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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2012-B-0284
媒介業者が登記書類を作成することの是非

 売買契約締結後、決済日前に売主は転居し住民票を移動していた。所有権移転をするには売主が住所変更登記をする必要がある。当社は売主から本人申請するための登記申請書の作成を依頼された。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。この度、一戸建ての売買の媒介をした。売主は、定年退職となり、いわゆるUターンで出身地に住み換える。残金決済時期が迫ってきたので、当社は売主に、決済時の所有権移転に必要な書類等の持参を依頼したところ、売主は既に引越しを終え、住民票も移動して新住所に転入届も提出していた。売買物件の所有権登記名義人の住所は旧住所になっており、売主に、旧住所の印鑑証明書の有無を確認したが、取得していなかった。
 売主が買主に所有権移転登記を行う際は、登記情報の住所と印鑑証明書の住所を一致させる必要があり、住所変更登記をするときは、新住所の住民票または戸籍の附票が必要になり、変更登記の登録免許税と司法書士の報酬等がかかる旨を話したところ、所有権移転登記にかかる費用は買主負担の条項はあるが、売主に費用負担があることを聞いていないと言い張っている。売主は、当社の説明により登録免許税は少額でありやむを得ないとしながらも、住み換え等で何かと物入りが多く、報酬の支払には難色を示している。
 当社は売主に、住所変更登記は登記所へ申請するが、共同申請の必要はなく司法書士に依頼しないで登記名義人が本人申請できることを示唆したところ、売主は、決済日前に残置物の片づけで現地に来る予定があり、その際に自分で申請をするので住所変更登記の申請書を当社に作成してほしいと依頼してきた。

質 問

 登記手続は、司法書士の独占業務として司法書士以外は代理人となることができないことは承知しているが、売主が本人申請する住所変更登記の申請書を当社が無償で作成してもよいか。

回 答

1.  結 論
 司法書士法の規定により、司法書士でない者が、他人の依頼を受けて、業として登記手続を代理すること、法務局に提出又は提供する書類を作成すること、及び相談に応じることを禁止している。違反行為者には、罰則が規定されている。
2.  理 由
 他人から依頼を受けて登記申請手続の代理や申請書類の作成を行うことは、司法書士の独占業務である。独占業務は、法令に基づき、ある業務に対して有資格者のみが行うことができる業務である。安全確保や専門知識・技術を要する医療行為や適正取引が要求される業務が該当する。「士業」と言われる一定の資格を要する弁護士、税理士、司法書士、行政書士等が行う業務である。資格がなければその業務を行うことができず、無資格者がその業務を行うと刑罰の対象となる。
 登記手続等の適正かつ円滑な実施が求められている司法書士業務は、司法書士法により厳格な規定が定められている。独占業務資格の中には、他人の依頼を有償(報酬を得て、あるいは報酬を得る目的)で無資格者が行うことを禁止している資格(弁護士法、公認会計士法等)と無償でも禁止されている資格(税理士法等)があるが、司法書士業務は無償で行うことも禁止されている(司法書士法第73条)。前者の有償で行うことが禁止されている業務は、言い換えれば報酬を得なければ違法になることはない。しかし、後者の税理士業務や司法書士業務は、報酬の有無にかかわらず、無資格者が業務を行えば犯罪になる(同法第78条)。
 ただし、法に抵触するのは、他人の依頼を受けて、「業(務)として」行う場合であり、業務とは、反復継続、または反復継続の意思を持って行うことである。そもそも、自らが登記申請等を行うことは可能であり、親の代わりに子が、家族や知人に代理して無償で登記申請等をすることは業に該当せず、法に抵触することはないが、第三者が代理で登記申請等の行為をすることは、実際に継続反復しなくても、業に該当する可能性が高いと解されている。
 不動産売買では、登記名義人である売主の住所が購入時の前住所であったり、契約時に既に他所に住所移転をして、登記上の住所が現住所と異なることがある。登記権利者(買主)に所有権移転登記する場合、登記義務者(売主)の印鑑とその印鑑証明書を要する。印鑑証明書は現住所地の市町村により交付されるが、登記上の住所と印鑑証明書の住所の一致が必要である。登記上の住所が異なる住所地の印鑑証明の添付は、同一人物ではないとして所有権移転登記申請は却下されてしまう(不動産登記法第25条第7号)。そのため、現住所の印鑑証明書の住所と登記上の住所を一致させる必要があり、一致させるには、登記上の住所を現住所に変更登記しなければならない。住所変更登記は権利に関する登記の一つとして、本人申請が可能であり、本人が申請する場合の必要書類は登記申請書と住所変更原因証書(住民票または戸籍の附票)で足り、印鑑、印鑑証明書は不要である(同法第59条第4号、同法第64条第1項、不動産登記規則第47条第3号イ(1))。
 相談ケースの売買契約を媒介した宅建業者が、住所変更登記申請書の作成をして、申請人である売主に提供することは、司法書士でない者が、登記手続の代理(司法書士法第3条第1号)、司法書士業務に係る相談に応ずること(同法同条第5号)に加え、登記申請書の作成(同法同条第2号)も司法書士法で禁止している。司法書士でない者が無報酬で登記申請書類を作成して違反を認定した裁判例(【参照判例①】参照)、司法書士でない者が有償で代理人として登記申請手続をし、職業選択の自由(憲法第22条)を争った裁判例では司法書士法に憲法違反はなく司法書士法違反が認定されたものがある(【参照判例②】参照)。
 媒介業者は、登記申請書の作成が可能でも、安易に顧客の要求に応えるのではなく、申請者自らが法務局に作成方法を確認するようにさせたり、インターネットで申請書雛形がダウンロードできる等の誘導を図るべきで、同法に禁止されている作成や相談に応じるべきでない。

