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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1804-B-0243
自宅購入の売買契約に伴う買換特約の留意事項

 戸建の売買仲介をするが、買主は現在住んでいる自宅の売却をして、購入資金の一部に充当する予定だ。売主や買主の希望の有無にかかわらず、売買契約書には買換特約条項を必ず入れなければならないか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。手狭になった自宅を売却して、今までより広い戸建の購入を検討している顧客がおり、当社が媒介することになった。当社は売主に、買主(顧客)は自宅買換なので、契約書に買主の自宅が売却できないときは契約解除できるという買換特約を明記したいと申入れたところ、売主は、受け取る予定の売却代金の使途が決まっているため、特約は明記してほしくないといってきた。そのため、買主にその旨を伝えるとともに、もし、購入契約の決済時までに自宅を売却できず、決済が完了できなければ、違約金の支払いが発生するリスクがあると説明した。すると、買主は、自宅の売却は、当面当社に依頼するが、もし、当社にて一定期間が過ぎても売却できなかったときは知人が購入する予定であるので、売買契約書に買換特約を明記する必要はないと言ってきた。

質 問

1.  本事例のように、買主が住宅の購入資金の一部を自宅の売却代金でまかなう場合でも、売買契約書に買換特約を入れておかなくても問題ないか。
2.  媒介業者が買主の資金計画を認識しておらず、媒介業者作成の売買契約書に買換特約を記載しないまま契約を締結し、結果的に買主の自宅売却ができずに契約解除になった場合、媒介業者の責任は問われるか。

