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売買事例 1608-B-0218
遺産分割前の相続物件の媒介方法について

 相続が発生し、遺産分割前に不動産売買仲介をする場合、媒介契約を締結するときの留意事項にはどのようなことがあるか。また、遺産分割協議書が作成されていなくても、売買契約を締結することはできるか。

事実関係

 当社は不動産の媒介業者であるが、この度、所有者が亡くなり、現在は空家になっている一戸建ての売却相談を受けている。相続人は被相続人の子4人で、いずれも家族と持家に住んでいるため、実家(当該物件)には住むつもりがなく、売却を検討している。遺言書はなく、遺産分割協議書も作成されていないが、売却金額を等分することでお互い了解している。媒介契約締結にあたり留意することはあるか。また、かりに相続人間で遺産分割協議が調っていない場合でも、売買契約を締結することはできるか。

質 問

1.  媒介契約締結のときに最低限確認しておくことはあるか。
2.  媒介契約を締結する場合、媒介契約書に相続人全員が署名捺印しなければいけないか。
3.  遺産分割協議書がなくても売買契約をすることはできるか。
4.  遺産分割協議が調うことを停止条件として売買契約をしても問題ないか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 「相続人の確定」が必要である。
 質問2.について ― 続人全員が署名捺印しない方法もある。
 質問3.について ― 売買契約は可能である。
 質問4.について ― 停止条件付売買契約は可能であるが、望ましくない。
2.  理 由
⑵について
 遺言書がなく、また遺産分割協議が調ってない相続財産は、相続人全員の共有(民法第898条)状態にあり、その財産を利用・処分等する場合は、全員の同意(同法第251条)が必要である。
 よって、相続人が複数いる場合に不動産業者と媒介契約を結ぶには、①相続人全員が署名捺印する ②相続人のうちの1人が代表者となり、他の相続人が代表者に不動産の売却とそのための媒介契約の締結を委任(印鑑証明書付委任状)する、という2通りの方法がある。なお、相続人の1人が代表者になる理由には、他の相続人が遠方であることや多忙であること等があるが、仲介業者としては、媒介の際に他の相続人の売出価額を含めた売却意思の確認をして(売却することへの了解を取って)おくことが必要である。
 相続登記済であれば、仲介業者はすぐに売主の特定ができる。しかし、相続登記されていない物件の媒介契約を結ぶときは、既に遺産分割協議書が作成されているなら捺印済みであることを確認し、まだ遺産分割協議書の捺印前であれば、戸籍謄本や改製原戸籍等により、他に相続人がいないかどうかも含め、相続人が確定しているかどうかを確認しておくことが、最低限必要である。
 昨今、離再婚等家族形態が多様化・複雑化しており、遺産分割協議書作成の段になって、思いもしない相続人が現れないとも限らない。円滑な売買を進めるためには、入念な事前調査による相続人の確定が重要である。
について
 相続財産である不動産を売却する場合、買主に所有権移転するには相続人への相続登記(名義変更)が必須である。通常、相続物件は、遺言書あるいは遺産分割協議書、または家庭裁判所の審判等により相続割合を確定(同法第907条)、相続登記され、登記名義人となった所有者が売主として売却する。登記名義人は単独または、共有名義のケースがある。
 また、相続人による遺産分割協議前でも、相続人の1人が法定相続分で不動産の相続登記(不動産登記法第63条、民法第252条但書)をすることができる。この場合も、不動産は相続人全員の共有となり、売却については前記(「⑴⑵について」①②参照)の方法によることとなる。
について
 遺産分割の確定前に売買契約を締結し、決済時までに売主(このケースでは4人)が遺産分割協議及び相続登記をすることを停止条件として契約することは、契約自由の原則により可能である。しかし、相続人間の遺産取分での争いや新たな相続人の出現等で遺産分割の協議が調わず、結果的に契約の効力が生じないこともある。そのような場合は、仲介業者として、売主となる相続人に関する戸籍謄本や改製原戸籍等での確認を怠っていれば、調査義務違反を問われかねない。
 仲介業者としては、遺産分割協議前の媒介は避け、依頼者へは遺産分割協議を調えるよう誘導すべきであろう。

参照条文

 民法第251条(共有物の変更)
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
 民法第252条(共有物の管理)
 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
 同法第898条(共同相続の効力)
 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
 同法第900条(法定相続分)
 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の2とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
 同法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
 (略)
 不動産登記法第63条(判決による登記等)
 (略)
 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

監修者のコメント

 相続不動産の売却の媒介をする場合に、特に注意しなければならないことは、共同相続人のうちの代表者的行動をしている者の言葉をそのまま信用して行動することである。その者が、「相続人全員が売却に同意しているから大丈夫」と言うのが真実ではないこともあり、また実印を押した同意書に印鑑証明書も添付されていたとしても、それが別の目的のために用意されたものが悪用されているケースもある。とにかく、共同相続人が売却する場合は、全員の意思確認をする必要があり、媒介業者がこれを怠って買主に損害賠償責任を負った事例もある。
 最も望ましいのは、遺産分割協議が成立したのちに、売却することである。

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