不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1912-B-0267
他人の私道に接している物件の通行権の有無と通行承諾の承継方法

 他人名義の2項道路に接している建売住宅の購入者が、購入した土地の一部を2項道路の拡幅のために提供した場合は、その購入者に2項道路の通行権が発生するか。
 建売業者が用地を買収した際の土地の売主には、2項道路の所有者から、転売時の買主(第三者)に対しても無償通行を認める旨の承諾書が発行されているが、その承諾書が発行されているために、本件の建売業者に対しては、その建売住宅の購入者にも無償通行を認める旨の承諾書を発行してくれない。このような場合には、建売住宅の購入者にも無償通行権があると考えてよいか。
 このような煩わしい問題を解決するための何か良い方法はないか。

事実関係

 当社は、ある宅建業者が売主になっている建売住宅を一般の消費者に売却する媒介をしたが、その建売住宅の前面道路がいわゆる「2項道路」で、幅員が3.5mしかなかったために、契約に際し、買主に対し、下図のように売買対象の土地から25cm分が道路として提供されている旨を重要事項として説明した。
 ところが、買主から、もともとの2項道路が他人名義の道路(私道)であることから、「自分にはその他人の2項道路を通行する権利があるのか」という質問がなされた。

質 問

1.  当社は、買主に対し、「自分(買主)が購入した土地も2項道路として提供しているのだから、同じ2項道路である以上、他人の道路であっても、当然に通行権があり、その他人から通行承諾を取り付ける必要はない」と答えたが、その答えは正しいか。
2.  建売住宅の売主(事業主)は、そのような通行権の問題に対処するため、あらかじめ用地の買収に際し、その2項道路の所有者(いわゆる「隣接地主」)から、土地を分譲する際には、その買主に対しても無償で道路を通行させる旨の承諾書を取り付けようとしたところ、2項道路の所有者から、「すでに土地の所有者(用地買収の際の売主)に対して、転売時の買主(第三者)に対しても、無償通行を認める旨の承諾書を出しているので、貴社(建売業者)にはあらためて発行しない」と言われたとのことであった。
 このような事情・背景がある場合には、今回の建売住宅の買主に対しても、無償の通行承諾がなされていることになるか。
3.  このような煩わしい問題を解決するには、どのような方法があるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 必ずしも正しくない。
 質問2.について ― 必ずしも承諾がなされているということにはならないが、事実上無償通行することはできる。
 質問3.について ― 根本的な解決方法としては、2項道路に接している土地の所有者全員が協力して、道路の幅員を4mに拡幅したうえで、道路全体を行政当局に寄付することができれば、本件のような煩わしさからは解放される。しかし、それがすぐにできないようであれば、その都度本件のような承諾書を2項道路の所有者から受領して対応するしかないが、できることならこの際、2項道路の所有者から、次のような「包括承諾書」を交付してもらえれば、2項道路の所有者にとっても、そのための2度手間3度手間が省けるのではないかと考えられる。
(包括承諾書にするための追加文言)
 「なお、本件の土地がその後転々譲渡された場合にも、この承諾書は効力を有し、そのために譲渡の都度、本書面を譲渡人から譲受人に引渡すものとする。」
 このようにすれば、常に譲受人が承諾書を所持することになり、2項道路の所有者に相続が発生したとしても、その相続人に対し、通行権を主張することができる。
2.  理 由
について
 買主が、いくら自分の土地を2項道路の拡幅のために提供したとしても、2項道路自体はあくまでも他人の道路(私道)であるから、その承諾を得なければ、原則として通行することはできない。しかし、2項道路である以上、所有者も他人の通行を妨害することはできない(後記【参照判例】参照)。
について
 本件の2項道路の所有者の通行承諾は、あくまでも建売業者の用地取得時の土地の所有者に対してのものであるから、その所有者の売却先である建売業者までは対象になるが、建売住宅の買主までは対象になっていない。しかし、本件の事実関係を見る限り、その建売住宅の買主も対象になると解釈できる余地もあり、そもそもこのようなケースで、通行承諾がないことを理由に通行を妨害するというようなことがあったとすれば、それは権利の濫用であり、到底認められるものではないので、建売住宅の買主も事実上無償通行ができると考えて差し支えない。
について
 (略)

参照判例

 東京高判昭和49年4月30日東高民時報25巻4号74頁
 本件道路は、建築基準法第42条第2項の道路であることが認められ、建築規則の面からとはいえ、敷地と道路の関係につき条例で制限を設けたり(同法第43条第2項)、道路の変更または廃止につき制限することができる(同法第45条)など私権の行使に制限が加えられている点から考えると、所有者がその所有地を事実上一般公衆の自由な通行の用に供している単純な私道ではなく、公物たる道路に近い性質をもったものと解することができる。

監修者のコメント

 本ケースの道路所有者が、建売住宅の購入者の通行を認めないということは、回答のとおり、権利の濫用として認められないと考えられる。
 媒介業者としては、①土地所有者が出している無償通行を認める旨の承諾書のコピーを取り付けること、②改めて「宅建業者には承諾書を発行しない」と言っていることの相手方(担当者も含む)とその日時を確認し、記録に残しておくこと、③建売住宅の購入予定者に道路の通行に関することについて事実を説明し、法的に当然の無償通行権があることが保証されているような説明をしないことである。

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