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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2006-B-0276
ベランダに隣地から張り出している庭木の枝を切ってもよいか。

 3年前に既存戸建を購入した買主が、隣地の樹木が成長し、その枝が2階のベランダや1階屋根の雨樋に張り出し、このままでは落葉や虫の被害があるのではないかと心配している。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。3年前に既存戸建てを購入した買主から相談があった。買主は、購入時からわかっていたが、敷地に隣家の樹木の枝が越境している。当時は気にならなかったが、最近、樹木の生長によりさらに枝が伸び、2階のベランダにかかるようになってきた。ベランダに面した居間から外を見るのに鬱陶しいと感じるようになった。買主の住む地域は、古くからの住宅地で、隣家は庭が広く、樹木が生い茂っている。
 今のところ枝がベランダにわずかにかかっている程度であるが、1階の屋根にもかかっており、秋になって落葉が軒樋や排水の縦樋を詰まらせるのではないかと心配している。さらに枝が伸びると樹木についた虫がベランダに落ち、建物内に侵入してくることも考えられるので買主は何とかしたいと思っている。また、買主の敷地には枝がかかっているだけであるが、隣家の樹木の根が買主の敷地に伸びてくることも予想される。

質 問

1.  買主の敷地に、隣地の樹木が越境している枝や根を、買主が切るなどして除去してもよいか。
2.  買主が除去できないとすればどのような方法で除去することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 越境している隣地の樹木の根は、隣地所有者の同意を得ずに敷地所有者が除去することができるが、枝は勝手に除去することはできない。
 質問2.について ― 樹木の所有者に対して、越境している枝の除去を請求することができる。ただし、除去の請求は、枝が張り出ていることにより損害が生じているか、生じる恐れがある場合に限られる。
2.  理 由
⑵について
 日本の戸建の敷地は必ずしも広いとはいえない。郊外部の分譲地や都市部では、敷地を効率的に利用して建物を建築しており、建物の距離が隣地境界から近く、しばしば越境によるトラブルが生じている。自己の敷地に庭木を植えることは所有者の自由であり、植栽することに問題はない。しかし、樹木は成長するものであり、枝が伸び、夏には葉が生い茂り、秋には落葉となり近隣トラブルが生じやすい。相談ケースのように伸びた枝が隣地に越境するだけでなく隣家のベランダや屋根等にかかり被害を及ぼしていることがしばしば見受けられる。
 越境している樹木の扱いについては、民法の相隣関係に規定されている。枝については、越境している樹木の所有者に対して、その越境している枝を切除させることができる(民法第233条第1項)。越境されている者は、枝の切除を請求できるのであって、所有者の許可を得ずに勝手に切除することはできない。また、地中から越境している根については、所有者の許可なく越境している根を切り取ることができる(同法第233条第2項)。越境している樹木の部分によって、切除できるか否かの扱いが異なっている。
 枝の切除を請求することができるのは、越境されている者が、越境している枝により実際に被害を蒙っているか、蒙るおそれがあるときに限られる。越境樹木の切除を請求した裁判で、「越境樹枝により何等の被害も蒙っていないか、あるいは蒙っていてもそれが極めて僅少であるにも拘らずその剪除を請求したり、又はその剪除によって、被害者が回復する利益が僅少なのに対比して樹木所有者が受ける損害が不当に大きすぎる場合には、いわゆる権利濫用(民法第1条第3項)としてその効力を生じない」と解したものがある。これは、不動産を自由に利用・収益できる所有権(同法第206条)を基礎に、「各所有権の内容を制限し、また各所有者に協力義務を課する等その権利関係相互に調節を加えている同法の相隣関係規定の趣旨に照らし、当事者双方の具体的利害を充分に較量」して判断するとしている(【参照判例①】参照)。
 また、越境している樹木の枝等が、隣家に被害を及ぼしている場合、枝の切除だけでなく、「家屋の2階屋根や車庫の屋根の雨樋を詰まらせている木の葉や実が、本件樹木に由来するものであることは明らかであり、これにより上記雨樋の使用に支障を来していることもまた明らかであるから、当該土地所有者は、隣地所有地者に対し、所有権に基づく妨害排除請求権に基づき、上記木の葉や実の撤去(清掃)を求めることができる」と葉や実の撤去の請求を認めている(【参照判例②】参照)。撤去に要する費用負担は、当然、越境している樹木の所有者である。
 損害の発生があるときに、越境されている者が樹木所有者に対して、枝の除去や葉や実の撤去を求めたにもかかわらず、従わない場合には、占有保持の訴え(同法第198条)、不法行為(同法第709条)により、枝等の除去や損害賠償の請求を裁判手続により行うことになる。
 一方、柿や桃等の樹木の実が枝から隣地に落果するときは、越境されている者は勝手に処分(食べるなど)できるだろうか。天然果実は、隣地に落果したとしても、樹木の所有者に所有権が帰属し、勝手に処分することはできない(同法第89条)。
 越境に限らず、人の生活は地域の中で営まれている。枝を切除するにもまさに日頃の“相隣関係”が重要になってくる。お互い様であり、媒介業者が越境問題に直面したときは、法的手段を教授するのみでなく、当事者の話し合いでの解決を重視すべきであろう。また、媒介業者は、契約時に当事者間で越境に関しての容認や樹木の生長により被害を及ぼすおそれがあるときは、樹木の所有者が処理する旨の覚書を交わしておくことも紛争防止となろう。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
  ・② (略)
   権利の濫用は、これを許さない。
 同法第88条(天然果実及び法定果実)
   物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
   (略)
 同法第89条(果実の帰属)
   天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
   (略)
 同法第198条(占有保持の訴え)
   占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
 同法第206条(所有権の内容)
   所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
 同法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
   隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
   隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
   故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照判例①

