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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1902-R-0200
レンタルオフィスの利用契約は賃貸借契約に該当するか

 当社は、賃貸の媒介業者である。商業ビルのオーナーから空きフロアーをレンタルスペースとして賃貸したいとの相談がある。レンタルスペースの区画は、個室タイプとブース形式を考えている。

事実関係

 当社は、事務所及び店舗等の事業用賃貸借の媒介業者である。郊外の住宅地を後背地としたターミナル駅周辺を中心に営業している。商業ビルのオーナーから、空きフロアーをオーナー自らがレンタルオフィスとして事業を始めたいと相談があった。オーナーは安定的なビルの賃貸経営を望んでいるが、所有しているビルはターミナル駅近くに立地しているとはいえ、郊外とあってフロアー単位の事務所の借り手が減少している。オーナーは、最近需要が高まりつつあるレンタルオフィス業に目をつけ、当社に事業協力して欲しいと依頼してきた。
 当社はオーナーに対し、オーナーが所有している5階建ビルの2階と3階が空きフロアーになっているところを利用して、3階はメインの入口にセキュリティを備えた、20室程度の壁等で区画した個室タイプのオフィスとし、2階部分は、壁等で境を設けないオープンスペースとし、隣との仕切り板で区切った長机と、椅子を置くブース形式とし、別途、利用者が有料で利用できる会議室やコピー・プリンター・ファクシミリ機能のある複合機の設置、無料の休憩場所の設置をすること、レンタルスペースの利用形態として利用者は会員制とし、個室タイプは1年契約で、期間満了後は再契約を可能とし、ブースタイプは、全日、平日、土日会員と区分して利用者の利用方法に沿った方法で、利用料に格差を設けること等、一般的なレンタルオフィス事業の提案を考えている。さらに、利用者との利用方法の契約形態について検討を重ねているところである(なお、消防法などによる建築的な規制については、別途、工事業者を通じて確認する予定である)。

