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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1908-R-0207
賃借人が賃借物の美観を損ねる使用をしている場合、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができるか。

 賃借人が事務所兼倉庫として賃借しているビルの前の駐車場で商品の積み下ろしをしているが、頻繁に商品を長時間放置することがある。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。商業ビルの賃貸人から、賃借人との間の建物賃貸借契約の解除についての相談があった。ビルは4階建の事務所ビルである。道路に面している1階にはビルの賃借人のための駐車場が4台分ある。1階の賃借人は、事務所兼倉庫として賃借し、建物契約とは別途の契約で2台分の駐車場を賃借しているが、駐車場で商品の積み下ろしをしており、他の駐車場も使用することがあり、時には商品を積み上げた状態を長時間放置していることもある。ビルの1階は上階の賃借人やその従業員及び来訪者の通路になっているため、通行に支障があったり、見た目も積み上げた商品でビルの美観を損ねている。商品が多いときには前面の公道に自動車を停め、商品の搬出入をすることもあり、通行人や他の自動車の通行に迷惑を及ぼすこともある。
 賃貸人は、商品を駐車場に長時間置きっぱなしにするのはビルの美観を損ね、商品の積み上げは、他の賃借人や道路の通行を妨げることがあり、このような行為はやめるように賃借人に再三言っているが、賃借人は、事務所は倉庫としても使用しており、商品の搬出入は当然であると主張し、賃借人の迷惑行為は改善されない。賃貸人は、賃貸借契約の賃借人の建物の使用目的は、事務所と商品置場である倉庫であり、賃借人が賃借している駐車場で商品の積み下ろしをすることは仕方ないとしても、建物入口付近への商品の積み上げや道路に自動車を停めての作業はビルの印象が悪くなると懸念している。賃貸借契約では、賃借人は、近隣への平穏な生活を乱す行為を禁止し、使用にあたっては善管注意義務がある旨を約定し、賃借人が違反したときは、賃貸人は催告のうえ、契約解除できる契約となっている。

質 問

 建物の賃貸人は賃借人に対し、賃借人の使用方法がビルの美観を損ねる行為であることを理由として契約解除の請求をすることができるか。

回 答

1.  結 論
 賃借人の行為が賃借物の美観を損ねるという理由のみでの契約解除は難しいが、その程度が極端なときや、賃貸人や近隣への迷惑行為があれば、賃貸人との間の信頼関係の破壊により契約解除ができる場合がある。
2.  理 由
 賃貸借契約においては、賃借人は、契約または賃借物の使用できる用法に従い賃借物を使用収益する義務があり、その使用方法に違反した場合は、賃貸人は契約解除ができる(民法第594条第1項・第3項、同法第616条)。また、賃貸借契約においても、賃借人の危険行為、近隣への迷惑行為や賃借物への損害を及ぼす行為等を禁止し、善良なる管理者の注意をもって使用する義務を定め、賃借人が違反したときは、賃貸人は催告のうえ、契約解除することができるとする契約が多い。
 賃借人の賃貸借による迷惑行為により賃貸人が契約解除をできるか否かの判断は、様々な事由が考慮される。いずれも契約解除になり得るかの行為の内容及び賃貸人と賃借人との間の信頼関係の破壊に至っているか等により判定される。
 賃借人の迷惑行為が契約解除事由に該当する否かは、迷惑行為の種類、程度、頻度等や、賃貸人が賃借人に対して注意や中止、改善要求等をしたか、その改善状況等の経緯、迷惑行為を禁止する特約の有無、行為による他の賃借人や近隣者への影響、迷惑行為を受ける側の受忍限度、等々を総合的に判断される。
 相談ケースでは、賃借人が事務所兼倉庫を使用するにあたり、同時に賃借している駐車場を利用して商品等を搬出入をしている。賃貸人は、搬出入それ自体の行為は賃借人の賃借理由から容認しているが、商品を駐車場に長時間積み置きしていることに対し、美観を損ね、他の賃借人等に通行に迷惑を生じさせていることを、再三、改善要求したものの賃借人の行為が改善されておらず、賃貸人は賃借人に対して、契約解除ができると解される。
 同様ケースの裁判例で、「賃借人において本件建物の前面部分を商品置場として使用してもある程度やむを得ない点があり、賃貸借契約の解除を認めることは、特段の事由のない限り、いささか酷に過ぎる感がないではない」と一定の理解を示しながらも、「賃借人は仮に自己の営業に不便を来すことがあったとしても、契約条項を誠実に順守すべき義務」があり、「本来軽乗用車の駐車場用地として許された本件土地の前面空地部分を商品置場として使用するなどして美観を害する」とし、賃貸人や他の賃借人や通行人に迷惑をかけていることも考慮し、「再三にわたり前記条項に違反することがないよう申し入れ、さらに賃借人の行為につき直ちにこれを中止するよう催告したにもかかわらず、賃借人がこれに応じなかったため、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をするに至ったこと等の事情を考慮すると、賃貸人の右契約解除の意思表示は正当である」としたものがある(【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第594条(借主による使用及び収益)
   借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
   (略)
   借主が前2項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
 同法第616条(使用貸借の規定の準用)
   第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

参照判例

 東京地裁平成3年2月25日 判時1403号39頁(要旨)
 賃借人は賃貸人との約旨に反し、本来軽乗用車の駐車場用地として許された本件土地の前面空地部分を商品置場として使用するなどして美観を害するとともに前記のように賃貸人らに迷惑を及ぼし、本件賃貸借契約に違反しているものと言わなければならない。しかしながら他方、賃貸人は賃借人に対し本建物を倉庫兼事務所として賃貸していたのであるから、右契約の性質上、賃借人において本件建物の前面部分を商品置場として使用してもある程度やむを得ない点があり、かかる事実を考慮すると、賃借人の前記契約違反を理由として本件賃貸借契約の解除を認めることは、特段の事由のない限り、いささか酷に過ぎる感がないではない。(中略)
 賃貸人は本件建物の賃貸目的を十分承知した上、賃借人に対し本件建物等の使用方法につき厳重な制限を課し、賃借人もこれを承知して前記条項(賃借人が資材等を放置し美観を損ねる行為及び他の賃借人並びに近隣に迷惑を及ぼす行為を禁止する旨の約定。違反したときは賃貸人において催告を要せずに賃貸借契約を解除することができる旨の条項)を設けることを承知したものと言うべきである。したがって、賃借人としては仮に自己の営業に不便を来すことがあったとしても、なお右条項を誠実に順守すべき義務を有するものと言わなければならないにもかかわらず、前記のようにこれを順守しなかったものであるから、賃借人の義務違反は重大であり、加えて賃貸人が賃借人に対し、再三にわたり前記条項に違反することがないよう申し入れ、さらに賃借人の行為につき直ちにこれを中止するよう催告したにもかかわらず、賃借人がこれに応じなかったため、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をするに至ったこと等の事情を考慮すると、賃貸人の右契約解除の意思表示は正当であると言わなければならない。

監修者のコメント

 本ケースのような事案すなわち用法遵守義務違反についての解除の可否は、俗な言葉で言えば「程度」の問題である。社会常識の観点からみて、その賃借目的からみて、やむを得ないか、その程度を超えているかで決まるが、問題は美観というより、他の賃借人やその従業員、来訪者の通行に支障が生じていることが日常的かどうかであろう。
 当該賃借人が「事務所は倉庫として使用しており、商品の搬出入は当然である」と主張していることは、その限りにおいては間違いではないが、だからといって長時間放置してよいということにはならない。
 回答のような手続を経たうえで解除できると思われる。

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