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賃貸事例 0902-R-0056
ペット飼育を条件とする敷金償却特約の効力

賃貸アパートへの入居に際し、借主は、ペットの飼育を条件に、敷金の全額償却の同意をした。この場合、借主がいかに部屋をきれいに使ったとしても、敷金は全額償却となるか。また、貸主は、原状回復の費用が敷金の償却額を超過した場合に、その超過分を借主に請求することができるか。

事実関係
 当社は賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、賃借人との賃貸借契約の締結に際し、賃借人がどうしてもペット(小犬)を飼いたいと言うので、大家とも相談し、賃借人から預かる敷金(家賃の2か月分=10万円)を、明渡した時に全額償却するという条件で、賃貸借契約を締結した。
 ところが、賃借人は、契約期間の満了に伴う部屋の明渡しに際し、「部屋の床はフローリングだし、犬はカゴに入れて飼っていたので、部屋にキズはつけていない。敷金の全額償却は違法だ」と言い出し、その一部の返還を求めてきた。

 なお、明渡し時の原状回復特約については、本件のペットによるもの(室内のキズ、臭いなどの原状回復)以外は何らの取り決めもしていないが、部屋の使い方や清掃もキチンとなされており、賃借人には特に問題となるような点はない。
 
質問
1. 借主からの敷金一部返還請求は、正当なものといえるか。
2. 貸主としては、部屋の消毒とクリーニング代だけでも6万円程度はかかるし、犬を一日中カゴの中で飼っていたという借主の主張は到底信用できないとして、一切返還はできないと考えているが、その考え方は正当か。
3. 原状回復の段階で、敷金の償却額を超える費用の発生があったときは、貸主は、その超過分について借主に請求することができるか。
 
回答
1.結論
  (1) 質問1.について ― 借主の請求は、正当なものだとはいえない。
(2) 質問2.について ― 貸主の考え方は、特別な事情がない限り、正当なものと考えて差し支えない。
(3) 質問3.について ― 本件の場合は、部屋の使い方も清掃もキチンとなされているのであるから、その超過分が、ペットの飼育に伴う原状回復費用の超過分であれば、原則として、できないと考えるべきであろう。
 
2.理由
(1)(2)について

 本件の敷金全額償却の特約は、【事実関係】の記載にもあるとおり、借主がペット(小犬)を飼いたいということから合意されたものであることと、その償却額も10万円と比較的少額であることから、ペット飼育後の原状回復費用等を考えた場合、決して不当なものとはいえない。したがって、仮に、借主が犬をカゴの中に入れて飼っていたとしても、それはむしろ当然のことをしたというべきであって、そのために合意した償却額について、その一部を返還させる理由にはならない。

 一方、貸主側の主張については、仮に、借主が犬を一日中カゴの中で飼っていたとしても、犬の種類によっては、毛が飛び散ったり、臭いが部屋中に染み付くなどの損害が発生する可能性もあるので、そのような場合には、次の借主いかんによっては、部屋のクロスを張り替えるなどの追加費用が発生する可能性もあり、特別な事情がない限り、正当な主張と考えて差し支えない。

(3)について
 本件の敷金の全額償却特約は、その成立の経緯から判断すれば、借主が室内でペットを飼うことのリスク(予想される善管注意義務違反による損害賠償責任)を、借主が敷金をもって負担するという特約であるから、内容的には、一種の「損害賠償額の予定」(民法第420条)としての意味合いがあるものと考えられる。

 したがって、本件の賃貸借契約においては、このあらかじめ定めた敷金全額償却特約以外に原状回復についての特約がない以上、原状回復に関する民法の一般規定(民法第400条=特定物の引渡しの場合の善管注意義務、第415条=債務不履行による損害賠償)は、ペット以外の賃借人の故意・過失による損害については適用があるとしても、ペットの飼育に伴う原状回復費用の超過分については適用はなく、貸主は、あくまでも「損害賠償額の予定」をした敷金の範囲内でしか請求はできないと考えるべきであろう。

 
参照条文
  ○ 民法第400条(特定物の引渡しの(注)場合の注意義務)
 債権の目的が特定物の引渡しで(注)あったときは、債務者は、その引渡しを(注)するまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
(注)この「引渡し」には、売買の場合に限らず、寄託物の返還(引渡し)や賃貸借契約の終了に伴う目的物の返還(引渡し)の場合も含まれる(東京地判昭和51年2月24日判時827号72頁、東京地判昭和57年9月30日判タ486号93頁)。
 
○ 同法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 
○ 同法第420条(賠償額の予定)
(1) 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
(2)(3)(略)
 
監修者のコメント
 本ケースのような合意については、その内容が民法の公序良俗(90条)、信義則(1条2項)あるいは借地借家法の理念といった一般条項に照らして有効かどうかが検討され、また平成13年4月施行の消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する契約条項の無効)に該当するかが問題となる。結論的には、回答にあるとおり、ペット飼育の許可という事情とその金額からみて、そのものズバリの裁判例はないが、おそらく有効な合意とみてよいと考える。
 本ケースは、敷金の全額償却とは別に原状回復費用を借主に負担させないものであるが、別途原状回復費用は負担させ、敷金は全額償却というような、いわば二重取りとなるような約定は、上記法条のうち、特に消費者契約法10条に該当し無効とされる可能性がある。

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