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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1006-R-0079
マンションの建替えに伴う借家人の立退料と新たな借家権の取得

 当社は分譲マンションの建替えに伴う借家人との立退き交渉と転居先のあっせん業務を受託するが、このような建替えの場合にも、借家人は家主に対し立退料の請求ができるのか。その場合、当社が立退料の問題にタッチしなければ、弁護士法第72条(非弁行為の禁止規定)に抵触しないと考えてよいか。そもそも、借家人の権利(借家権)は、マンションが建替えられた場合にも存続するのか。

事実関係
   当社は賃貸の媒介業者であるが、先日ある古い分譲マンションの建替事業(マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下「マンション建替法」という。)に基づく建替事業)に参画している建築業者から、そのマンションに賃貸で入居している人達の住み替えの手伝いをして欲しいと言われた。要は、入居者との立退き交渉と転居先のあっせんの仕事である。

 この依頼業務は、具体的には個々の賃借人のいる部屋の区分所有者(貸主)から依頼を受け、入居者に転居先のあっせんをし、その賃貸借契約を媒介していくものであるが、「報酬」は建設業者からも貸主(区分所有者)からも受領せずに、次の転居先の貸主あるいは借主(次の貸主が手数料を支払わない場合)から「媒介手数料」のみを受領するというものである。
 
質問
1.  このような分譲マンションの建替えによる立退きの場合も、一般の立退きの場合と同じように、借主は貸主(区分所有者)に対し立退料の請求ができると思うが、どうか。
2.  借主が立退料を請求できるのであれば、その立退料の問題は貸主(区分所有者)との間で解決してもらえばよいので、媒介業者としては弁護士法第72条(非弁行為の禁止規定)に抵触することはないと思うが、どうか。
3.  そもそも、現在の借主には新しいマンションが完成したときに入居する権利はあるのか。あるとすれば、それはどのようにして担保されるのか。
4.  貸主(区分所有者)がマンションの建替えに反対し、新しいマンションの区分所有者にならなかった場合は、現在の借主の権利(借家権)はどうなるのか。
 
回答
  (1)  質問1.について — 現在の建物賃貸借が、定期借家とか取り壊し予定の建物賃貸借というかたちのものでない限り、一般の立退きの場合と同じように、原則として立退料の請求は可能と考えられる。なぜならば、マンションの建替えの合意形成前の段階においては、マンション建替法にも、地方公共団体が関与する場合以外に立退料(移転料)等についての特別な規定はなく、通常の立退きの場合と同じように考えることができるからである(マンションの建替えの円滑化等に関する基本的な方針(平成14年国土交通省告示第1108号第5−2−ハ))。しかし、借家人が、建替事業の施行者(通常は「建替組合」)に関する設立認可の公告があった日から30日以内に、建替組合に新たなマンションの借家権の取得を希望しない旨を申し出た場合には、マンション建替法に基づく補償金が支給されることになる(マンション建替法第56条第1項・第3項、第75条第1号)。
(2)  質問2.について — そのとおりである。本件の場合は、もともと貴社は立退き交渉のための「報酬」を受領しないのであるから、それだけで弁護士法第72条に抵触することはない(後記【参照条文】参照)。
貴社がそのための「報酬」を受領しないということは、おそらく立退料の問題は貸主(区分所有者)側で解決するのであろうし、借主によっては、立退料なしで転居し、再度新しいマンションに入居するということもあり得るからであろう。
(3)  質問3.について — 現在の借主は、建替事業の施行者(通常は「建替組合」)に申し出ることによって、建替え後のマンションにおける自分の権利(借家権)を担保することができる(マンション建替法第60条第4項本文)。
(4)  質問4.について — 貸主(区分所有者)が建替え後のマンションの区分所有者になることを希望せず、補償金を取得する場合においても、借主が施行者(通常は「建替組合」)に申し出れば、建替え後のマンションにおける自分の権利(借家権)を担保することができ、その場合のマンションの貸主は、建替事業の施行者である建替組合ということになる(マンション建替法第60条第4項ただし書き)。
 