質 問

 レンタルオフィスの利用契約は、利用者にスペース貸しをするものであり、月極駐車場と同様に、借主の利用権を定めればよく、建物賃貸借契約には該当しないと考えてよいか。

回 答

1.  結 論
 レンタルオフィスの利用契約は、貸し出すスペースの物理的形状により、借地借家法の適用のある賃貸借契約に該当する場合がある。
2.  理 由
 最近、都心部やターミナル駅付近で、新築、既存を問わずフロアーを小分けに仕切ったいわゆるレンタルスペースや貸会議室として事業化の増加が見受けられる。増加の背景には、一億総活躍社会の実現に向けた働き方改革という政策の一環として、テレワークの推進への期待がある。進展している情報通信手段を活用し、会社員が自宅や移動途中、またサテライトオフィスなど、場所や時間にとらわれない働き方が推奨され、テレワークという就業形態が広がることにより、ワーク・ライフ・バランスの実現や地域活性化等の効果も期待されている。生産年齢人口の減少により、高齢者や女性、障害者等の就業機会拡大の社会的要求もある。住宅地を後背地としている地域では、自宅で就業するには、家族がいて業務に集中することが難しい場合の就業場所や起業の場、SOHOとして、レンタルオフィス需要が高まることが見込まれる。
 また、ノマド族とも称される企業等に雇われずに働く個人が、業務スペースとネットワーク機器が備えられたコワーキングスペースや喫茶店等でパソコンを持ち込んで仕事をすることも一般的になりつつある。レンタルスペースやコワーキングスペースでは利用会員同士の交流や協働を推奨しているところもある。
 レンタルスペースの利用方法は、通常、利用希望者が入会金を支払って入会することによりスペースを利用する権利を取得し、利用する場所は、壁やパーテーション等で仕切られた個室タイプ、隔壁は設けずに机と椅子を利用できるブースタイプがある。専用使用スペースのほか、利用者の利便のために会議室や複合機等の事務機器、インターネット環境、休憩所と自販機等を設置、共用で利用できる設備・施設を備えたり、利用者への訪問者の受付や電話秘書サービス等を備えるところもある。その他、バーチャルオフィスのあるレンタルスペース事業がある。これは個室やブース形式といった専用で使用できる場所は確保できないが、スペースは利用できるもので、事業場所として商業登記でき、かつ郵送物の転送サービスをしているところもある。
 費用は、入会金に加え、月々の利用料・管理費、退去時の清掃費等が必要であり、複合機の使用等の共用利用サービスは使用に応じた課金となり、休憩所等は無料となっていることが多い。複数のレンタルスペースを事業展開している企業では、入会していない他のレンタルスペースの専用使用はできないが、共用施設を利用できるところもある。個人や法人が事業を開始する場合、賃貸事務所を借りることが多いが、レンタルスペースの利用は貸事務所に比べ、初期費用が抑えられることに大きなメリットがあり、需要が高まっている理由の一つである。
 レンタルスペースの契約形態は、利用権契約としているところが一般的であると思われるが、ブース形式とバーチャルオフィスについては、利用権としての契約であることに問題はないが、個室の利用契約は、利用権契約では不適切である。隔壁のよる個室は、借地借家法上の建物と解され、借地借家法が適用となり、その使用する契約は建物の賃貸借契約でなければならない。
 賃借権は発生しないと約定したレンタルスペースの使用契約で、法定更新の適否について争われた裁判例において、「面積3.5㎡と狭小とはいえ、四方を天井まで隙間のない障壁で囲まれ、共用スペースとは鍵付きのドアによって区画されており、ドアを開けなければ共用スペースから本件区画内部の様子をうかがうことはできない構造になっていることが認められるから、本件区画は障壁その他によって他の部分と区画された独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものであり、借地借家法第3章にいう『建物』に該当する」と賃貸借の面積が狭小であっても建物であることを明確に判示し、「賃貸人が本件区画を賃借人に使用収益させ、賃借人がその対価である利用料金を毎月賃貸人に支払うというものであると解され、しかも、賃借人による本件区画の使用収益は、建物の独占的排他的な使用を内容とするものと認められるから、その法的性格は、建物の賃貸借契約に他ならないというべきである」とした(【参照判例】参照)。
 このように隔壁で仕切られた個室を使用する契約を利用権契約とした場合に、強行規定である借地借家法に従わない条項については無効となる(借地借家法第30条)ことになるので注意が必要である。

参照条文

 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
   建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
   前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
   (略)
 借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 借地借家法第30条(強行規定)
 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

参照判例

 東京地裁平成26年11月11日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件区画が借地借家法第3章の借家関係が成立する「建物」といえるかについて検討するに、建物の一部であっても、障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借地借家法第3章にいう「建物」であると解される。本区画は、面積3.5㎡と狭小とはいえ、四方を天井まで隙間のない障壁で囲まれ、共用スペースとは鍵付きのドアによって区画されており、ドアを開けなければ共用スペースから本件区画内部の様子をうかがうことはできない構造になっていることが認められるから、本件区画は障壁その他によって他の部分と区画された独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものであり、借地借家法第3章にいう「建物」に該当する。
 本件契約の中核的な内容は、賃貸人が本件区画を賃借人に使用収益させ、賃借人がその対価である利用料金を毎月賃貸人に支払うというものであると解され、しかも、賃借人による本件区画の使用収益は、建物の独占的排他的な使用を内容とするものと認められるから、その法的性格は、建物の賃貸借契約に他ならないというべきである。
 本件契約第13条第1項には「賃借権は発生しないものとする」との定めがあるが、民法が定める特定の任意規定の適用を合意によって排斥するのであればともかく、目的物の使用収益を基本的な内容とする有償契約である以上、その法的性格は賃貸借にほかならないというべきであるし、少なくとも、借地借家法の強行法規定の適用を合意によって排斥することができないことは言うまでもない。

監修者のコメント

 店舗ビルの一部(スペース)を店舗が利用し、来客の行き来する通路部分と店舗の境が判然としない形態のものについて、借地借家法の適用を回避するために「スペース利用契約」の名称で締結している例が見られるが、夜間通路との境に内部が見通せるシャッターが降りるようなものは、明らかに「建物」の一部の賃貸借である。
 世上、しばしば契約ないし契約書の名称を工夫すれば、法の適用がないと誤解している人が多い。判断の基準は、あくまでも契約の実質的な内容である。

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