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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1906-R-0205
賃貸借予約契約締結後に、賃貸人が自己の責任で履行不能となったときは、賃借人は賃貸人に損害賠償を請求しうるか

 当社は賃貸の媒介業者であるが、賃貸人と賃借人との間で、これから新築するテナントビルの予約契約を締結した。その後賃貸人は、設計変更をして、第三者との間で変更した賃貸部分の予約契約をしたため、賃借人は予約契約をした賃借物の一部を賃借できなくなった。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。2年前に、商店街の一角に、4階建のテナントビル建築を予定していた賃貸人と、酒類や食品を扱う店舗を開業する予定の賃借人との間で、建物賃貸借予約契約を締結した。
 新築予定ビルは、各階とも事務所又は店舗として2者のテナントが使用可能であったため、賃借人は、営業上、店舗部分と、バックヤードの倉庫スペースが必要だったので、店舗部分として1階全部と倉庫として4階フロアーの半分の賃借を希望した。当社は、賃貸人が建築を予定していた設計図を基に、賃貸人及び賃借人と協議を重ねた結果、賃貸借の対象部分・面積、月額賃料、賃貸借期間、敷金の額、中途解約特約等の賃貸借契約全般の内容について合意した。建物着工前なので、賃貸借契約の本契約は、ビルの竣工時に締結することとし、建物賃貸借予約契約を締結したものであった。
 賃貸人は、建築予定地で長年の間、住宅に住みながら併用店舗の雑貨屋を営んでいたが、売り上げ減と建物が築60年とかなり古くなり、将来の収益を念頭に、テナントビルに建替えを決断した。しかし、賃貸人は、ビルの4階部分は、当初のテナント区画を変更し、将来は、賃貸人自らが居住するか、地方転勤している息子家族が住めるようにとの思いで、建築会社に設計変更を依頼した。
 当面は賃貸人も息子家族も4階の居住用部分に住まないため、当社の媒介で賃借を希望する顧客との間で、期間3年とする建物定期借家契約を締結した。
 賃貸人は、当社を通じ、賃借人に対し、賃貸借予約契約に約定した賃貸部分のうち、倉庫に使用する予定の4階部分は、居住用に変更するため、倉庫としての使用はできないので、倉庫部分は1階フロアーの中で融通してほしいと依頼した。
 なお、2、3階の事業用フロアーも、他のテナントとの間で賃貸借予約契約を締結済みである。そのため、賃借人は、倉庫として利用するスペースを借りられないことになってしまった。
 当社は、4階の居住用部分はすでに契約済みであり、賃借人に対し4階の賃借は諦め、4階部分を除いた内容で本契約をするように交渉を続けたが、賃借人は納得していない。
 賃貸人は、締結した賃貸借契約は予約契約であり、予約段階では暫定的に定めたものであり、本契約に至るまでには、予約契約後の事情の変化により、契約条項は変更できる。賃借人が本契約を締結しないのであれば、賃借人からの、予約契約の解除の申入れであるといっている。
 一方、賃借人は、予約契約で定めた契約内容が成就されないのであれば、賃貸人の債務不履行で損害賠償を請求すると主張している。