 新潟地裁昭和39年12月22日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 民法第233条第1項によれば、隣地の樹木の枝が境界線を越え他人の地内にさしかゝつた場合には、その樹木の所有者をして枝を剪除させることができるのであるが、相隣接する不動産の利用をそれぞれ充分に全うさせるために、その各所有権の内容を制限し、また各所有者に協力義務を課する等その権利関係相互に調節を加えている同法の相隣関係規定の趣旨に照らすとき、右越境樹枝剪除の請求も、当該越境樹枝により何等の被害も蒙つていないか、あるいは蒙つていてもそれが極めて僅少であるにも拘らずその剪除を請求したり、又はその剪除によつて、被害者が回復する利益が僅少なのに対比して樹木所有者が受ける損害が不当に大きすぎる場合には、いわゆる権利濫用としてその効力を生じないと解さなければならない。従つて結局越境樹枝の剪除を行うに際しても、単に越境部分のすべてについて漫然それを行うことは許されず、前記相隣関係の規定が設けられた趣旨から、当事者双方の具体的利害を充分に較量してその妥当な範囲を定めなければならないと解すべきである。

参照判例②

 東京地裁平成24年9月5日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 当該土地所有者は、隣地所有者に対し、民法第233条第1項に基づき、隣地所有地上の本件樹木のうち当該土地所有者の所有地に張り出している部分の切除を求めることができる。
 また、本件家屋の2階屋根や車庫の屋根の雨樋を詰まらせている木の葉や実が、本件樹木に由来するものであることは明らかであり、これにより上記雨樋の使用に支障を来していることもまた明らかであるから、当該土地所有者は、隣地所有者に対し、所有権に基づく妨害排除請求権に基づき、上記木の葉や実の撤去(清掃)を求めることができる。

監修者のコメント

 俗に「隣の家のミカンの木の枝がこちらに越境してミカンの実が成っていても勝手にそのミカン食べてはいけないが、隣の家の竹の根が越境してきて、こちら側に竹の子が生えてきたときは、勝手に採って食べてよい」と言われる根拠は、回答にもある民法第233条である。民法が枝と根の取り扱いを分けたのは、立法者が根と比較して枝のほうが高価なことが多いと考えたのと枝はその所有者が隣地に立ち入らないで切除できるのに対し、根は隣地に立ち入らなければ切除できないと考えたからである。
 なお、根は勝手に切り取ることができると言っても、隣地の木の根が大変太くて、こちら側の土地利用にさしたる支障がないにも関わらず、その太い根を勝手に切った結果、隣家の銘木が枯れてしまったときは、権利の濫用として不法行為(民法第709条)を構成することもあり得るので、隣家の木が立派なときは隣人に相談することが適切である。

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