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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2008-R-0222
入居時の鍵交換費用を賃借人の負担とすることの是非。

 入居時の鍵交換費用は賃借人が負担する条件で賃貸借契約を締結したにもかかわらず、賃借人は、交換費用は賃貸人が負担すべきものであると主張し、費用返還を求めている。

事実関係

 当社は、東京都で営業している賃貸の媒介業者兼管理業者である。賃貸マンションの賃貸人から空室1戸の入居者の募集依頼を受け、ネット広告に掲載、広告を見た入居希望者で成約となり、賃貸借契約が締結された。賃貸人の要望により、賃借人の入居時に賃借人負担で鍵を取替えることが条件であった。当社は、広告に鍵交換費用は賃借人の負担である旨と負担金額を記載して募集した。当社は、契約締結の際、重要事項説明書に入居時までに賃貸人が鍵を交換し、費用は賃借人の負担とすること及び負担金額を記載して賃借人に説明した。また、賃貸借契約書の特約及び東京都ルールである賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書の賃借人の負担内容にも記載して説明した。賃借人は、契約時に特段に異を唱えず、契約金の一部として交換費用を含めて賃貸人に支払った。なお、鍵の交換は、契約締結後に管理業者でもある当社が行い、賃貸人から鍵交換に要した費用を当社が受領した。賃借人の負担額は、交換するシリンダー本体と鍵2本の仕入れ実費に、取り付け費用を上乗せした金額である。
 入居して数日後、賃借人から当社に対して、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を確認したとして、鍵交換の費用負担は、退去時の原状回復費用の一部であり、賃借人が負担するのは、鍵の紛失や賃借人の故意・過失で使用できなくなった場合であり、交換費用は賃貸人負担とするのが通常である。また、賃借人が支払った交換費用は法外でもあり、賃借人の費用負担とする特約は、消費者契約法上の消費者に不利な特約として無効であると主張し費用の返還を求めている。

質 問

1.  賃借人が入居するときに、賃貸人が鍵を交換する場合、交換費用を賃借人の負担とすることはできないのか。
2.  鍵交換費用を実費に取付費用を上乗せした金額を賃借人負担とすることは消費者契約法に抵触するか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 賃借人が、鍵交換費用を負担する旨の特約が明確に合意されていれば、賃借人の負担とすることができると解する。
 質問2.について ― 鍵交換費用の金額が相応の範囲であれば、賃借人にとって一方的に不利なものとはいえず、消費者契約法に反することはない。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約を締結する際に、特約として賃借人に様々な条件を課す場合がある。賃借人の入居時に鍵交換費用を賃借人の負担とする特約も散見される。玄関ドアの鍵は建物を構成する建物設備の一部であり、賃貸人が賃貸物を賃借人に使用収益させるためには、賃貸人には、鍵等に不具合があれば修繕をする義務があり(民法第606条第1項)、鍵を交換する場合も、原則は賃貸人が負担すべきものである。しかし、前賃借人が退去した後、賃貸人に鍵を返還し、その鍵を新賃借人が使用するには不安が拭えない。前賃借人が、複製の鍵を所持している可能性がないとはいえず、その鍵を使用して侵入することが可能であり、新賃借人及び賃貸人に防犯上の懸念が少なからず残る。
 賃貸人は、新賃借人に従前の鍵を使用させることもできるが、賃借人の安全・安心のために、賃借人に交換費用の負担を求める賃貸人の気持ちも理解できる。ただし、賃借人に賃料や共益費以外の費用を負担させるためには、賃借人の明確な合意が必要である。裁判例では、「①宣伝用チラシには、鍵交換代が必要であることが記載され②媒介業者が、重要事項説明書を読み上げて説明し、入居時に鍵を交換する費用が必要である旨を口頭でも説明しており③賃借人は、媒介業者に対し、賃貸借契約の契約金として、鍵交換費用を含む金額を支払っていることにより、鍵交換費用負担特約は合意が成立している」とし、特約は、明確な合意があり、賃借人の要素の錯誤も否定している。
 また、「前借主の鍵を利用した侵入を防止できるなど、賃借人の防犯に資するものであること、鍵交換費用と鍵のシリンダー費用との差額は媒介業者が鍵交換作業の技術料として取得したものであって、賃貸人が取得したものではないこと、その金額も鍵交換費用として相応な範囲のものであることを考慮すれば、賃借人の主張の事実があることをもって、賃借人にとって一方的に不利益なものであるということはできない」と、鍵交換費用を賃借人に負担させる特約は、消費者の利益を一方的に害するものではなく、有効であり(消費者契約法第10条)、鍵交換費用の本体と取り付け費用の受取人は、媒介業者であり、賃貸人の不当利得(民法第703条)も否定している。
 そして、国土交通省が公表している原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを基本に作成された東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(東京都ルール)の中に鍵交換費用は、賃貸人の負担とあるのは、「契約終了時の原状回復に関する紛争解決の指針を示すものであり、入居時の鍵交換費用の負担は、本件ガイドラインの対象外であり、媒介業者は、入居時に鍵を交換する費用は、賃借人の負担となることを説明しているのであるから、本件ガイドラインとの関係について説明しなかったとしても、賃借人の不利益となることを告げなかったということはできない」として、ガイドラインの鍵の交換費用は賃貸人負担であることを説明しなかったとしても、消費者契約法の不利な特約に該当する違反行為はない(消費者契約法第4条第2項)と解している(【参照判例】参照)。
 近年、賃借人の防犯意識も高まり、オートロック付の賃貸マンションの入居を希望する賃借人が増加しているのも頷けよう。アパート等でも前賃借人の使用していた鍵の使用を忌避する賃借人の傾向もあり、入居前に鍵の交換費用を賃借人に負担させる場合は、十分な説明と賃借人の明確な合意が必要であることを媒介業者は念頭に置きたい。

