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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1808-R-0192
老朽建物の賃貸借契約における建替応諾条項の有効性

 当社は賃貸の媒介業者であるが、築45年経過した建物の賃貸借契約の建物管理をしている。最初の賃貸借契約は建物が築30年の時点であったが、その際に、建物は老朽化しているので、賃貸人より建替えの通知をしたときは、賃借人は応ずる旨の約定をしたが、賃借人は明渡しを拒んでいる。

事実関係

 当社は賃貸の媒介兼管理業者である。当社が管理している老朽化した店舗があり、賃貸人は、店舗の立っている土地の効率を考え、ビルの建替えを検討している。店舗は建築後45年の木造2階建てで、外壁はかなり劣化している。2年前に屋根と外壁の間から雨漏りが発生し、賃貸人は修理をしたが、この先も他の箇所からの雨漏りが起きるのではないかと懸念している。賃借人は、飲食店を経営しており、契約締結から3年ごとに更新を繰り返し15年が経過している。
 賃貸借契約を締結した時点で建物は築後30年を経過しており、賃貸借契約書には、将来の建替えも考慮し、『建物が老朽化しているため、賃貸人より建替えの通知を受けた場合には賃借人はこれに応ずることを認諾する』との建替応諾条項が特約されている。
 賃貸人は、建替応諾条項もあり、建物老朽化による建替えは、正当な事由であり、契約解除と明渡しを請求する予定である。なお、賃貸人は賃借人が明渡しに応じるのであれば、賃借人に立退料として相応の金額を支払ってもよいと考えている。
 賃借人は店舗を飲食店として営業する上で、外壁の傷みや汚れ等はあるものの、修繕以降は雨漏りもなく、建物に問題は見られないと言っており、駅から近く、長年営業しており固定客もいるので、今後もこの店舗で営業を続けたいと考えている。

質 問

1.  老朽建物の賃借人は、賃貸借契約の建替応諾の特約に従い、明渡しに応じなければならないか。
2.  契約当時に老朽化していた建物が、賃貸借期間経過によりさらに老朽化が進んだときは、賃貸人の契約解除の正当事由に該当するか。

回 答

1.  結 論
 建替応諾の特約による賃貸人の建物明渡請求は、原則としては、借地借家法の規定に違反する特約であり無効であると解されている。
 賃貸借契約の締結当時に建物が老朽化していたとしても、当然に正当事由に該当するものではないと解されている。
2.  理 由
⑵について
 借地借家法は、建物の賃貸人からの賃貸借の更新拒絶の通知や解約申入れには、正当事由が必要であり、賃借人を保護している。賃貸人の正当事由が認められるか否かについての判断は、①建物の使用を必要とする事情が、賃貸人又は賃借人のどちらが優先するかが第一の要素であり、主要素である。その上で、②建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況、及び③建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引き換えに賃借人に対して財産上の給付(いわゆる立退料)をする旨の申出が考慮される。なお、立退料については他の正当事由の補完に過ぎず、立退料自体が正当事由になるものではない(借地借家法第28条、【参照判例①】参照)。
 賃貸人の正当事由が認められるか否かは、最終的には裁判所の判断になるが、相談ケースの賃貸人から本件建物の建替えの通知を受けた賃借人が無償で速やかにこれに建物を明け渡すという建替応諾条項は、賃借人の合意があったとしても、それをもってただちに賃貸人の正当事由にはなり得ず、借地借家法第28条の規定に違反する特約といえる。また、特約が賃貸人の正当事由でない限りにおいて、賃借人に不利な特約と認められることから建替応諾条項は無効である(同法第30条)。賃貸借契約の締結当時に当該建物が老朽化していたとしても、無効であることは変わらず、賃借人が賃貸人からの建替応諾条項に基づく明渡し請求に応じなかったとしても、当然には解除原因とならない(【参照判例②】参照)。
 ただし、建替応諾条項は借地借家法では違反とされているが、賃貸建物の老朽化の程度が朽廃状態であったり、極度に耐震性が低く建物使用は危険であるとの判定を受けたりしている場合は、賃貸人からの賃借人に対して賃貸借の更新拒絶の通知や解約申入れに正当事由が認められる可能性はあると考えられる。また、賃借人が建物を利用していなかったり、利用状況が低いときは、賃貸人の建物取壊しの必要性との見合いで正当事由があると認められることもあろう。
 なお、定期借家契約であれば、その期間の経過により契約を終了させることができるのは当然である(借地借家法第38条)。

参照条文

 借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 同法第30条(強行規定)
 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
 同法第38条(定期建物賃貸借)
 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
〜⑦ (略)

参照判例①

 東京地裁平成25年12月24日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 建物の賃貸人による更新拒絶の通知は、①建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、②建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに③建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引き換えに賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。そして、この正当事由の判断に当たっては、上記①を主たる要素とし、上記②及び③は従たる要素として考慮すべきであり、上記③については、それ自体が正当事由を基礎付ける事実となるものではなく、他の正当事由を補完するにすぎないものであると解するのが相当である。

参照判例②

 東京地裁平成25年9月10日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 本件建替応諾条項は、賃貸人から本件建物の建替えの通知を受けた賃借人が無償で速やかにこれに応じて本件建物の明渡義務を負うというものであり、建物賃借人の保護のために賃貸人からの解約申し入れについて正当事由の存在を要求する借地借家法第28条の規定に違反する特約であって、賃借人に不利なものであると認められるから、仮に、賃貸人の主張のとおり、本件賃貸借契約の締結当時に本件建物が老朽化していたとしても、同法第30条により無効である。
 したがって、賃借人が賃貸人からの本件建替応諾条項に基づく明渡し請求に応じなかったとしても、これが本件解除における解除原因となるものではない。(中略)
 本件建物は、前記のとおり一定の経年劣化が認められ、一部にやや目立つ汚濁・汚損箇所はあるものの、補修済みの雨漏りを除いて特に大きく目立った損傷はなく、その維持、管理の程度は通常であり、実際にも、賃借人は、本件建物を本件店舗のためにほぼ年中無休で利用している状況にある。
 このように、賃借人が本件建物を利用する必要性が相当高いことや、本件建物の利用状況からすると、賃貸人における本件建物の取壊しの必要性や、本件賃貸借契約における従前の経過ないし賃貸人と賃借人間の関係、さらには、賃貸人が本件建物の明渡しと引き換えに○○○万円の給付を申し出ていることを考慮しても、なお、賃貸人の解約申入れに借地借家法第28条所定の正当事由があると認めることはできないというべきである。

監修者のコメント

 建替応諾特約がある場合、契約締結時に賃借人がそれを承諾しているから当然に有効であるとは言えない。しかし、契約締結当時における賃貸人の建替予想の説明、そのための賃料設定、建物修繕の内容と頻度その他諸般の事情を総合的に判断して、建替えの通知が信義則に照らして不当とはいえないケースもあり得る。
 紛争を避けるためには、回答のような思考で実務を進めるのが適切であるが、相談のようなケースでは、やはり建替え時期を予測した定期借家契約にすべきである。

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