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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1810-B-0251
区分所有者が、自室のベランダで喫煙することは、他の居住者に対する不法行為に該当するか。

 当社の媒介でマンションを購入した買主から、「階下の居住者がベランダで喫煙するので、タバコの煙が買主の室内に流入している」との相談があった。何度かベランダでの喫煙を止めて欲しいと依頼したが、いまだに続いている。買主には幼い子がおり、受動喫煙で健康被害をもたらすのではないかと心配している。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。1年前に当社の媒介でマンションを購入した買主から当社に、階下の住人が自室のベランダでタバコを吸っており、何とかやめさせる方法があるか相談があった。会社員である階下の住人は、夫婦2人で住んでいる。夫は、平日の日中は勤務のため自宅にいることは少ないが、帰宅後や休日にベランダで喫煙している。階上の買主の室内にもタバコの煙が流れ込んでくる。買主には、生後間もない子がいるので、副流煙の受動喫煙による健康被害が心配であり、タバコ独特の臭いにも不快な思いをしている。買主は、階下の住人と顔を合わせた際に、タバコの煙が室内に流入することを話したが、その住人は、気を付けますとは言っていたが、煙の流入は続いている。その後も、ベランダでの喫煙はやめるように申し入れたが、住人は、マンションの管理規約や使用細則にベランダでの喫煙を禁止する規則はないなどと、取り合ってくれない。
 マンションは、南向きで景色もよく、窓を開けていると風もよく通り快適に過ごせるが、階下のベランダでタバコを吸い始めると、買主はあわてて窓を閉じる生活を送っている。

質 問

1.  マンションの住民が、喫煙により、他の住民に健康被害を及ぼした場合、損害賠償責任が生じるか。
2.  ベランダでの喫煙を禁じる規則が、管理規約や細則になければ、不法行為に該当しないのか。

回 答

1.  結 論
 継続的な喫煙が、不法行為による損害賠償責任を生じさせる場合がある。
 喫煙を禁じる規則がなかったとしても、喫煙が不法行為となる場合がある。
2.  理 由
⑵について
 日本における成人の喫煙率は減少傾向にあるが、約20%(男性32%、女性8%)の喫煙者がいる。タバコは、健康に悪いとはいえ、喫煙者には、ストレスの解消、気持ちを落ち着かせる等の精神的メリットがあるともいわれている。しかしながら、他人のタバコの煙を吸わされる受動喫煙は社会問題となっている。受動喫煙を室内又はこれに準ずる環境において防止するために必要な措置を努力義務として講ずることを謳っている健康増進法改正により受動喫煙防止の強化が図られようとしている。
 受動喫煙の制限は、主に公共機関や人の集まる建物内での喫煙を制限するものであり、自宅では自由に喫煙することが可能である。とはいえ、マンション生活では、戸建住宅と異なり、生活音とともに、他の居住者のベランダでの喫煙が迷惑行為となることがある。喫煙頻度が比較的高くなく、近隣の居住者への迷惑程度に収まっているのであれば、マンションは共同住宅であり、生活音も含め、ある程度は受忍しなければならないであろう。しかし、喫煙が他の居住者の健康被害等を生じさせ、その被害を承知しながら喫煙を継続し、被害の防止策を講じない場合には、喫煙が不法行為となり、損害賠償責任が生じる場合がある(民法第709条)。
 裁判例でも、「喫煙はベランダという外気に晒される解放空間で行われたもので、住人の喫煙行為(1日数本程度)は他の近隣住人の社会生活上の受忍限度内といえる」として損害賠償請求を否認した(東京高裁平成26年4月22日判決)ものがある一方、「自己の所有建物内であっても、いかなる行為も許されるというものではなく、当該行為が、第三者に著しい不利益を及ぼす場合には、制限が加えられることがあるのはやむを得ない」とし、「マンションの専有部分及びこれに接続する専用使用部分における喫煙であっても、マンションの他の居住者に与える不利益の程度によっては、制限すべき場合があり得るのであって、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながら、喫煙を継続し、何らこれらを防止する措置をとらない場合には、喫煙が不法行為を構成することがあり得る」と損害賠償を認めたものがある(【参照判例】参照)。なお、この裁判では、「マンションに居住しているという特殊性から、近隣のたばこの煙が流入することについて、ある程度は受忍すべき義務があるといえる」とし、損害賠償額は精神的損害を慰藉する金額(5万円)に止めた。
 また、マンション管理規約や使用細則等に規定されていなくても、「マンションの使用規則がベランダでの喫煙を禁じていない場合であっても、喫煙が不法行為を構成することがありえることは同様」(【参照判例】参照)としている。規約に規定されているか否かにかかわらず、不法行為となり得ることに留意しなければいけない。
 マンションのベランダでの喫煙によるトラブルを防ぐためには、喫煙行為に関する規約・細則等での取決めも必要となろう。必ずしも全面禁止するのでなく、喫煙者にも配慮し、期間や喫煙場所、その他喫煙ルールを取決め、互いの共同生活を保つ工夫も必要となろう。

参照条文

 民法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照判例

 名古屋地裁平成24年12月13日 ウェストロー・ジャパン(要旨)
 自己の所有建物内であっても、いかなる行為も許されるというものではなく、当該行為が、第三者に著しい不利益を及ぼす場合には、制限が加えられることがあるのはやむを得ない。そして、喫煙は個人の趣味であって本来個人の自由に委ねられる行為であるものの、タバコの煙が喫煙者のみならず、その周辺で煙を吸い込む者の健康にも悪影響を及ぼす恐れのあること、一般にタバコの煙を嫌う者が多くいることは、いずれも公知の事実である。
 したがって、マンションの専有部分及びこれに接続する専用使用部分における喫煙であっても、マンションの他の居住者に与える不利益の程度によっては、制限すべき場合があり得るのであって、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながら、喫煙を継続し、何らこれらを防止する措置をとらない場合には、喫煙が不法行為を構成することがあり得るといえる。このことは、当該マンションの使用規則がベランダでの喫煙を禁じていない場合であっても同様である。
 (中略)住人がベランダでの喫煙をやめて、自室内部で喫煙をしていた場合でも、開口部や換気扇等から階上にタバコの煙が上がることを完全に防止することはできず、互いの住居が近接しているマンションに居住しているという特殊性から、そもそも、上階の住人においても、近隣のたばこの煙が流入することについて、ある程度は受忍すべき義務があるといえる。

監修者のコメント

 相談のケースは、回答にあるとおり現実には大変難しい問題である。法的には、具体的事例におけるタバコの煙が周辺の受忍限度を超える程度か否かで結論が決まる。ただ、受忍限度という概念は、一般的な平均人の感覚を基準として、我慢の限界を超えるかどうかであるから、時代の変遷により、受忍限度という基準も変化する。その証拠に、相談のようなケースは、20年、30年前には、ほとんど問題にならなかったが、昨今では、参照判例にもあるように裁判になる問題である。管理規約に規定がなければ、喫煙は自由にできるわけではないが、やはり管理規約に何らかの定めを設けることがトラブル防止につながる。

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