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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2008-R-0221
建物構造の記載ミスは賃料の減額要素となり得るか。

 当社は宅建業者であり、所有建物の賃貸業も営んでいる。賃借人と自社所有の建物の賃貸借契約を締結をしたが、契約書の建物構造に記入ミスがあり、賃借人から賃料の減額または損害賠償を要求されている。

事実関係

 当社は宅建業者であり、当社が所有している建物を賃貸する賃貸業も行っている。賃貸物件を探していた独身の会社員に当社所有の賃貸物件を紹介した。賃借条件は、駅から近いワンルームマンションで、賃料は共益費を含めて8万円以内であった。当社は、条件に沿った当社所有物件や媒介物件を複数紹介し、賃借人が気に入った3物件を現地案内した。案内した物件の中から媒介報酬も不要である当社所有の3階建ワンルームマンションの2階所在の角部屋を気に入り賃貸借契約を締結した。入居して1か月後、賃借人から、契約書に記載されている建物の構造が、実際の構造と異なっていると指摘があり、騒音と振動に悩まされていると苦情があった。
 当社は、契約書類を確認したところ、営業担当者が記載ミスをしたことが判明した。登記記録の構造は鉄骨造であったが、契約書には鉄筋コンクリート造と記載してしまった。当社は、賃借人に対して、広告の表示は鉄骨造としていたにもかかわらず、担当者の思い違いで記載ミスをしたことを謝罪した。しかし、賃借人は、賃貸人である当社に対し、構造の違いは騒音や振動の遮蔽性に影響し、鉄骨造は鉄筋コンクリート造に比べ性能が劣り、居住を継続している間は騒音や振動に悩まされると言い立て、建物構造の相違は、賃料に反映するのが当然であると主張し、賃料の値下げを要求してきた。値下げに応じないのであれば損害賠償の請求も辞さないという態度である。

質 問

 賃貸借契約書に当社の記載ミスにより建物性能が異なる建物構造を記載したところ、実際は別の構造であった場合、賃借人は、賃料の値下げを要求することができるか。

回 答

1.  結 論
 賃貸借における賃料は、さまざまな要素により賃料が決定され、賃借人の建物構造についての特別の要望がないかぎり、建物構造が説明と実際が異なっていても賃料の減額請求はできないと解される。
2.  理 由
 賃貸借に供される建物の種類は多岐にわたる。アパート、マンション、一戸建、ビル(事務所、店舗等)、工場、倉庫、寮等の種類があり、賃貸借する形態も、区分された一室、1フロアー、一棟等の規模や面積、そして賃借人の使用収益する目的により、居住用、事業用、借上げ社宅等の利用方法も広範である。一般的に賃料の設定は、賃借物件の用途の種類により、築年数、構造、所在階数、駅や主要道路からの距離や交通の便、周辺環境、地域内の需給関係等、さまざまな要素を勘案して決定される。通常、種類、規模、築年数、立地等が同種であれば、地域内の建物賃料相場は同水準となることが多いが、同じような種類・規模であっても新築と既存、上階と下階、建物グレード、付帯サービスや管理状況、募集時期等により賃料に格差が生じる。賃料の差異は、さまざまな要素が複合的に勘案されて決定される。また、賃借人の希望賃料に賃貸人が譲歩し、募集賃料を引下げて契約に至るケースも多く、賃貸人と賃借人間の合意があれば賃料は自由に設定することができる。当事者間で賃料の合意ができなければ、契約には至らないことになる。
 では、相談ケースのような建物構造の違いによる賃料の差異はどのように考えたらよいのであろうか。裁判例では、「ワンルームマンションの場合、駅からの距離、築年数、階数、造作の経過年数、道路との位置関係、周辺環境等の様々な要素により賃料の高低があることは公知の事実」としたうえで、「建物が鉄筋コンクリート造りか鉄骨造りかということはそのなかの比較的重要性の低い一要素に過ぎない」建物構造は賃料を決定する要素においての重要性は低く、「賃料の減額を招来する程度に重要なものとは認められない」としている。諸要素により賃料は決定され、建物構造も決定要素の一部を構成していることは確かであるが、たとえ契約書記載と実際の構造が異なっていたとしても、賃料を減額するほどの影響があるとは言えないと解されている。(【参照判例】参照)
 しかしながら、騒音や振動の遮蔽性が劣る等、構造の説明の違いにより、居住性が明らかに劣等な状態で、賃借人が受忍限度を超える騒音や振動により健康被害等を受けるときは、通常の使用収益に適するとはいえず、賃貸人の債務不履行責任が生ずる場合がある。
 なお、登記情報に記載された建物は全体の構造が記載されており、宅建業者が賃貸人として、または媒介をするときは、重要事項説明書及び賃貸借契約書にそのまま転記するのではなく、賃借する部分の建物構造を確認し、実際の構造を記載する必要がある。宅建業者が、契約書や重要事項説明書に事実と異なる記載をした場合は、宅建業者の調査・説明義務違反となることは否めず、契約関係書類を作成するときには細心の注意が必要である。

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

参照判例

 東京地裁平成21年3月13日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件建物が鉄骨造りであって、騒音、振動の遮蔽能力が、鉄筋コンクリート造りよりも劣るものであったとしても、本件建物の賃貸借契約の賃料が、不相当に高額であるとは考えられない。本件建物のようないわゆるワンルームマンションの場合、駅からの距離、築年数、階数、造作の経過年数、道路との位置関係、周辺環境等の様々な要素により賃料の高低があることは公知の事実であり、建物が鉄筋コンクリート造りか鉄骨造りかということはそのなかの比較的重要性の低い一要素に過ぎない。(中略)本件の場合、契約書上に「鉄筋コンクリート造り」と表示していたことから、その点に賃借人に錯誤があるとしても、その錯誤は客観的には本件建物の賃貸借契約上、契約の一部無効を生じて、賃料の減額を招来する程度に重要なものとは認められない。

監修者のコメント

 重説で建物の構造を誤って記載したというのは、極めて初歩的なミスであり、業法35条違反であることは間違いない。回答ないし参照判例のとおり、賃料減額請求は認められないとしても、もしその賃借人が固執して裁判になった場合、3万円や5万円くらいの慰謝料(精神的損害)が認められる可能性がないではない。重要事項説明書は一人の担当者が作成し、それで完結ではなく、それを他の者がチェックするなど、複数人が関与するような体制を取るべきである。

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