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1910-R-0209
賃貸借契約書に記載された更新事務手数料等の支払特約の有効性

 賃貸借契約書の特約欄に、借主の媒介業者に対する媒介手数料や更新事務手数料の支払文言が印字されていることがあるが、そのような賃貸借契約書の中に定められた、契約の当事者でない者(媒介業者)との支払特約は、法的に有効なのか。同様の文言が、重要事項説明書の中にも記載されていることがあるが、そのような場合にも、借主に支払義務が生じるのか。そもそも、借主には更新事務手数料の支払義務はあるのか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者であるが、他の業者が使っている建物賃貸借契約書を見ると、時々、その特約欄に、借主が媒介手数料や更新事務手数料を支払う旨のゴム印が押されていたり、印字がなされているものを見かける。

質 問

1.  このような特約は、賃貸借契約の当事者でない者(媒介業者)と借主との特約ということになるが、このような特約は法律上有効なのか。
2.  そのような特約文言が、賃貸借契約書ではなく、重要事項説明書にも記載されていることがあるが、そのような場合にも借主に支払義務が生じるのか。
3.  そもそも、更新事務手数料というのは、借主に請求することができるのか。本来は貸主が負担すべきものではないのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 有効と解される。
 質問2.について ― 借主が、媒介業者から重要事項説明の一環として媒介手数料等の支払義務がある旨の説明を受けたからといって、それだけで支払義務が生じるわけではないが、その媒介業者の媒介によって賃貸借契約が成立したのであれば、媒介手数料については、その支払義務が生じる。しかし、更新事務手数料については、その請求する額が妥当であることと、その媒介業者が、本件の契約の更新時にそれにふさわしい更新に関する事務を現実に行うことが前提になる。
 質問3.について ― 更新事務手数料については、その請求する額が妥当で、かつ、その媒介業者が現実にそれにふさわしい更新事務を行ったのであれば、貸主、借主双方に請求することができるが、その額がどの程度の額であれば妥当といえるかについては、ケースにより異なるので、一概にはいえないし、また貸主の方がその負担の比重が重いともいえない。
 しかし、いずれにしても、更新事務は新たな賃貸借契約を締結するための業務ではないので、その事務量や難易度等を考えたうえで、相応の額を定めるべきである。
2.  理 由
について
 賃貸借契約は、確かに貸主と借主との間の契約であるが、その契約に際し、借主が、その契約の媒介をした媒介業者との間で媒介手数料の支払合意をしたり、その媒介業者が更新事務を行ったときには一定の更新事務手数料を支払うという合意をすることは、何ら賃貸借契約に影響を与えるものではない。したがって、それらの合意事項が、賃貸借契約書の特約欄に定められていた場合には、その賃貸借契約書に借主と媒介業者の署(記)名押印がなされている以上、借主と媒介業者との間の契約として、法的にも有効なものと解される。
について
 契約は、当事者の合意により成立する。したがって、本来は媒介業者からの重要事項説明というような一方的なものではなく、借主と媒介業者との間に、媒介手数料や更新事務手数料を支払うという事前の合意(契約)がなければ、借主にはその支払義務が生じないのであるが(民法第648条第1項)、本件のようなケースの場合には、通常借主が、媒介業者からその支払いについての説明を受ける前に、すでに借主から媒介業者に対し、賃貸借契約を成立させるための媒介依頼をしているため、その媒介依頼に基づき、借主には、媒介業者の媒介により賃貸借契約が成立した時点で、媒介手数料の支払義務が生じるのである(商法第512条、後記【参照判例】参照)。
 問題は、なぜ媒介業者がこのような変則的なことをするのかということであるが、おそらく賃貸借の媒介の場合には、借主との間で、事前に媒介契約書を取り交わすということがあまり行われていないために、このようなかたちで、媒介手数料の支払特約をするのであろうと考えられる。
 この事前の支払合意が重要であることについては、更新事務手数料の請求についてもいえるのであるが、この更新事務手数料については、あくまでも本件の媒介業者が、本件の契約の更新時に、その賃貸借契約についての管理業務を行っており、かつ、その事務手数料の請求額にふさわしい事務を行った場合に、はじめて請求することができる性質のものであるから(商法第512条)、その額が妥当性を欠く場合には、いくら事前の合意があるからといっても、借主には、その範囲を超える額については支払義務はないと解されよう(消費者契約法第10条)。
について
 (略)

参照条文

 民法第648条(受任者の報酬)
   受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
   受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。(以下、略)
   (略)
 商法第512条(報酬請求権)
   商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   民法、商法(明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

参照判例

 最判昭和43年4月2日民集22巻4号803頁、判時519号86頁、判夕222号158頁(要旨)
 不動産の買主との間に明示の売買の媒介契約がなくとも、不動産取引業者が主として買主のために仲介して不動産の売買を成立させた場合には、黙示の媒介契約がされたものと解することができ、不動産取引業者は、買主に対して売買仲介の報酬を請求することができる。

監修者のコメント

 賃貸借契約書は、貸主と借主の権利義務を定めるものであるから、借主が宅建業者に更新事務手数料を支払う旨を定めることは、たしかに変則的ではある。しかし、その支払義務を定めた場合、その義務が無効となるわけではない。
 更新事務は、宅建業法の適用を受けない業務であるから、媒介報酬の制限(宅建業法第46条)の規定と関係しない。ただ、それを請求できるのは、その業務の委任(準委任)を受けたから、受任者として委任者に請求できるということであるので、貸主に依頼されたことを当然に借主に請求できるものではない。借主からもらうのであれば、事前に借主の了承を得て、借主から依頼されたという事実が必要である。

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