参照条文
  ○ マンションの建替えの円滑化等に関する基本的な方針(平成14年12月19日国土交通省告示第1108号

前文 (略)

第1〜第4 (略)

第5 マンションの建替えが行われる場合における従前のマンションに居住していた賃借人及び転出区分所有者の居住の安定の確保に関する事項
  1  マンション建替事業の施行者等が取り組むべき事項
 マンションの建替事業の施行者等は、代替住宅の確保に際して、そのあっせん、情報提供等により賃借人及び転出区分所有者の居住の安定に努めなければならない。
2  国及び地方公共団体が取り組むべき事項
  イ   地方公共団体は、地域の実情を踏まえつつ、公営住宅等の公共賃貸住宅への優先入居その他の多様な支援に努めることとする。
ロ   地方公共団体は、都市再生住宅制度の活用等により、従前居住者用賃貸住宅の供給の促進及び家賃対策の実施に努めることとする。
ハ   地方公共団体は、移転料等の支払いに対して優良建築物等整備事業の活用等により必要な支援に努めることとする。
 
  ○ 弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 
○ マンションの建替えの円滑化等に関する法律第56条(権利変換を希望しない旨の申出等)
(1)  第14条第1項の公告又は個人施行者の施行の認可の公告があったときは、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者は、その公告があった日から起算して30日以内に、施行者に対し、第70条第1項及び第71条第2項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができる。
(2)  (略)
(3)  施行マンションについて借家権を有する者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)は、第1項の期間内に施行者に対し、第71条第3項の規定による借家権の取得を希望しない旨を申し出ることができる。
(4)〜(7) (略)
 
○ 同法第60条(区分所有権及び敷金利用権等)
(1)  権利変換計画においては、第56条第1項の申出(注)をした者を除き、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者に対しては、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権が与えられるように定められた参加組合員に対しても、同様とする。

(注) 区分所有者の権利変換を希望しない旨の申出
(2) (略)
(3)  権利変換計画においては、第1項の規定により与えられるように定められるもの以外の施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権並びに保留敷地の所有権又は借地権は、施行者に帰属するように定めなければならない。
(4)  権利変換計画においては、第56条第3項の申出(注1)をした者を除き、施行マンションの区分所有者から施行マンションについて借家権の設定を受けている者(その者が更に借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けている者)に対しては、第1項の規定により当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が第56条第1項の申出(注2)をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられるように定めなければならない。

(注1) 借家権を有する者の借家権の取得を希望しない旨の申出
(注2) 区分所有者の権利変換を希望しない旨の申出
 
○ 同法第75条(補償金)
 施行者は、次に掲げる者に対し、その補償として、権利変換期日までに、第62条の規定により算定した相当の価額に同条に規定する30日の期間を経過した日から第68条第1項の規定による権利変換計画又はその変更に係る公告(以下「権利変換計画公告」という。)の日までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額に、当該権利変換計画公告の日から補償金を支払う日までの期間につき権利変換計画で定めるところによる利息を付したものを支払わなければならない。この場合において、その修正率は、国土交通省令で定める方法によって算定するものとする。
 施行マンションに関する権利又はその敷地利用権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施行再建マンションに関する権利又はその敷地利用権を与えられないもの
 隣接施行敷地の所有権又は借地権を有する者で、この法律の規定により、権利変換期日において当該権利を失い、又は当該権利の上に敷地利用権が設定されることとなるもの
 
 
監修者のコメント
 本ケースにおいて、立退料の請求ができるかという問題については、回答にあるとおり、一般の立退きの場合と同じに考えてよいが、ただ立退料の請求ができるか否かは諸事情を総合して判断すべきことであり、具体的事情の検討なしに「請求できる」とは一概に言うことはできない。
 弁護士法の問題は、立退料の問題にタッチするかどうかが問題ではなく、立退きという行為その他の法律事務について対価(報酬)を受け取るかどうかの問題である。

 マンション建替法に関することは、回答に付け加えるべきことはない。

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