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売買事例 1602-B-0209
残金決済直前の売主の行方不明とその対応方法

 当社は売主側の媒介業者として売買契約を成立させたが、残金決済の直前になって売主が行方不明になった。このままでは、売主は違約金(売買代金の20%相当額)を買主に支払わなければならない。このような場合、売主側の媒介業者がとるべき途として、どのような助言・助力の方法があるか。なお、この売主には妻がなく、成人した娘さんが1人いるだけである。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、このたび当社が売主側の媒介業者として成立させた売買契約の残金決済前に売主が突然行方不明になった。そのため、数日後に迫った残金決済の期日に売主本人が出席できないと契約は違約となり、売主は違約金(売買代金の20%相当額)を買主に支払わなければならなくなってしまう。なお、この売主には妻はいないが、成人した娘さんが1人いる。

質 問

 このような場合、売主側の媒介業者がとるべき途として、どのような助言・助力の方法があるか。

回 答

1. 結 論
 買主がどうしても買いたいというのであれば、売主の息女または貴社(媒介業者)が、民法第697条・第698条の「緊急事務管理」の規定に基づいて、残金決済の手続を弁護士を通じ行っていくという方法が考えられる。したがって、そのための対応としては、売主の息女または貴社から弁護士に売主の「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申立ててもらい、その選任された管理人に対し家庭裁判所から選任審判書と不動産の売却許可審判書等の関係書類を交付してもらい、それを申請書に添付して買主に対する所有権移転の登記申請を行うという方法が考えられる(民法第25条第1項、第27条第1項・第3項、第28条。家事審判手続法第9条第1項甲類第3号)。
2. 理 由
 残金決済における残代金の受領や物件の引渡し、所有権移転の登記申請といった一連の行為は、いずれも事実行為であり、法律行為ではないので、売主の息女または貴社が、それらの行為を権限なくして「緊急事務管理」として行うことができると解される(後記【参照判例①②】参照)。ただ、そのためには手続的に問題となる買主への所有権移転登記の申請手続があるので、その手続も含めて、残金決済手続のすべてを弁護士を経由し、「不在者財産管理人」に代理委任するという方法が適切な助言・助力の方法であると考えられるからである。なぜならば、本件のような緊急を要するケースで、残金決済手続をスムーズに行うためには、そのための買主の理解(たとえば、残金決済日の延期など)とそのための説得力が必要となるからである。
 ちなみに、この事務管理における「事務」とは、社会生活における一切の行為を含むものであって、それが事実行為であると法律行為であるとを問わず、社会生活における相互扶助の理念に基づいて、その行為を法律が適法なものと認めるとともに、他面において、その事務管理を行う者に対し、その管理を適切に行う義務を課し、本人と管理者との間の関係を規律するほか(民法第697条~第701条)、事務管理を行う者に対し、本人のために支出した有益費用の償還請求権を認めている(民法第702条)。
 なお、不在者管理人を選任する場合、決済日まで時間的に間に合わないケースも考えられるので、弁護士等と十分に協議して見極めることが必要である。

参照条文

 民法第25条(不在者の財産の管理)
 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
 (略)
 同法第27条(管理人の職務)
 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
 (略)
 前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
 同法第28条(管理人の権限)
 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
 同法第103条(権限の定めのない代理人の権限)
 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
 保存行為
 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
 同法第697条(事務管理)
 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
 民法第698条(緊急事務管理)
 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
 同法第702条(管理者による費用の償還請求等)
 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
 第650条第2項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前2項の規定を適用する。
 家事審判法第9条(審判事項)
 家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。
甲類
~二の三 (略)
 民法第25条から第29条までの規定による不在者の財産の管理に関する処分
以下 (略)
 (略)

参照判例①

 最判昭和43年3月8日民集22巻3号540頁、判時515号59頁、判タ221号123頁(抜すい)
 登録申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であつて、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によつてなされる場合にも代理人によつて新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもつて無効となるものではないと解すべきである。

参照判例②

 最判昭和36年11月30日民集15巻10号2629頁、判時282号19頁(抜すい)
 事務管理は、事務管理者と本人との間の法律関係を謂うのであつて、管理者が第三者となした法律行為の効果が本人に及ぶ関係は事務管理関係の問題ではない。従つて、事務管理者が本人の名で第三者との間に法律行為をしても、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合のものではなく、そのような効果の発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とするものである。

監修者のコメント

 本ケースの買主は、残金決済の期日に売主が行方不明というのであれば、おそらく残代金を支払う気にならないであろう。なぜなら、支払った金銭を受領する権限のある者がいないので、支払った金銭はどうなるであろうかと不安になるのは当然だからである。ということは、買主が決済期日に支払わなくても債務不履行(履行遅滞)にはならないと解され、結局、同時履行の建前から売主は引渡し、登記等の義務をまだ負わないことになるので違約金の問題も生じないと解される。
 ただ、そのような状況であっても、買主がどうしても残金を支払って買いたいというのであれば、回答のような方策をとらざるを得ないが、事実関係からみる限り、契約締結後の行方不明は長期にわたるものではなさそうであるから、買主側に事情を説明して、一時ストップさせるか、または買主側からの解除を検討してもらうというのも現実的な方法と考える。
 なお、買主が解除した場合、既に支払われた金銭の返還請求が問題となるが、その担保となる売買対象物件があるので、弁護士に相談するよう助言することが適切である。

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