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1906-R-0204
共同相続時における家賃等を相続する者は誰か

 賃貸マンションの所有者が死亡した。相続人は複数いるが、管理業者である当社が預かっている家賃等を相続人の1人に全額を支払ってもよいか。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者兼管理業者である。当社が管理している1棟20戸の賃貸マンションの所有者が、3か月前に亡くなった。当社は管理で家賃収納も代行しているが、所有者が亡くなったことで所有者名義の銀行口座は凍結されているため、当社に入金されている被相続人の死亡後の賃料3か月分と新規に入居した賃借人の礼金とが、当社の銀行口座にて一時的に預かった状態になっている。相続人は、被相続人の妻と子2人の計3人であり、遺言書はあるが、マンションを含めての相続登記は、未だされていない。
 このたび、相続人の1人である長男から、当該賃貸マンションは遺言により自分に遺贈されているので、当社が預かっている賃料3か月分と新規入居の礼金とを自身の銀行口座に振り込んでもらいたいとの依頼があった。

質 問

 当社が預かっている、賃料3か月分と新規に入居した賃借人の礼金とを長男に全額支払ってしまってもよいか。

回 答

1.  結 論
 相続人全員が長男に支払うことを承諾していれば、貴社にて預かっている家賃と礼金とを長男に支払うことは、可能である。しかし、長男のみの依頼をもって支払うことは、避けるべきである。
2.  理 由
 賃貸マンションの家賃は、法定果実であり(民法第88条)、相続されるマンションの所有権とは異なるため(同法第89条)、長男の依頼のみによって長男に支払うのでは相続人の間で争いになりかねず、依頼に応じてしまえば、管理業者である貴社の責任が問われかねない。
 長男は、当該賃貸マンションから生じた賃料債権は、相続開始の時期にさかのぼって、賃貸マンションを取得した相続人に帰属していると主張しているものと思われる。民法でも、相続人は、相続が開始されたときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するし(同法第896条)、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるとされているから(同法第909条)、一見すると、遺言により当該賃貸マンションを相続する長男が、賃料3か月分と新規入居の礼金も、このマンションに付随するものとして当然に手にする権利があるように思える。
 しかし、遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権(賃料債権)は、遺産とは別個の財産であり(同法第89条及び【参照判例】参照)、その財産は相続人の共有財産となるため(同法第898条)、各相続人は法定相続分の権利しかない(同法第899条)。ゆえに、たとえ長男が当該賃貸マンションを遺贈されることになっていても、すべての賃料を当然に手にする権利はない。たとえ遺産分割が決定し、相続人が家賃等を分割するために長男が一時的にお金を受け取るのだとしても、他の相続人の署名・捺印のある同意書が必要となろう。また、長男が家賃等を含めて当該マンションを相続する旨が書かれた分割協議書の確認ができれば、もちろん長男に家賃を引き渡すことになる。
 では、本事例のように、相続開始後、遺産分割前のため、賃貸マンションが複数相続人の共有状態であるときに修理等をしなければならない場合は、保存行為として各相続人が単独でいったん費用を出して修理等をすることが可能である(民法第252条)。
 なお、遺産分割後の家賃等については、貴社はマンションを相続した長男に、当然ながら支払うことになる。

参照条文

 民法第88条(天然果実及び法定果実)
   物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
   物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
 同法第89条(果実の帰属)
   天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
   法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
 同法第252条(共有物の管理)
   共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
 同法第896条(相続の一般的効力)
   相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
 同法第898条(共同相続の効力)
   相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
 同法第899条(共同相続の効力)
   各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
 同法第909条(遺産の分割の効力)
   遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

参照判例

 最高裁平成17年9月8日 判時1913号62頁(要旨)
 遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、のちにされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

監修者のコメント

 賃貸物件の所有権を相続によって取得した相続人は、それを取得するという遺産分割の成立後は、その物件の収益である賃料を受領できることはもちろんであるが、遺産分割が成立するまでの間に入ってきた賃料はどうなるかは明確ではなかった。遺産分割協議は、短期間で成立しないことも多く、なかには数年要するケースもあるので、その間に入ってくる賃料が、かなりの金額になることもある。その場合、賃貸物件を相続することになった相続人が民法第909条によって遡って全額を取得できるのか。それとも第909条は、所有権のみに当てはまり、賃料債権はそれとは別だから、他の共同相続人が相続分に応じて分配を受けるのか2つの考え方があった。この点について、回答にあるとおり、初めて最高裁が後者の考えを採用する判断をした。
 もっとも、賃料について遺産分割協議で何も決めなかった場合には、そうなるということであって、それまでに溜った賃料がかなりある場合は、その帰属も遺産分割の対象とすることも多いと思われる。

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