参照条文

 民法第606条(賃貸物の修繕等)
   賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
   (略)
 同法第703条(不当利得の返還義務)
   法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
 消費者契約法第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
   (略)
   消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
  〜⑥ (略)
 同法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 東京都『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』
退去時の復旧
  soudan202008

参照判例

 東京地裁平成21年9月18日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件貸室の宣伝用チラシには、鍵交換代として1万2,600円が必要であることが記載されていること、本件賃貸借契約の重要事項説明書には、契約に要する費用の内訳として「鍵交換 1万2,600円」が記載されていること、媒介業者の従業員は、本件賃貸借契約締結の際、賃借人に対し、上記重要事項説明書を読み上げて説明し、入居時に鍵を交換する費用として1万2,600円が必要である旨を口頭でも説明したこと、賃借人は、同日、媒介業者に対し、本件賃貸借契約の契約金として、鍵交換費用を含む金額を支払ったことが認められる。
 これらの事実によれば、本件賃貸借契約締結において、入居前に本件貸室の鍵の交換が行われ、賃借人は、その費用1万2,600円を負担する旨の特約が明確に合意されているものということができ、また、賃借人において鍵交換費用負担特約に関して要素の錯誤があったと認めるに足りる証拠もないから、本件賃貸借契約において鍵交換費用負担特約の合意が成立しているというべきである。(中略)
 賃借人は、鍵交換費用は、本来、賃貸人の負担に帰すべきこと、鍵交換費用負担特約における費用は、交換した鍵のシリンダーの費用に比して過大であることから、鍵交換費用負担特約は、賃借人にとって一方的に不利益であると主張する。
 なるほど、東京都が本件ガイドラインに関連して策定したガイドラインには、退去時の鍵の交換費用は賃貸人の負担とするのが妥当である旨の記載があること、鍵交換費用負担特約において賃借人が負担するものとされた費用が1万2,600円であるのに対し、媒介業者が交換した鍵のシリンダーの代金は3,675円であることが認められ、これらの事実は、賃借人の主張に一応沿う事実であるということができる。
 しかしながら、本件賃貸借契約において鍵交換費用負担特約は明確に合意されていること、賃借人が入居する際に、本件貸室の鍵を交換することは、前借主の鍵を利用した侵入を防止できるなど、賃借人の防犯に資するものであること、鍵交換費用と鍵のシリンダー費用との差額8,925円は媒介業者が鍵交換作業の技術料として取得したものであって、賃貸人が取得したものではないこと、その金額も1万2,600円であって、鍵交換費用として相応な範囲のものであることを考慮すれば、賃借人の主張に沿う上記事実があることをもって、賃借人にとって一方的に不利益なものであるということはできない。(中略)
 賃借人は、賃貸人が賃借人からの質問に応じ、鍵交換費用負担特約について、本件ガイドラインに沿った内容であると回答し、又は本件ガイドラインに沿ったものでないことを故意に説明しなかったから、賃貸人が賃借人に対し、鍵交換費用負担特約に関して賃借人の利益となる旨を告げ、又は不利益となることを告げなかったと主張する。
 しかしながら、本件賃貸借契約締結の際に、鍵交換費用については、媒介業者から、本件ガイドラインに沿っているか否かという説明はなかったことが認められ、他に、賃貸人が、鍵交換費用負担特約について、本件ガイドラインに沿った内容と説明したことを認めるに足りる証拠はない。
 また、本件ガイドラインは、契約終了時の原状回復に関する紛争解決の指針を示すものであり、入居時の鍵交換費用の負担は、本件ガイドラインの対象外であるところ、媒介業者の従業員は、入居時に鍵を交換する費用は、賃借人の負担となることを説明しているのであるから、本件ガイドラインとの関係について説明しなかったとしても、賃借人の不利益となることを告げなかったということはできない。
 注)『本件ガイドライン』は、国土交通省住宅局が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をいう。

監修者のコメント

 賃貸借契約でも他の類型の契約でも、当事者が合意した契約条件は、強行規定に反したり、信義則違反や権利の濫用などの一般条項に反しない限り、有効である。鍵の交換費用の賃借人負担は、強行規定に反するものではなく、また信義則等の一般条項に反するものではない。ダマされたとか、説明がなかったため誤解していたという場合は別として、契約条件となっていることを認めた者が後になって、それは無効であると主張することはできない。契約は守らなければならない。

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