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2002-B-0271
古い仮差押登記の抹消方法

 相続人から親の自宅であった戸建の売却の媒介を依頼された。登記事項に35年前に登記された仮差押登記がある。

事実関係

 当社は不動産売買の媒介業者である。先日、相続人から、亡くなった父親が住んでいた一戸建の売却を依頼された。母親は既に亡くなり、父親の自宅は長男が相続したが、しばらく空家にしていたものの、今後も住む者がいないため売却することになった。当社が登記事項証明書を確認したところ、長男名義に相続登記はされているが、35年前に登記されている仮差押登記が付されていた。売却するためには仮差押登記を抹消する必要があるが、仮差押登記の債権者は、左官業の有限会社と個人2名となっている。
 売却依頼者の長男に経緯を聞いたところ、確かな状況は分からないとしながらも、父親の自宅の建築を請負っていた工務店が倒産し、父親が建築代金の支払で揉めたことを覚えているとのことだった。債権者は倒産した工務店から工事を請け負った左官業の法人と請負業務の詳細は不明だが、個人2名は左官業の法人の下職人と推測される。なお、倒産した工務店は債権者にはなっていない。
 依頼者は、父親の自宅完成を当然知っているが、建築代金を完済したかは分からないようだ。少なくとも父親の死亡前後に債権者から代金を請求されたことはないと言っている。依頼者は早期に売却できることを望んでいる。

質 問

1.  相続人である所有者が古い仮差押登記を抹消するにはどの様な手続が必要か。
2.  仮差押登記を抹消するまでには、どのくらいの期間がかかるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 自宅の所有者である相続人は仮差押登記を抹消することができるが、いくつかの方法がある。
 質問2.について ― 債権者の同意が得られれば短期間で抹消できる可能性があるが、債権者に相続等が発生していれば、抹消までに6か月から1年程度の期間を要する場合がある。
2.  理 由
⑵について
 不動産売買にあたり、対象物件に抵当権や差押、仮差押、仮処分等の登記が付されている場合がある。仮差押、仮処分は債権者の保全処分といわれ、金銭債権等を保全するための保全処分が仮差押であり、裁判を提起する前に、相手方(債務者)の財産を保全する制度である(民事保全法第1条、同法第20条)。仮差押処分は債権者からの裁判所への申し立てにより、裁判所の命令によって嘱託登記される。債権者が金銭債権を回収するには、判決確定後の強制執行である競売等によりなされるが、その間に目的物である債務者の財産の流失や処分を防ぐために仮差押を用いることができる。
 ちなみに、仮処分は、不動産自体が紛争の対象になっている場合で、処分や占有移転を禁止するために利用するものである(同法第23条)。
 仮差押登記を抹消するには、①債権者による取下げ、②事情変更による保全取消し、③起訴命令による保全取消し、等の方法がある。債権者による取下げは、債務者が、債権者と交渉し、同意が得られれば、債権者が保全命令の申し立てを取り下げることにより、裁判所の嘱託によって登記の抹消ができる。しかし、債務者の残債務がある場合は弁済が必要となる。保全取消しは、保全命令後に事情の変更により、保全の必要性がなくなった場合に、債務者が裁判所に申し立てることにより、保全命令の取消しを受けることができる(同法第38条)。事情変更は、弁済等による債権の消滅、建物の取壊し等による目的物の消滅、命令後に債権者が十分な物的担保を得た場合等が該当する。また、債務者による仮差押解放金の供託によって仮差押が取り消される(同法第51条)。起訴命令は、債務者が裁判所に対し、債権者に訴訟の提起を命じるよう求め、裁判所は期間(2週間)を定めて訴訟提起を命じ、債権者がこれに応じないときは、保全命令を取り消すことができるというものである(同法第37条)。
 いずれの場合も、債権者の協力が必要になるが、相談事例のように、古い登記の場合は、債権者の相続発生などで行方が分からないことも多い。法人であれば既に解散している場合もある。相続が発生していたときは、相続人を確定した上で、相続人に対して取下げの交渉や起訴命令の相手方として訴訟提起を催促することになる。相手方が確定できたとしても、債権内容を失念している場合や相続で本人でない相続人であれば債権そのものへの認識がない場合も多いであろう。また、債権者やその相続人が債権の存在を知った場合、金額の多寡は別としてなにがしかの金銭を受け取れる権利に期待を持つこともあり、簡単には取り下げに応じないこともあろう。事情変更による保全取消しは、債務者の申立てによることになるが、債務者により保全の必要性の消滅を立証するのは難しく、一般に、この手続は利用されにくいと言われている。
 仮差押登記抹消のために多く利用されるのが、起訴命令による取消しである。債務者が裁判所に債権者が本裁判を起こすように請求するが、相続人では事情が分からないこともあり、債権者本人が存在していても、本裁判に向けた証拠等の開示が十分でなければ、費用をかけて本裁判を起こす可能性は低い。裁判所による起訴命令の口頭弁論出頭や答弁書等の準備書面の提出ができず、起訴命令に応じることは少ないであろう。債権者が起訴命令に応じなければ、裁判所は、仮差押を取り消し、嘱託により登記は抹消される。
 なお、起訴命令の申立から登記抹消になるまでの期間は、債権者の所在が明確であれば数か月で可能であるが、相続人の探索から始める場合は、1年前後の期間を要することが少なくない。相続人の確定には、戸籍謄本等の取得も必要になり、請求権限のない債務者のみで手続するのは難しく、弁護士や司法書士へ依頼するのがスムーズに終了できるであろう。
 媒介業者は、仮差押登記のある物件の売買の媒介も可能であるが、買主の所有権の行使を阻害する登記上の負担があるときは、売買決済後に買主が所有権を失う恐れもあり、依頼者に対して阻害要因を除去する方法についての助言や専門家の紹介が必要となる場合がある。

参照条文

 民事保全法第1条(趣旨)
   民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
 同法第2条(民事保全の機関及び保全執行裁判所)
   民事保全の命令(以下「保全命令」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。
   民事保全の執行(以下「保全執行」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
 同法第20条(仮差押命令の必要性)
   仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
   (略)
 同法第22条(仮差押解放金)
   仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。
   前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
 同法第23条(仮処分命令の必要性等)
   係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
   仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
 同法第24条(仮処分の方法)
   裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。
 同法第37条(本案の訴えの不提起等による保全取消し)
   保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。
   前項の期間は、2週間以上でなければならない。
   債権者が第1項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。
  〜⑧ (略)
 同法第38条(事情の変更による保全取消し)
   保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。
   前項の事情の変更は、疎明しなければならない。
   (略)
 同法第51条(仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し)
   債務者が第22条第1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。
   (略)

監修者のコメント

 本相談ケースは、35年前の仮差押登記というのであるから、実体的権利としては、もはや無効のものと思われるが、その抹消のためには、回答のとおり、やはり起訴命令による保全命令の取消しの方法によらざるを得ない。取消し自体は、容易に認められるであろうが、その手続を採るために債権者ないし債権者の相続人の探索と特定が必要であり、弁護士や司法書士に依頼しないとなかなか難しい面がある。
 なお、相続人が存在するが行方不明の場合は、まずその者の戸籍の附票をとって、最後の住所地の家庭裁判所に「不在者財産管理人(民法第25条~29条)」選任の申立を行い、選任された財産管理人と協議を行って対処することになるが、いずれにせよ大変手間のかかることなので、司法書士等の専門家に依頼したほうがよい。

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