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2108-B-0292
依頼者により不動産の売買契約から排除された媒介業者の媒介報酬請求権

 当社は、購入希望者から依頼を受けて媒介行為を行ったが、元付業者と依頼者が直接媒介契約を締結してしまい、当社は売買契約から排除された。当社は、依頼者に対して媒介報酬を請求することができるか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。半年前、一戸建住宅を探している顧客が当社に来店し、当社は購入希望条件等を聞きながら、依頼者(顧客)に数件の物件を紹介した。しかし、その時は、紹介した物件に顧客の気に入ったものはなかった。1週間後、当社から条件に近い物件をファックスで紹介したところ、依頼者がその物件を気に入ったと言うので、当社は元付業者とともに依頼者を紹介物件に案内した。依頼者が当社紹介の物件を検討した結果、購入の意思を固めて購入希望金額を伝えてきた。当社から元付業者を通じて売主の意向を確認したところ、購入希望金額が売出し価額を下回っているが、金額は下げられないとのことだった。その結果、依頼者は、売主の売出し価額での購入意思を固め、2日後に購入申込書に必要事項を記載し、当社に手交した。当社は、依頼者の購入申込書をファックスで元付業者に送付して、契約締結日を1週間後にするということで合意ができた。
 依頼者が当社に購入申込書を提出した4日後、依頼者から、熟慮の結果、当該物件の購入は取りやめたいとの連絡があったため、当社は元付業者に、売買契約の締結はできない旨を連絡した。元付業者も、その旨を了承した。
 しかしその後、当社は、依頼者が元付業者との間で媒介契約を締結し、元付業者の媒介によって売主と売買契約を締結したことを知った。売買契約の価額は売出し価額で締結し、依頼者が元付業者に支払った媒介報酬は、法定の上限額であることも分かった。
 なお、当社は、依頼者との間で文書による媒介契約の締結はしていない。

質 問

1.  当社は、依頼者と媒介契約書を書面で締結していないが、依頼者は、当社の媒介・紹介により購入の合意まで至った物件を売買契約した。契約書がなくても、そのことで、当社の媒介行為が成立しているとはいえないか。
2.  当社は、当社を排除して売買契約を締結した依頼者に対して、媒介報酬を請求することはできるか。
3.  当社は、売買契約から当社を排除した元付業者に、損害賠償を請求することはできるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 媒介業者と依頼者間で媒介契約書を締結していなくても、媒介契約が成立したといえる場合がある。
 質問2.について ― 媒介契約が成立していれば、媒介業者は、媒介業者を排除して売買契約を締結した依頼者に対して、媒介報酬相当額を請求する余地はある。
 質問3.について ― 媒介契約が成立していれば、売買契約から貴社を排除した元付業者に対して、不法行為を理由に損害賠償を請求することができる場合がある。
2.  理 由
⑵⑶について
 不動産仲介取引において、不動産の媒介業者と購入依頼者との間で媒介契約に関する書面を取り交わすことは、依頼者が媒介業者に物件の紹介を依頼したときはほぼなく、依頼者が物件の購入意思を決定した時点か、売買契約締結の直前になることがほとんどである。初回面談では、依頼者の購入しようとする物件の種類・内容や希望価額等をヒアリングする段階であり、媒介業者は紹介物件さえも固まっておらず、依頼者もまた、その媒介業者に媒介契約を依頼する意思さえまだ固まっていないためである。この時点では、媒介業者は、依頼者に物件を紹介することもあるが、それはいわば依頼者が申し出た条件に合わせた物件を紹介しているだけであり、それだけでは、依頼者の真に希望する物件の斡旋まで至ることは少ない。また、依頼者のほうも、複数の媒介業者を訪問することで、希望に合った物件の紹介を依頼し、それぞれの媒介業者が依頼に足るか否かの判断もしている。
 物件の紹介、現地案内、売主との条件・価格交渉、資金計画の確認、金融機関との事前打診等の種々の行為は、媒介契約に基づく、媒介業者による媒介行為ということができる。
 相談のケースでは、上記行為があり、貴社の仲立ちにより売主との売買契約の合意がなされたことを鑑みると、契約にいたるまでの貴社の役割は、媒介行為といえるものである。それにもかかわらず、依頼者は、媒介業者である貴社を排除し、元付業者の媒介によって売主との間で売買契約を締結した。
 よって、本来、依頼者は貴社を通じ売買契約を締結するところ、依頼者が故意に貴社の媒介を排除して元付業者の媒介により売買契約をしたことは、売買契約の機会を妨げるものであるので(民法第130条)、貴社は依頼者に対して、媒介報酬を請求することができる(【参照判例】参照)。
 また、元付業者は、貴社の媒介行為を知りながら、貴社を排除して売買契約を締結した。このことは、貴社の依頼者への媒介報酬請求権を侵害しており、かつ業界の信義則にも反するため、特段の事情がない限り、元付業者の行為は貴社に対する不法行為(同法第709条)にあたり、事実が立証されれば、損害賠償を負う場合がある。
 媒介業者は、売主から売却の依頼を受けたときは、遅滞なく媒介契約に関する書面を交付(宅地建物取引業法第34条の2)しなければならないとされているが、購入依頼者から購入の依頼を受けた場合でも、後日のトラブルを防止するためにも、早い段階で、媒介契約書を締結するべきである。
 ただし、報酬の額については、重説の作成や契約・引渡し事務を行っていないなどの点から、約定額の一部にとどまるものと考えられる。

