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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1904-B-0257
「墓地」に近接する取引物件の調査義務の範囲

 当社が3年前に売買の媒介をした土地の、向いの古店舗(花屋=墓地に接している)が解体された。ところが、その古店舗が建っていた土地は借地で、寺の所有地であったため、店舗の解体後は「墓地」になることが判り、土地の買主からクレームが付いた。
 当社は、当時その店舗の土地の登記記録を調査していなかったため、買主に対し、その土地が寺の所有地であることを告知していなかったが、当社に告知義務違反があるか。重要事項説明義務違反とか善管注意義務違反については、どうか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、当社が3年前に売買の媒介をした土地の、道路を隔てた向い側の古店舗(花屋=墓地に接している)が最近取り壊された。ところが、その取り壊された店舗が建っていた土地は借地で、その地主が隣接している寺のため、その跡地が「墓地」になるということが判り、買主から告知義務違反だというクレームが付いた。
 なお、現場を見ると、取引物件の道路を隔てた斜め向い側に寺の駐車場があり、その北側隣接地一帯が寺の境内地(けいだいち)であることは判るが、その境内地との境に高さ約2mのコンクリート塀が立っているために、取引物件の所有地から見ただけでは、その店舗の北側が「墓」であることまではわからない状況になっている。

質 問

1.  媒介した当社に、告知義務違反はあるか。重要事項説明義務違反とか善管注意義務違反については、どうか。
 なお、当社は重要事項の説明にあたり、上記【事実関係】にあるような地図を書き、道路の向こう側一帯が寺の所有地である可能性があることまでは図示したが、店舗の建っていた土地が寺の所有地であることまでは、登記記録の調査をしていなかったので、説明をしていない。
2.  もし、当社に告知義務違反や重要事項説明義務違反などがあるとした場合、当社は媒介業者としてどのように対応すればよいか。当社に何も違反がないとした場合、当社は何もしなくてもよいか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 貴社に、告知義務違反はなく、重要事項説明義務違反もあるとはいえない。なお、貴社が、買主に対する媒介契約上の善管注意義務を果たしていたかどうかについては、【事実関係】を見る限り、向いの店舗について、媒介時にどの程度まで調査をすべき義務があったのかは判然としないが、少なくともその店舗の土地の所有者を調査するとか、店舗が解体されたあとの土地がどのように利用されるかまでの調査をすべき義務があったとは考えられないので、特別の事情がない限り、その点についても違反はないと考えてよいであろう。
 質問2.について ― 貴社に告知義務違反や重要事項説明義務違反がなかったとしても、現に買主が不快・不安な思いをしているのであるから、媒介業者としては、買主とともに、寺に対し、店舗の北側に立っているコンクリート塀と同じような塀を道路との境に立てて、「墓地」が隠れるようにしてもらう程度の協力はすべきであろう。
2.  理 由
について
 本件のような物件について、通常媒介業者が行う物件調査の範囲は、一般的な周辺環境や利便施設等の調査のほかは、取引物件の両サイドの物件と裏側(本件では南側)隣地の所有者、居住者等がどのような人かという程度のことで、登記記録の調査を行うにしても、せいぜいその範囲か、その並びの隣接地程度までである。したがって、道路を隔てた向い側の物件を調べるということは、権利関係で関連があるなどの特別な事情がない限り、しないというのが普通である。
 このように、物件調査において、登記記録を調べるのは、通常取引物件の隣接地周辺に限られるので、本件の媒介業者が、道路の向いの店舗の土地の所有者が寺で、店舗の解体後は跡地が「墓地」になるということを知り得なかったとしても、それをもって直ちに媒介業者に善管注意義務違反があったとはいえず、まして宅建業法上の告知義務違反や重要事項説明義務違反があったとはいえない。ただ、本件の媒介時の店舗(花屋)が、一見して墓参者のためのものであることがわかるような花桶なども置いてある店舗で、それも近く解体ないし建て替えられるような古さで、営業もしていないというような状況にあった場合には、その店舗の土地が、駐車場と同じ寺の所有地で、近く建物が解体されるかも知れないという推察くらいはできる余地がないとはいえないので、もしそうであれば、媒介業者の調査義務の範囲が店舗の土地にまで拡大する可能性はあろう。なお、本件において、媒介業者に告知義務違反があったというには、媒介業者がその店舗の土地がいずれ「墓地」になるということを知っていて、その事実を買主に告げなかったという「故意」が必要なのであるが(宅地建物取引業法第47条第1号本文)、同法第35条の重要事項説明違反だという場合には、必ずしも「故意」は必要なく、「過失」であっても、少なくともその第35条に列挙された事項について説明をしなかったとか、間違った説明をしたという場合に同条違反になるということであるから、同条に列挙されている事項以外の「重要な事項」については、原則として第47条第1号の告知事項の問題となり、その告知すべき事項を「故意に」告知しなかった場合に、告知義務違反になるということである。
について
 特になし。

参照条文

 民法第644条(受任者の注意義務)
 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
 同法第656条(準委任)
 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
   宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
    一~十四 (略)
  〜⑤ (略)
 同法第47条(業務に関する禁止事項)
   宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
   宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは宅地建物取引業法に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
     第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
     第35条の2各号に掲げる事項
     第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
     イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
  、三 (略)

監修者のコメント

 告知義務(宅建業法第47条1号)は、回答のとおり「故意」に事実を告げなかった場合に問題となるものであり、また重要事項説明義務(同法第35条第1項)も、本ケースは、店舗が壊され墓地になることについて容易に知り得たにもかかわらず説明しなかったという事情がない限り、「過失」があるとはいえないであろう。そして、もう一つ次元の異なる問題として、媒介受任者の善管注意義務の一内容として、「調査義務」の違反があったといえるかであるが、事実関係から判断する限り、向かい側土地の所有者の調査をしなかったことをもって調査義務を怠ったというのは困難と思われる。

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