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2006-R-0218
建物賃貸借契約における短期明渡しの場合の原状回復費用の負担

 当社が媒介したアパートの借主から、入居2か月後にアパートを明け渡すと言ってきたので、当社は借主に対し約定の原状回復費用の全額を敷金から差し引く旨を伝えたところ、明渡し完了後になって、原状回復費用の全額借主負担は不当であるから全額返還せよとの連絡をしてきた。このような場合、媒介・管理業者としてどのように考え、どのように対応したらよいか。

事実関係

 当社はこの3月にアパートの賃貸借の媒介をしたが、入居間もなく、借主から5月末日までに建物を明け渡すという連絡を受けた。そこで当社は、約定により原状回復費用としてハウスクリーニング代のほか、畳の表替えと襖の張り替え代のそれぞれ全額を敷金から差し引く旨の通知をした。
 ところが、建物の明渡し完了後借主から、原状回復費用の全額借主負担は不当であるから、その全額を借主に返還せよと言ってきた。

質 問

 このような場合、媒介・管理業者としてどのように考え、どのように対応したらよいか。

回 答

1.  結 論
 借主の入居期間が短いことから、部屋の使用状況を確認したうえで、専門のクリーニング業者等を使ってまでハウスクリーニング等を行う必要がないと判断された場合には、その使用状況に応じ、その費用を折半するなり、応分の負担をしてもらうということで対応するのが適当であろう。
2.  理 由
 原状回復のための費用負担については、一般に特約があれば、その特約が優先するといわれているが、それはあくまでもその特約が真に当事者の合意として明確に定められており、しかもその内容としての原状回復すべき部位やそのための費用の額が、社会通念上妥当と解される場合の話であって、そうでなければ、その特約はその妥当と解される部分を超える部分については無効と解されることになり得るからである(消費者契約法第10条、民法第1条第2項)。
 そのように考えると、本件の場合は、その特約が仮に真に当事者の合意として明確に定められていたとしても、その具体的な原状回復すべき部位とその費用の額については、借主がたった2か月間しか入居していなかったという事実からすると、その約定額の全額をそのまま借主に負担させるのは、たとえば部屋をかなり汚していたとか、キズを付けていたというような特段の事情がない限り、妥当とはいえないので、ひとつの考え方として、結論で述べたような方法でその費用を分担し合うというのが適当と考えられるからである。
 なお、そのように考えるもう1つの理由としては、それらのハウスクリーニング等の原状回復工事は、主に次の入居者を確保するためのものと考えられることから、そのためにも貸主に応分の負担をしてもらうことが、特に本件のような短期間の使用の場合には妥当と考えられるからである。

参照条文

 民法第621条(賃借人の原状回復義務)
   賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 民法第1条(基本原則)
   (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
   権利の濫用は、これを許さない。

監修者のコメント

 入居期間の長短にかかわらず、原状回復費用の負担者を借主とする特約は原則的には有効であるが、それが有効であるためには、「原状回復の費用は…」とか「原状に復する費用は…」借主の負担というような、一般的、抽象的なものでは借主の故意、過失による汚損、損傷のものしか負担させられないことに注意されたい。単にそのような表現をしている場合は、通常損耗、自然損耗、経年変化のものは借主に負担させられない。「原状回復」という概念は、借主の故意又は過失によるものだけを対象としているからである。
 では、そのような一般的、抽象的な表現でなく、「襖、畳の張り替え費用、ハウスクリーニング費用は、通常損耗か否かにかかわらず借主の負担とする」旨の特約の有効性は、個人が居住用建物を借りる場合に適用される消費者契約法第10条との関係で争われているが、まだその条文との関係の最高裁判例はない。
 なお、本ケースのような短期間の退去の場合、まれに、その見積り額を返還すべき敷金から控除しながら、実際には行わないことがあるが、貸主が最初からそのつもりであるときは、貸主は詐欺利得罪(刑法246条2項)に該当し、宅建業者がそれを知りながら清算業務を行ったときは、その幇助犯(同法66条)になる。

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