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2104-B-0287
境界線上の塀の越境とその説明をしなかった売主、媒介業者の責任

 当社は、確定測量図のある土地について、その図面をもとに実測売買方式で媒介をした。ところが、隣地との境界線上に隣地の所有者が所有するコンクリート塀が建てられていたため、買主への境界明示の段階になって、そのコンクリート塀の半分が本件の土地部分に越境していることが判明した。
 買主は、そのことについて事前に説明を受けていなかったため、コンクリート塀の敷地外への移設(移動)を主張しているが、隣地の所有者がその主張を受け入れなかった場合、買主は、コンクリート塀の越境を理由に、売買契約を解除することができるか。売主に対する違約金の請求についてはどうか。この場合の媒介業者の責任はどうなるか。

事実関係

 当社は、買主側の媒介業者として、既存の確定測量図をもとに、200㎡の土地を実測売買方式により媒介したが、買主に対する境界明示の段階になって、隣地のコンクリート塀の半分が本件の土地側に越境していることが判明した。
 なぜこのような事態になったのかを売主側の媒介業者に確認したところ、売主(宅建業者)が本件の土地を取得する際、すでに確定測量がなされていたために、現状有姿売買ということで、境界の問題を安易に考え、特に塀の越境について注意もせず、そのために越境の事実を売主側の媒介業者に伝えていなかったことが原因であることが判った。
 なお、本件のコンクリート塀が隣地の所有者の所有物であることについては、売主(宅建業者)が土地を取得した際の売買契約書に、隣地の所有者が家を建てた際に全額自分の費用で境界線上に建てたことが明記されている。そのため、その売買契約書には、「買主(今回の売主(宅建業者))は、その越境の事実を認め、現状のまま本件土地の引渡しを受けるものとする。」と定められており、土地の実測図面にも、そのコンクリート塀の中間に境界があることが界標によって示されている。


質 問

1.  買主は当社に対し、重要事項説明義務違反だと言っているが、そもそもの責任は売主(宅建業者)と売主側の媒介業者にあり、重要事項説明も、その説明書の作成もすべて売主側の媒介業者が行っているので、当社には重要事項説明義務違反はないと思うが、どうか。
2.  もし当社が買主に対し責任をとった場合には、当社は、売主や売主側の媒介業者に対し、その賠償額を求償することができると思うが、どうか。
3.  本件の買主は、コンクリート塀を隣地に移設(移動)するよう主張しているが、隣地所有者がその移設(移動)を承諾しなかった場合には、買主からの本件売買契約の解除は認められるか。
4.  本件の売買契約においては、売主は買主に対し、無瑕疵・無負担の所有権を移転することになっており、売主に契約違反があったときは、売主は買主に対し、損害賠償の予定額として所定の違約金(売買代金の20%相当額)を支払うことになっており、その請求は買主が売買契約を解除したうえで行うことになっている。ついては本件の場合も、買主からの違約金の請求は認められるか。
5.  本件の問題に対する両媒介業者の責任は、どうなるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 貴社には重要事項説明義務違反(注意義務違反)がある。
 質問2.について ― 当然にはできないが、応分の求償は可能と考えられる。
 質問3.について ― 損害賠償請求は認められるが、契約の解除までは認められないと解される。
 質問4.について ― 違約金の請求は認められないと解される。
 質問5.について ― 両媒介業者には、各自、売主が買主に支払うべき損害賠償額と同額の賠償責任があると解される(不真正連帯債務=後記【参照判例】参照)。
2.  理 由
について
 売主である宅建業者やそれを媒介する媒介業者には、不動産取引のプロとして、高度の注意義務が課せられており、特に本件のような既存の確定測量図による実測売買の場合には、そのコンクリート塀のどの部分に境界標(界標)があるのかを、その実測図と現地で確認し、それを契約の前に買主に説明しておく必要があったにもかかわらず、売主(業者)も媒介業者も、そのことに何ら注意もせずに、漫然と売買契約を締結し、結果として買主に不測の損害を与えることになった。したがって、売主(業者)も媒介業者もともに、買主の被った損害を賠償する義務がある。
 なお、本件の売主(業者)の責任と媒介業者の責任は不真正連帯債務の関係になるので、買主に対し、それぞれがその損害の全額について賠償義務を負うことになる(後記【参照判例】参照)。
について
 後記【参照判例】注書き参照。
について
 本件の売買においては、土地の面積200㎡に対し、コンクリート塀の越境部分の面積はせいぜい1~2㎡程度のものと考えられる。とすれば、その越境部分があるために買主が契約の目的を達することができないということは到底考えられないので、買主からの契約解除は認められないと解される(民法第541条ただし書き)。
について
 前記のとおり、債務不履行が軽微な場合、契約の解除ができないとされており、本件の売買契約においては、違約金の請求は売買契約を解除したうえで行うことになっているので、買主が売買契約を解除することができない以上、違約金の請求もすることができない。
について
 ⑴に同じ。