参照条文

 民法第130条(条件の成就の妨害等)
   条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
   条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 商法第512条(報酬請求権)
   商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
 宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)
   宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
    ~七 (略)
  〜⑨ (略)

参照判例①

 横浜地裁平成18年2月1日 判タ1230号197頁(要旨)
 買主は、媒介業者(客付業者)の仲介活動によりまもなく売買契約が成立状態になったにもかかわらず、媒介業者を排除して元付業者(売主側媒介業者)の仲介により本件物件の売買契約を成立させたということができ、故意に媒介業者の仲介による本物件の成立を妨げたものであるから、民法130条により本件媒介契約上の報酬支払義務を負うというべきである。―(中略)―
 元付業者は、客付業者が買主と媒介契約を締結して本件物件の売買契約を仲介している事情を十分知り得たのに重大な過失により、本件売買契約の解消の事実を客付業者に確認することなく、買主と媒介契約を締結して自己の媒介により本件物件の売買契約を成立させた結果、客付業者の仲介を途中で挫折させ、客付業者の買主に対する仲介報酬請求権を侵害したというべきであり、元付業者の行為は、自由競争の範囲を大幅に逸脱し、取引上の信義則に著しく反するものであって、客付業者に対する不法行為を構成するというべきである。

参照判例②

 仙台高裁昭和48年1月24日 判時715号68頁(要旨)
 購入依頼者が、仲介業者に対して自己の希望する条件(場所、広さ、価格等)を示し、これに適合する物件の探知、紹介、調査、価格の折衝、契約の締結の仲介を依頼する場合における、依頼者の依頼の内容は、特定の物件を指示してなすものでなく、自己の希望条件を示し、これに適合する未だ特定されていない物件についての買受方斡旋であるから、特段の事情のないかぎり、依頼者がその希望条件を示してその買受方斡旋の依頼(これが申込となる。)をなし、これに対し業者が承諾を与えたときに仲介契約が成立する。

監修者のコメント

 仲介手数料(媒介報酬)は、依頼者と媒介業者との間に「媒介契約」が成立していなければ、請求できないのは当然である。そこで、問題となるのは、本ケースのように購入依頼(買いの媒介)の場合、どの時点で媒介契約が成立したとみるべきかである。かつては、少数説ではあるが、「購入物件が特定した時」という見解もあったが、それによると業者が物件の案内をする行為は、まだ媒介契約が成立していないので、あくまでも媒介契約の申込み誘引行為の一環だと見ざるを得ないが、それは当事者の意思に沿わない。媒介契約は、口頭の意思の合致により成立する「諾成契約」であるから、買いの媒介も依頼者が自分の希望する物件の条件を提示し、購入物件の探索を申し入れ、仲介業者がこれを承諾することにより成立すると解する見解が一般的である。したがって、この一般的見解によれば、相談業者の行った「物件の紹介」「物件の案内」「購入申込書の元付業者への送付」等の行為は、媒介契約上の義務の履行行為ということができる。この考え方が、当事者の意思に沿うものであると考えられる(【参照判例②】)。
 質問のケースは、買主が直接に売主と契約したわけではないので、いわゆる直接取引とは異なるが、自らが依頼した業者を排除して契約を締結したのであるから、回答のとおり、仲介報酬を請求することができる。ただ、注意しなければならないのは3%プラス6万円の金額を当然に請求できるのではない。この宅建業法で認められている最高限度額をもらうことの合意をしていない以上、契約の成立に寄与した割合に応じた額しか請求できない。
 結局、宅建業法で義務づけられている媒介に関する書面の交付をしていないと、このようなリスクを負わざるを得ないことになる。
 なお、本ケースの事実関係をみる限り、元付業者は客付業者の存在を当然知っており、やむを得なかった正当な理由を立証できない限り、不法行為が成立するであろう。

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