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1712-B-0238
住宅融資を受ける買主の融資実行ために、共同買主は協力しなければならないか

 当社は、不動産売買の媒介業者である。マンションを共同で購入した買主の1人は、購入に積極的でなかったが、共同買主として契約締結した。買主の1人が住宅ローンを金融機関に申し込んだが、共同買主が、住宅ローンの連帯保証人になるのを拒んだことにより、融資が承認されなかった。買主は、ローン特約に基づき売買契約を白紙解除することができるか。

事実関係

 当社は、不動産売買の媒介業者である。既存マンションを夫婦共有で購入する売買契約を締結した。購入資金は、夫婦それぞれの預金と夫が住宅ローンを組むことになっている。売買契約書には、ローンが組めなかった場合は売買契約を白紙解除することができるローン特約条項を付している。
 妻は、住宅ローンの月々の返済により家計も厳しくなるので、マンションを購入することには反対であったが、夫が賃貸住宅に住み続けても、家賃分をローン返済に回せば、月々の負担も大きな負担にならないと妻を説得し、妻も渋々購入に同意した経緯がある。
 買主の夫は、売買契約後に金融機関に住宅ローンの申し込みをしたが、融資は承認されなかった。住宅ローン申込金額は、購入物件価額に占める融資額割合である融資率や年収に占めるローン返済額割合の返済率等の金融機関の審査基準をクリアしていたが、共同買主である妻が、夫の連帯保証人になることを拒んだためである。
 買主の夫婦は、金融機関から住宅ローンの融資が受けられないことを理由に、売主に対して契約解除を申し入れたが、売主は、融資が否認されたのは、買主の妻が、住宅ローン融資の協力をしなかったためであり、契約解除は認めないと主張している。

質 問

1.  共同買主である妻は、夫の申し込む融資に協力をしなければいけないのか。
2.  妻が連帯保証人となることを拒んだことにより、夫の申し込みをした融資が承認されない場合、買主から契約解除をすることができるか。

回 答

1.  結 論
 共同買主は、他方買主の申込をした融資の成立に向けて、積極的に努力する義務がある。
 金融機関の融資が実行されないのは、買主側の責めに帰すべき事由があると解され、ローン条項に基づく買主からの契約解除はできない。
2.  理 由
⑵について
 個人が買主となる不動産売買契約では、住宅ローン特約条項を付した契約は一般的であり、多くの買主がこのような契約形態をとっている。通常、約定する住宅ローン特約は、買主にとっては、融資が承認されない、あるいは、申込融資金額が全額借りられないときは、契約は白紙解除することができ、支払った手付金が返還されるもので、購入者にとっては、売買金額を全額用意することも違約金支払いも発生することもなく、安心して売買契約を締結できる約定である。
 住宅ローン申し込みに際しては、買主は、単に金融機関に対して申し込みをするだけでなく、融資実行に向けて、積極的に努力することを要する。例えば、金融機関の融資審査のために種々の書類を提出する必要があるが、書類提出の遅延、売買契約書記載の融資金額以上の申込み、申込予定金融機関以外の金融機関への申込み、虚偽内容の書類提出などをして、融資が承認されなかったときは、買主の責めに帰すべき事由があったとして、ローン特約に基づく契約解除はできない。契約金額を他から用立て売買契約を完遂させるか、売買契約を解除するには、手付解除期日が徒過していれば、買主の違約による解除となり約定の違約金を支払わなければならない。
 また、買主が複数いる場合、金融機関は、買主の1人に融資を行う場合でも、他の共有者の連帯保証を求めることはよくあり、買主の1人の融資が無事に実行されるように他の共同買主も協力すべき信義則上の義務を負っている。共同買主も、ローン申し込みをする買主と同等の立場で融資が成立するよう義務を負っている。共同買主が、ローン成立に協力しない場合は、買主側の責めに帰すべき事由によるものであり、信義則上の義務に反し(民法第1条第2項)、売買契約のローン特約に基づく買主の解除は許されないと解されている(【参照判例】参照)。
 住宅ローン融資は必ずしも承認がされるとは限らない。融資が承認されなかったときは、ローン特約が付してあったとしても、全てが白紙解除になるわけではなく、買主のローン手続の懈怠や相談ケースのように共同買主が非協力的な場合は承認されないこともある。買主側に責めがあるときは、白紙解除はできない。
 なお、不動産の媒介業者は、住宅ローン特約が約定された契約を媒介するときは、融資条件等を金融機関に確認し、買主に十分理解させ、融資成立に向けて、買主に対し積極的に助言及び協力することが求められている。

参照条文

 民法第1条(基本原則)
 (略)
 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
 (略)

参照判例

 東京地裁平成10年5月28日 判タ988号198頁(要旨)
 本売買契約においては、買主AのみならずBも共同買主となっているのであるから、仮にローン自体の当事者はAのみであってもBもまた本売買契約に基づき、Aのローン契約が無事に締結できるよう協力すべき信義則上の義務を負っているということができる。
 ところが、本件においては、Bは共同買受人という立場にあったにもかかわらず、Aの連帯保証人になることを拒み、さらには共同買受人となることにまで難色を示し、最終的にいわゆる連帯保証型のローンを不奏功に追いやっているのであるから、前記信義則上の義務に違反するものといわざるを得ない(なお、買主が複数の場合、金融機関としては、買主の1人に融資を行う場合にも、他の共有者の連帯保証を求めることがよくあるということは公知の事実である。)。(中略)本件においてローンが実行されなかった原因は、買主側の責めに帰すべき事由によるものといわざるを得ず、本件特約に基づく買主の解除は許されないといわざるを得ない。

監修者のコメント

 本ケースのような事案は、個々のケースが裁判になってもおかしくない難しい問題を含んでいる。なぜなら、共同買主の責任の根拠は、あくまでも民事上の明確な義務ではなく、「信義則」という一般条項上の義務であるから、個別具体的な事情を総合的に斟酌して判断しなければならないからである。共同買主は、一方の買主がローンで代金を調達すること、それゆえ契約書にローン条項が入っているのを承知の上で買主になっているのが通常であって、その場合は、まさしく買主になっている以上、ローンに協力する信義則上の義務があるといえる。回答の参照判例もそのような事案であった。
 しかし、例外的なケースであるが、ローンを利用する買主が、「ローンの保証は、保証会社を利用するから心配要らない」と一方の買主に説明していたので、連帯保証人にならなくても済むと理解し、その間の事情を売主も知っていたという場合は、結論が異なることもあり得る。要するに、一般論としては回答のとおりであるが、類似のケースすべてに普遍化できず、稀には「信義則」に反しないケースもあり得ると考える。

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