質 問

1.  賃貸人は、賃借人との間で締結した建物賃貸借の予約契約の内容を、本契約を締結するときに、変更することができるか。
2.  賃貸人が建物賃貸借の予約契約の内容を変更し、賃借人がその変更事項を承諾できないときは、賃借人は、賃貸人の債務不履行により、賃貸人に対し、損害賠償を請求することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 原則、契約当事者が合意しない限り、予約契約には拘束力があり、予約契約で定められた内容について変更することはできないと解されている。
 質問2.について ― 賃貸人は、賃貸人の債務不履行により、賃借人に対し損害賠償を負う可能性が高いと考える。
2.  理 由
⑵について
 不動産の予約契約は、将来の本契約に向けての予約あるいは申込といった側面としてとらえ、不動産取引現場で時々みられる。宅建業従事者でも、予約契約を本契約成立の前段階の暫定的な取り決めであると誤解されていることがある。
 法律的側面から売買の予約契約を定義すると、「売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる」(民法第556条第1項)ものであり、契約当事者双方が本契約の締結又は予約契約の約定の履行義務を負っている。予約契約とは予約完結権の意思表示をすることにより効力が発生するものであり、基本的に、予約契約は、本契約と変わるところはない。予約契約段階では契約内容を暫定的に定め、本契約で細部を約定したり、事情の変化によって契約内容の変更をする場合もあるが、そのような場合でない限り、予約契約で定められた内容は契約当事者に拘束力を持つと解されている(【参照判例】参照)。
 売買契約に限らず、賃貸借等の有償契約についても、民法第556条第1項が準用されており、賃貸借契約の予約契約を結ぶことが可能である。
 相談ケースの賃貸借予約契約のように、賃貸人及び賃借人と協議を重ね、賃貸借契約の要素である、賃貸借の対象部分・面積、月額賃料、賃貸借期間、敷金の額、中途解約特約等の賃貸借契約全般の内容について合意しているのであれば、賃貸借予約契約が成立しており、当事者はその内容で本契約を締結する義務を負わなければならないのである。
 予約契約に似た契約に、「仮契約」の文言を使用する場合がある。「仮契約」としたとしても、双方の意思の合致があれば、契約としての効力が認められるのは、予約契約と同様である。ただし、仮契約の場合は、内容がすべて確定的でないときが多く、契約の拘束力が弱い場合もあるが、契約であり、約定のすべてが無効になったり、契約を取消できる訳ではないので注意が必要である。
 このように、予約契約で定められた内容は契約当事者に拘束力を有するため、本契約の締結義務を履行しなかったり、相談ケースのように第三者との予約契約締結により当初の予約契約を履行不能に至らせたときは、賃貸人は履行不能による損害賠償責任を賃借人に対し負うことになることは否定できない(同法第415条、【参照判例】参照)。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
   債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 民法第556条(売買の一方の予約)
   売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
   (略)
 同法第559条(有償契約への準用)
   この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

参照判例

 東京地裁平成15年9月26日 判時1851号126頁(要旨)
 一般的に、予約契約とは予約完結権の意思表示によって効力が発生するものであり、予約契約において定められた内容は、本契約の内容を決定する。もちろん、予約契約であることから、細部については変更がされることはあり得るし、予約契約締結に至る経緯や予約契約の内容自体からみて、契約の重要な部分であっても、予約契約段階では暫定的に定めただけであり、その後の変更が予定されている場合がある。また、予約契約締結後の事情の変化によって、本契約締結に至るまでに契約内容に変更を余儀なくされることもあり得る。しかし、そのような場合でない限り、予約契約で定められた内容は契約当事者に拘束力を持つといわなければならない。(中略)賃貸人は、本件予約契約上、本契約を締結すべき義務を負ったのに、これを履行せず、第三者との契約締結により本件予約契約を履行不能に至らせたということができ、賃貸人は履行不能による損害賠償責任を負う。

監修者のコメント

 予約契約には、2つの形態があり、一つは当事者一方の予約完結権の行使により契約が成立するもので、これを一方予約といい、民法第556条がこれを規定している。もう一つは、民法に規定はないが、当事者の一方が申込みの意思表示をした場合、相手方はこれを承諾する義務があるというもので、これを双方予約という。
 いずれの予約も、予約の内容で将来本契約を締結しようという合意であるから、予約の内容は、当事者に拘束力をもつ。仮に拘束力がないとしたら、予約をした意味がない。従って、本ケースの貸主がいう「予約契約は暫定的に定めたものであり、本契約に至るまでは、予約契約後の事情の変化により、契約条項は変更できる。」との主張は、そのような留保の特約が予約契約の中に定められていない限り、認められない。
 賃借人予定者は、現に発生した損害の賠償請求ができるが、4階の賃借ができなければ賃借目的を達成できないときは、予約の解除と共に損害賠償請求をすることができる。

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