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1804-B-0242掲載日:2018年4月
借地権譲渡の承諾料等に関する地主との条件交渉の方法
借地権付建物の売買の媒介にあたり、地主は、借地権譲渡の承諾料として土地所有権価額の10%を要求し、更に次の借地人が支払う地代を現行地代の倍額にすることが絶対条件だと言っている。しかし、これでは取引が成立しない。このような場合、媒介業者としてはどのように対応したらよいか。
事実関係
当社は、借地人から借地権付建物の売買の媒介を依頼されているが、地主は、その借地権譲渡の承諾をするには、土地の所有権価額の10%の承諾料を支払うのと、次の借地人が支払う地代を現行地代の倍額にすることが絶対条件だと言っている。しかし、それでは現在の借地人や次の借地人の負担する金額が大きすぎるため、取引が成立しない。
質 問
このような場合、媒介業者としてはどのように対応したらよいか。
回 答
とりあえずは、地主に対し借地人側の希望や考え方を伝え、説得するしかない。その場合のひとつの方法としては、承諾料については、一般の取引実務や裁判実務においては、土地所有権価額ではなく、借地権価額を基準に定められていることを説明するとともに、次の借地人が支払う地代については、現行の地代の倍額ではなく、現行の地代と同額・同一条件で法律上契約の承継(契約上の地位の承継)がなされることを説明し(「我妻・有泉コンメンタール民法」(日本評論社)1093頁)、地主の納得を得るよう努力する。しかし、それでも地主の納得が得られないようであれば、次の手として、地主に対し、弁護士に依頼したうえで、地主の承諾に代わる許可の裁判(借地借家法第19条)の手続を進めるしかないということを伝え、その回答を待って、次の対応を考えるということであろう。ただ、その場合、地代が安い場合には地主側からも地代の増額請求がなされる可能性もあるので(借地借家法第11条)、取引までには多少の時間がかかることを覚悟しなければならないであろう。
参照条文
○ | 民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) | ||
① | 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 | ||
② | 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 | ||
○ | 借地借家法第11条(地代等増減請求権) | ||
① | 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 | ||
② | 、③ (略) | ||
○ | 同法第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可) | ||
① | 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡、又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るために必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。 | ||
② | 〜⑦ (略) |
監修者のコメント
借地権譲渡の承諾料は名義書換料とも呼ばれ、法律に根拠があるわけではないが、慣行的に広く行われている。そして、一般的な相場としては、東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、「借地権価格」の5%から15%くらい、地方都市ではその半分くらいである。もっとも、地主はその借地権譲渡を承諾する法的義務があるわけではないので、「所有権価額の10%」と言い張っている以上、それは一般的でないとして説得するしかない。借地権価格を基準としたとしても、かなりの金額になるのが普通なので、承諾しないで1円も入らないより、承諾して承諾料をもらったほうが得であることを説明し、翻意をうながすしかない。それでもダメなら回答のとおり裁判所に借地非訟手続の申立をせざるを得ない。借地非訟手続では、ほとんどのケースは「借地権」の価格を基準として承諾料を決定している。したがって、そのことを地主に説明することも必要である。