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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2010-R-0225
賃借人が退去し、賃借人の同居家族が独立して賃貸建物に住み続けるときは、賃貸人は契約を解除することができるか。

 当社が管理している居住用建物の賃借人が不動産を購入して引っ越した。引越後は、以前から同居していた賃借人の長男夫婦が、引続き住み続けているが、賃借人の無断転貸になるのか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者兼管理業者である。管理している一戸建ての賃貸人から、賃貸借契約の解除と賃借人の明渡しの相談があった。賃借人は、賃借して約10年になるが、賃借人である父親と妻、長男との3人で居住していた。長男は、6年前に地方の大学へ入学したので別居していたが、卒業と同時に戻り両親と同居している。その後、長男は、地元企業に就職し、結婚して賃借人と同居を続けていたが、最近、賃借人である親夫婦は、近隣にマンションを購入して賃借建物から移り住んでいる。現在は、長男夫婦が親が賃借している一戸建てに住んでいるが、賃料は、賃借人である父親名義で賃貸人に支払われている。

質 問

1.  賃借人の親族家族のみが居住している場合、賃借人が賃料を支払っていても転貸といえるのか。
2.  賃貸人は、賃借人が転居し、独立した親族を住まわせている行為が賃借人の無断転貸に該当するとして賃貸借契約の解除ができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃料を賃借人が支払っているか否かにかかわらず、賃借人が転居し、同一家計内の親族であった者が独立して賃借建物を使用収益するときは、転貸に該当すると解されている。
 質問2.について ― 賃借人の転貸が賃貸人に対する背信的行為とはいえないというような特段の事情がなければ、独立した親族のみの居住は無断転貸に該当し、賃貸人は契約解除をすることができる。
2.  理 由
⑵について
 賃貸人から建物を賃借した賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、その賃借権を譲渡、または賃借物を転貸することができない(民法第612条第1項)。賃貸人に無断で賃借人が建物を賃貸(転貸)することを禁止している。賃借人が賃貸人に無断で転貸したときは、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる(同法第612条第2項)。しかしながら、賃借人の行為が、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合においては、民法第612条第2項の解除権は発生しないと解されており(【参照判例①】参照)、賃借人の転貸を理由とする契約解除には、賃借人の背信行為の有無が判断されることになる。
 建物の賃貸借において、定年退職した親に代わり、賃料を同居の子が支払う場合や、離婚した妻が離婚後の居住を続け、転居した契約者であった夫に代わり、賃料を支払うなどしていた場合は、転貸している要素があるが、信頼関係の破壊に至るほどの背信的行為とはいいがたく、解除することはできないであろう。また、契約が個人で事業用に使用していたが、法人成りした場合は、建物の形式的な使用者が替わっているとはいえ、転貸されているとも判断できるが、実質的な使用者は変わっていないため、特段の事情があるといえよう。特段の事情の有無があるか否かに関しては、賃貸借の使用収益目的、利用状況、転貸するに至った事情等、諸事情が総合判断されることになる。
 相談ケースの場合、従来賃借人の同一家計内にあった長男は、大学卒業後、実家に戻り結婚して賃借人と同居を始めたが、同居期間中は、賃料の一部を負担していたとしても、あくまで賃借人である父親と同居であり、転貸とはいえないことは明らかである。しかし、賃借人が、賃借建物から自己が購入した建物へ転居し、長男夫婦のみが居住することは、たとえ賃料を父親が支払っているとしても、家計を別にしている長男が使用収益していれば、第三者に賃借物を独立して使用収益させたものとして、賃借物の転貸に該当すると解されている(【参照判例②】参照)。したがって、賃貸人は賃借人に対して、契約解除および建物の明渡しを請求することが可能である。ただし、賃貸人が、実際的に長男夫婦のみ独立して居住していることを認識しながら、長期の間、放置していたような場合は、賃借人の第三者への転貸を黙示的に承諾したとされ、契約解除は信義則に反し、契約解除ができない場合がある(同法第1条第2項)。
 管理業者または媒介業者は、賃借人が転居し、家族が占有者となることを知ったときは、すみやかに賃借人は賃貸人に転貸の承諾を得るか、賃貸人と占有者を賃借人とする新規の賃貸借契約を締結することを助言すべきであろう。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
  (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
  (略)
 民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
   賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
   賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

参照判例①

 最高裁昭和28年9月25日 判タ34号45頁(要旨)
 元来民法第612条は、賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人は賃貸人の承諾がなければ第三者に賃借権を譲渡し又は転貸することを得ないものとすると同時に、賃借人がもし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益をなさしめたときは、賃貸借関係を継続するに堪えない背信的行為があったものとして、賃貸人において一方的に賃貸借関係を終止せしめ得ることを規定したものと解すべきである。したがって、賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益をなさしめた場合においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合においては、同条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。

参照判例②

 東京地裁昭和42年4月24日 判時488号67頁(要旨)
 民法第612条にいわゆる転貸とは、賃借人が第三者をして賃借物の使用収益をなさしめる契約をなすことをいうのであるが、右の第三者とは、賃借物の全部または一部につき独立して使用収益をなしうる地位を取得すべき者を指称する。したがって、建物の賃貸借契約においては、賃借人と同一家計内の親族等が賃貸建物に居住することは、賃借人の賃借権の範囲内に属することがらであって右親族等が賃借物につき独立して使用収益をなしているものではないから、賃借人が右の親族等を賃借建物に居住させることを賃借物の無断転貸ということはできない。しかしながら、賃借人が賃借建物から他に転居し、その結果、従来賃借人の同一家計内の親族等として賃借建物に居住してきた者が、右建物につき独立して使用収益をなしうるに至ったときは、賃借人が賃借建物から退去した行為は、第三者に賃借物を独立して使用収益させたものとして、賃借物の転貸に該当する。

監修者のコメント

 建物賃貸借において賃借人として最も重要な義務である賃料支払義務を負うのは、賃借人本人であって、たとえ親族であっても同居の者ではない。したがって、実質的に賃借人が変更となるような行為は、親族間であっても賃借権の譲渡ないしは転貸に当たる。
 したがって、解除が認められないためには、あとは回答にある「賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情」の検討が残されるのみである。

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