不動産相談

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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1906-B-0260
建売業者の古家付土地取得の際の塀の越境と瑕疵担保責任の範囲

 建売業者が建売用地として取得した土地の古塀に越境があった場合、建売業者は、その越境に対する売主の瑕疵担保責任として、売主に対し塀の撤去費用を請求することができるか。

事実関係

 当社は、このたび一般の消費者から、建売用地として古家付の土地を購入したが、物件の引渡し後、その土地上に立てられた古いコンクリート塀が隣地に越境していることが判った。その理由は、事前の現地調査の際に、隣地の樹木が境界上に覆いかぶさっていたために、越境の事実がよくわからなかったからである。
 なお、当社としては、その物件を購入するにあたり、建物についてはすぐに取り壊すので、売主が瑕疵担保責任を負わないということで特約したが、土地については、いずれコンクリート塀も取り壊し、更地にするつもりであったが、とりあえず3か月間は瑕疵担保責任を負うということで売買契約を締結した。

質 問

1.  本件のコンクリート塀の越境は、土地の瑕疵か、それとも土地とは別の土地に付帯する工作物の瑕疵か。
2.  当社は、そのコンクリート塀の撤去費用を、瑕疵担保責任に基づいて売主に請求することができるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 土地の瑕疵と解される。
 質問2.について ― 撤去費用の全額の請求は、信義則上許されない。
2.  理 由
⑵について
 本件のコンクリート塀は、土地に付着して、容易に分離復旧させることのできない「付合物」と解されるので、本件の瑕疵の問題は土地の瑕疵として扱うべきであり、また貴社は建売業者として、本件の建物を取り壊し、それとともに当該コンクリート塀も取り壊すのであろうから、その撤去費用をすべて売主の負担とすることは、売主に過大な負担を強いることになり、信義則上許されないと解される。したがって、本件の場合に貴社が売主に請求し得る額は、その撤去費用というよりは、撤去後の隣地の整地費用相当額程度のものと解されよう。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
   (略)
   権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
   権利の濫用は、これを許さない。
 民法第242条(不動産の付合)
   不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。(以下、略)
 民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
   売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

監修者のコメント

 コンクリート塀は、土地の付合物であるから、本件は土地の瑕疵といえると思われるが、瑕疵であることは間違いないので、土地の瑕疵か工作物の瑕疵かの区別はあまり問題にする必要はない。なぜなら、そのいずれかによって効果が変わるわけではないからである。撤去費用の全額を請求できないのは回答のとおりであるが、ただその前に、土地売買では境界確認を行うのが通常であり、建売業者すなわちプロである買主が、たとえ、樹木が境界上に覆いかぶさっていたとしても、その部分の境界を確認しなかったことは問題である。「隠れた瑕疵」というのは、買主がその瑕疵について善意・無過失であったということであるので、一般消費者から購入した専門業者に過失があり、「隠れた瑕疵」とはいえないと認定される可能性がある。

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