回 答

1.  結 論
 買主が買換えのときは、原則、買換特約を明記すべきであるが、買主が取引のリスクを認識したうえで、買換特約を約定しないことを了解しているのであれば、明記しなくても問題ないと考える。
 宅建業者には善管注意義務等があり、買換えの場合は、買主の資金計画について確認する義務があると考えられるため、責任は免れない。
2.  理 由
について
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)に、「買換え時において依頼した物件の売却が行われないときの措置について、本条の規定に基づき交付すべき書面に明記することが望ましい。」(解釈・運用の考え方第37条第1項関係2)と規定されており、原則的には、買主が自宅買換のときには、買主の買換が成就しないときは売買契約を白紙解除できる約定をしておく必要がある。また、媒介契約においても同様に規定されている(同第34条の2関係3⑶②)。
 しかし、相談のケースでは、特約を付することに売主の合意が得られなかったこともあるが、買主が言うには一定期間が過ぎても売却できなかったときは、最終的に知人が買う約束ができており買換特約がなくとも問題ないとのことで、特約が明記されなかったときのリスクも、こちらの説明を受けて十分認識していた。媒介業者としても、自宅売却が不成就の場合、買換特約を付けないときに残金が支払えない場合は、違約金を支払わなくてはならないということをあらかじめ説明してあるので、媒介業者としての説明義務は十分に果たしていると解され、媒介業者はあえて買換特約を付する義務はないと考える。
について
 媒介を依頼された宅建業者は、業務処理の原則において、「取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない」(宅地建物取引業法第31条①)とされている。また、民法でも受任者の注意義務に関して同様の規定があり(民法第644条)、これは、いわゆる善管注意義務といわれるものである。
 一般消費者の不動産取引の経験はわずかであり、宅建業者はその業務においては専門家であるため、不動産取引について想定できるリスク等を事前に消費者に説明する義務があったり、調査が必要であったりする。購入にあたり、購入依頼者が媒介業者に自宅買換であることを告げていたときはもとより、告げなかったとしても購入の際の資金計画を十分に聞き取り、買換が不調になった場合には違約金の支払いの可能性があることなど、依頼者への説明をすることが大切である。また、その資金計画が、買換え資金を利用しなくても契約が成就できるかどうか自信を持てないときは、買換特約を付することを売主と買主に促すことも必要であろう。十分な説明や特約処理の確認をしないで紛争になった場合には、宅建業者の善管注意義務違反が問われる場合があるので、留意しなければならない。
 買主が自宅を購入する際、現在住んでいる自宅を売却して購入資金に充てることは、少なからずある。その場合、売却先行、購入先行、同時売買の、通常3通りの方法がある。
 売却先行は、現在住んでいる自宅を売却し、その代金を手元に置いたうえで、購入する物件を探す方法である。この方法は、使用できる金額が確定できる半面、購入物件が見つからないと仮住まいすることがあり、その費用をみておく必要がある。不動産市場の活況時期であれば、購入物件の価格の上昇により、自宅を売却した代金だけでは予定していた物件の購入ができないなどのデメリットが生じることもある。
 一方、購入先行の方法の場合、気に入った購入物件は確保できるが、購入物件の決済時までに自宅売却を済ませておかなくてはならないため、売り急ぐことで売却価格が相場より安くなることもあり、予定していた資金が不足したり、決済のためにつなぎ資金を借り入れたりすることで、余分な金利を負担することなどが起こりうる。
 また、自宅売却と住換え先購入の同時進行は、どちらかというと購入先行に近い状態になると思われる。この場合は、資金を受取る売却契約の決済時期と、購入代金を支払う購入契約の決済時期を合わせる必要があるが、タイミングが前後する可能性もあるため、かりにタイミングが合わないことが起きるとトラブルになりやすい。特に自宅買換の場合、売却物件の代金受領が遅れることは予測され、購入物件の決済時期の延期、つなぎ融資の利用、媒介業者の買取保証(または、買取業者への売却)など、タイミングがずれることも視野に入れ、媒介業務を進めなくてはいけないであろう。
 なお、買換特約は、いつまでに売却できなければという日時を限るとともに、『自宅の売却の契約が締結できないときは、買主は、売主に対し、本契約を解除することができる』という買主の解除権留保の約定をしておくことが望ましく、現実的でもある。買換えが不調の場合、必ず契約解除となるのではなく、買主がどうしてもその購入予定物件を手に入れたい場合は、自宅売却資金以外の調達が可能な場合もあり、その契約完了の余地を残すことは、売主のためにもなると思える。
 購入者の資金計画を初回面談時によく確認しておくことが、後々の紛争を防止することにもなるので、宅建業者は念頭に置いておきたい。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 同法第644条(受任者の注意義務)
 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
 宅地建物取引業法第31条(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
   (略)
 同法第35条(重要事項の説明等)
 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
~七 (略)
 契約の解除に関する事項
~十四 (略)
 同法第37条(書面の交付)
 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
~六 (略)
 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
~十二 (略)
・③ (略)
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
 第34条の2関係
 (略)
1 ・2 (略)
3  標準媒介契約約款について
・⑵ (略)
 標準媒介契約約款の運用について
 (略)
 報酬返還請求の理由について
 標準媒介契約約款においては、代金についてのローンが不成立の場合に購入者に売買契約等の解除権が留保されている例が多いことにかんがみ、この場合で、ローンの不成立が確定し、これを理由として依頼者が売買契約等を解除したときも、宅地建物取引業者は、受領した約定報酬額を返還しなくてはならない。
 また、買い換えのための売却及び購入の媒介の依頼を受ける宅地建物取引業者は、依頼物件の売却が行われない場合の措置として、売却の媒介契約による売買契約の不成立が確定した際、購入の媒介契約による売買契約の成立により受領した約定報酬があるときは、その全額を依頼者に遅滞なく返還する旨の特約をし、書面化することが望ましい。
 第37条第1項関係
1  (略)
2  買換えについて
 買換え時において依頼した物件の売却が行われないときの措置について、本条の規定に基づき交付すべき書面に明記することが望ましい。
3  (略)

監修者のコメント

 買換えの場合に最も注意すべき点は、購入物件の代金支払いがスムーズに行えるかという問題である。購入のための売買契約と売却のための売買契約との関係についての配慮が媒介業者に求められる。
 売買に限らず契約の解釈は、第一義的には当事者の意思、すなわちどう思っていたかが基準となるが、契約書という外見的に確認できるものがある場合には、契約書に書いてあることが、有力な反対立証がない限り、その合意があったものとみなされる。その意味で、買換え特約がある場合は、購入のための売買契約に売却の契約による代金取得が条件となっていることが明記されなければトラブルになる。
 本件のような事案で、媒介業者の顧客に対する助言・指導義務が問題となることもあるので、専門家として回答にあるような配慮が必要である。

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