28日 判タ808号205頁(要旨) 
 一般に、居住のために建物を所有する者は、その所有権及び人格権の一内容として、健康で快適な生活環境を確保し、平穏に居住する権利を有するものということができる。しかしながら、他人が隣地に建物を建てて生活することが認められる限り、これによって生活環境がある程度侵害を受けることは避けられないというべきである。したがって、近隣者間において社会生活を円満に継続するためには,居住生活の過程で不可避的に生ずる法益侵害を互いに受忍することが必要であり、そのような社会的受忍の限度を超えた生活侵害のみが、違法なものとして、不法行為による差止請求や損害賠償の対象となるものと解するのが相当である。(中略)
 民法第234条第1項の趣旨は、建物と境界線との間に一定の間隔を保持することにより、通風や衛生を良好に保ち、類焼等の災害の拡大を防止し、また、境界線付近における建物の築造及び修繕の際に通行すべき空き地を確保することにある。このような趣旨を実現するために、同条項は、境界線と建物との間隔について、住宅事情や土地の利用状況にかかわらず、異なる慣習や特別法のない限り、一般法として一律に適用されるべき行為規範を規定したものである。このような点にかんがみれば、同条項は、右趣旨を全うするために必要な最低限度の境界線との間隔を定めたものと解するのが相当である。加えて、同法第218条が雨水の注瀉の禁止を定めていることをも考慮すれば、同法第234条第1項に定める50センチメートルの間隔は、建物の側壁及びこれと同視すべき出窓その他の建物の張出し部分と境界線との最短距離を定めたものと解するべきである。
 現在における雨水の流入状況に関して証拠上認定できる事実に加え、隣地側において雨水の越境を防止するために措置を講じたことをも考慮すれば、本件屋根部分から社会生活上受忍すべき限度を超えて雨水が越境し、当該土地の所有権が侵害されたとの事実を認めることはできない。
 民法第218条が所有権に基づく相隣関係を規律した規定であることから、同条違反により差止及び損害賠償請求をすることができるのは、土地所有者が隣地工作物からの雨水の流入により、社会的に受忍すべき限度を超える損害を被った場合に限られるものと解される。そして、現在の雨水の流入状況に関して証拠上認定できる事実に加え、隣地側において雨水の越境を防止するために措置を講じたことを考慮すれば、本件屋根部分から社会生活上受忍すべき限度を超えて雨水が当該土地に流入した事実を認めることができない以上、同条に基づく当該土地所有者の請求は理由がない。

監修者のコメント

 本件の争点である距離の起点については、回答の裁判例のほか、戦前ではあるが法曹会決議というものがある。法曹会というのは、裁判官、検察官、弁護士の法曹三者で構成される団体で、そこの決議は判例に匹敵するほどの権威がある。そこに「民法第234条第1項の距離は、土台敷または建物側壁の固定的突出部分と境界線との最短距離である。」との決議がある(法曹会決議昭和2年2月24日)。
 そして、現在でもこれに異論をとなえる学説や裁判例は、少なくとも公刊物には見当たらない。
 本件の隣家の主張のように、屋根または庇の先端から真下に線をおろし、その地表と交わる点と境界線が50cm以上でなければならないとすると、民法218条が存在意義のない条文になってしまう。同条は、雨水を直接隣地にそそぐような工作物の設置を禁じているが、もし、屋根や庇を50cm以上離さなければならないのであれば、同条は不要な規定と考えられるからである。

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