参照条文

 憲法第22条
   何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
   (略)
 司法書士法第3条(業務)
   司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
     登記又は供託に関する手続について代理すること。
     法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第4号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
    ・四 (略)
     前各号の事務について相談に応ずること。
    ~八 (略)
  ~⑧ (略)
 同法第73条(非司法書士等の取締り)
   司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
  ~⑤ (略)
 同法第78条(罰則)
   第73条第1項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
   (略)
 不動産登記法第25条(申請の却下)
     登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
    ~六 (略)
     申請情報の内容である登記義務者(中略)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。
    ~十三 (略)
 同法第59条(権利に関する登記の登記事項)
     権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
    ~三 (略)
     登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
    ~八 (略)
 同法第64条(登記名義人の氏名等の変更の登記又は更正の登記等)
   登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。
   (略)
 不動産登記令第16条(申請情報を記載した書面への記名押印等)
   申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
   前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(中略)を添付しなければならない。
   前項の印鑑に関する証明書は、作成後3月以内のものでなければならない。
  ・⑤ (略)
 不動産登記規則第47条(申請書に記名押印を要しない場合)
     令第16条第1項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
     委任による代理人が申請書に署名した場合
     申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
     申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)
       所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの
         当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)
        ~⑹
      ~ホ (略)

参照判例①

 最高裁昭和39年12月11日 判時399号56頁(要旨)
 司法書士でない者が継続反覆の意思をもって司法書士法第1条第1項(現行、同法第3条第1項)所定の書類を作成するときは、報酬を得る目的の有無にかかわりなく同条に規定する司法書士の業務を行ったものというべきである。

参照判例②

 最高裁平成12年2月8日 判タ1027号89頁(要旨)
 司法書士法の各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法第22条第1項に違反するものでない。(中略)
 行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法第19条第1項(現行、同法第73条第1項)に違反するとした原判断は、正当である。

監修者のコメント

 「業として」というのは、回答にもあるとおり、反復継続して、又はその意思をもって行う行為である。したがって、本相談ケースにおいて、宅建業者が媒介の依頼者から、たまたま頼まれて申請書の作成をしてやることがこれに当たるか、という問題があるが、やはり、宅建業務の遂行上、これを行うことは、「業として」に該当することと考えた方が無難である。グレーゾーンにある問題は、安全圏の解釈をして仕事を進めることが望ましい。
 なお、無資格者でも無償であればよいものと、有償・無償問わずダメなものがあるので、しっかり峻別して理解しておく必要がある。

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