参照条文

 民法第225条(囲障の設置)
   2棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
   当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2メートルのものでなければならない。
 同法第226条(囲障の設置及び保存の費用)
   前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
 同法第227条(相隣者の1人による囲障の設置)
   相隣者の1人は、第225条第2項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
 同法第541条(催告による解除)
   当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
 同法第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
   前二条の規定(注:買主の追完請求権、代金減額請求権)は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。

参照判例

 大阪高判昭和58年7月19日(要旨)
 買主が、売主である宅地建物取引業者から媒介業者の媒介で土地を買い受けたところ、当該土地に建築規制が存在していたために購入目的である建物の建築ができなくなった事案において、判例は、建築規制の説明義務は土地売買に付随する売主としての当然の義務であり、買主は売主(業者)に対し説明義務の不履行を理由として売買契約を解除し、損害賠償を請求することができるとともに、媒介業者に対し重要事項説明義務違反による不法行為により損害賠償を請求することができるのであって、両者はいわゆる「不真正連帯債務(注)」の関係にあるとしている。
 (注) たとえば、友人同士2人が賃貸マンションを借りたとする。この場合、2人には共同賃借という主観的関連があるので、このような主観的関連のある債務(この場合、「賃料債務」など)を「連帯債務」という。これに対し、本件の判例のような場合には、売主の損害賠償債務と媒介業者の損害賠償債務は偶然に発生したものに過ぎず、両者の間には主観的関連がない。このような主観的関連のない債務を「不真正連帯債務」といい、この2人の間には連帯債務者間にはある「負担部分」というものがなく、それを前提とする「求償権」もないので(同法第442条第1項)、それぞれが債務の全額を負担する責任が生じ、そのうえで当事者間で負担割合を話し合うことになる。

監修者のコメント

 本ケースの買主が、売買契約を解除できるかという問題は、回答のとおり、できないと解される。ただ、ケースによっては、買主が契約締結に際して、境界あるいは境界上の構築物に特別の関心を示していたことが立証されたということがあり得、その場合は本ケースとは異なる結論になる可能性があるので、仲介に当たって注意されたい。
 損害賠償請求は可能であるが、本ケースでの具体的損害は特段の事情の立証がない限り、極めて少額に止まり、最大でも越境部分の面積に相当する売買代金額であると考えられる。
 なお、質問1に関して、たとえ売主側の媒介業者が重要事項説明書の作成と説明を行ったとしても、買主側の媒介業者が責任を免れるわけではない。買主と媒介契約を締結し、買主に不測の損害を被らせないようにする義務を第一次的に負っているのは、あくまでも買主側の媒介業者である。
 また、質問2の求償については、売主、両媒介業者の3者の過失割合によって負担額が決定されることになるが、本ケースでは、売主が買った際の売買契約書に越境の事実がそもそも明記されていたというのであり、売主と売主側媒介業者の責任は買主側媒介業者より、はるかに重いと考えられる。

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