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不動産相談

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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1902-B-0255
隣地使用権とは何か

 当社は、不動産売買の媒介業者である。一棟ビルの媒介をしたが、当該ビルは、外壁の補修時期にあたり、買主が外壁工事をすることになった。ビルは、繁華街にあり、隣地のビルとの間隔が狭小である。工事をするために隣地に立ち入ることが必要であるが、隣地の使用をすることができるか。隣地所有者が使用を認めないときは、立ち入ることはできないのか。

事実関係

 当社は、都心部を営業エリアとしている売買の媒介業者である。この度、一棟収益ビルの売買契約の媒介をした。建物は、建築後20年を経過しており、建物維持と外観の見栄えをよくするためにも傷んでいる外壁の修繕と塗り直しが必要である。外壁の工事は、買主が行うことになっている。ビルは都心部ということもあり、隣地に建っているビルとの間隔は、隣地境界線からそれぞれ30㎝程度しかない。
 ビルの外壁工事をするには、隣地に立ち入る必要があるため、媒介した当社は、隣地に立ち入ることの隣地所有者の承諾を取ってほしいと買主に依頼された。早速、当社は隣地所有者を訪ね、外壁工事のために買主の工事委託業者が立ち入りできるよう、隣地の使用について了解を得る交渉をした。しかしながら、媒介したビルの売主が、ビルを建築する際、隣地ビル所有者と境界の問題で争い、裁判で解決した経緯があり、感情的とも思われるが、隣地ビル所有者は、工事業者が敷地に立ち入ることに難色を示している。工事は、外壁のメンテナンスなので、隣地への立ち入りと、隣地ビルの外階段の使用が必要である。

質 問

1.  ビルの補修等工事のために、隣地へ立ち入る必要がある場合、隣地を使用することはできるか。隣地所有者が、使用することを承諾しないときは、立ち入ることはできないのか。
2.  ビルの補修等工事をする際、隣地の建物内に立ち入る必要があるときは立ち入ることは可能か。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 隣地所有者の承諾を得て、必要な範囲内で隣地に立ち入ることができる。隣地所有者が、立ち入りを承諾しないときは、裁判により、承諾に代わる判決を求めることができる。
 質問2.について ― 立ち入る場所が、「住家」にあたらない場合は、立ち入りが可能であるが、「住家」であれば、隣家所有者の承諾がない限り立ち入りをすることができない。
2.  理 由
について
 建物の建築や補修、塀の工事等のために、やむを得ず隣地に立ち入る必要性が生じることがある。特に、都心部や建蔽率・容積率の高い地域や住宅密集地などは、敷地に余裕がなく、建物も隣地境界線との間隔が狭小であり、隣地を使用せずに工事することは難しい。当然、隣地所有者の承諾があれば、立ち入ることはできるが、様々な背景や理由により、隣地所有者が承諾を拒否することは珍しくない。しかし、土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地所有者に、隣地を使用することを請求することができる隣地使用権がある(民法第209条第1項)。隣地の使用に際し、隣地の土地や建物に損害を与えたときは、賠償しなくてはならないが(同法同条第2項)、隣地使用権は、隣地に損害を与えない範囲でその使用を認めているといえる。
 隣地所有者が、土地所有者の必要に応じた敷地の使用を承諾しないときは、土地所有者は、裁判により、承諾に代わる判決を得ることが必要であり、判決により、使用の必要の範囲で隣地の使用が可能になる(同法第414条第1項・第2項、【参照判例①】参照)。
について
 このように、隣地の使用は、仮に隣地所有者が承諾しない場合、裁判により、敷地への立ち入りが可能になるが、隣地の建物内に立ち入ることは、プライバシーを害する恐れもあり、居住又は使用している隣人の承諾がない限り認められていない(民法第209条第1項但書)。裁判に依ったとしても、隣人の承諾がないと立ち入りや使用は認められない。ただし、「住家」にあたるか否かで、立ち入りできるかどうかが認否される。隣家の居室や事務所・店舗等の使用部分は、「住家」であることは、衆目の一致するところで異論はなく、隣人の承諾がない限りは、立ち入りや使用することは不可能である。しかし、隣家(ビル)の屋上やそれに続く外階段や非常階段等の使用については、立ち入ったとしても、隣人の平穏を害するとはいえず、「住家」には該当しないと解され、使用することが可能である。隣家所有者が承諾しないときは、裁判の判決をもって承諾の意思表示に代えることが可能である(【参照判例②】参照)。

参照条文

 民法第209条(隣地の使用請求)
 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
   前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
 同法第414条(履行の強制)
 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
   債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
  ・④ (略)

参照判例①

 東京地裁昭和60年10月30日 判タ593号111頁(要旨)
 民法第209条の隣地立入権は隣人相互の有効な土地利用を目的とし、境界又はその近くで建物を建築、修繕するために必要な範囲内で隣地の使用を請求することができるとし、相隣関係の規定は土地賃借権にも類推適用されるものであるが隣人が承諾しない限り、承諾に代わる判決を得ることが必要である。

参照判例②

 東京地裁平成11年1月28日 判タ1046号167頁(要旨)
 民法第209条但書によれば、「住家」に立ち入るには隣人の承諾を要するとされているが、その根拠は、隣人の生活の平穏(プライバシー)を害さないことにあると解される。そして、本件で問題とされる隣地ビルの屋上の利用の態様及び非常階段の利用態様に照らせば、これらは「住家」に当たらないと解すべきである。右のような利用態様の下では、そこへの立入りが直ちに隣人の生活の平穏を害するとは言えないからである。
 したがって、本件においては、裁判をもって承諾の意思表示に代えることができる。

監修者のコメント

 民法209条に規定する隣地使用権は、隣人相互の土地利用関係を調整する「相隣関係」の規定の一つで、本ケースについての内容とその効果は、回答に付け加えるべきことはない。
 なお、同条1項但書の「住家」への立入りは、事案としてあまり多くはないが、本文の「隣地の使用」の例は多い。「隣地の使用」とは、隣地への立入りだけではなく、足場を組んだり、材料を一時的に置くことも含まれると解されている。

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